第1話 こんにちは、運命。
雰囲気は東南アジア+アラブの王族的なイメージです。
どこまでも続く広い草原。寝転べば晴れ渡った空に、心が軽くなる。
「あーあ、今日もいい天気だな。」
額につたう汗をぬぐいながら、カムイは独り言をつぶやいた。
今は5月。初夏といったところか。肉体労働を生業とするカムイには、少し辛い季節がやってくる。
「雨よ降れ。」
暑さが苦手なためか、ついそんなことをつぶやいてしまう。
「そんな罰当たりなこと言わないの!」
「シーラ!」
最愛の恋人、シーラが昼ご飯を届けに来てくれた。
「お天道様のお陰で、こうやってご飯が食べられるのよ?そんな罰当たりなこと言っちゃダメじゃない!カムイ。」
「へーへー、すんません。」
シーラの話を聞き流しながら、美味しそうなサンドイッチに手を伸ばす。
「もうっ!ちゃんと聞いてる?」
「聞いてるよ…ん。」
シーラのふてくされた顔が可愛くて、カムイは思わず口づけをした。
いきなりのことに頬を染めることしかできないシーラ。
「ははっ、真っ赤っか〜〜」
「も、もう!」
顔を見合わせ二人は笑う。
幸せだった。
貧しいながらも、心穏やか日々。
地面を這うように生きていた少年時代。
それに比べたら貧しさなんてどうってことない。
シーラがいれば、それだけで幸せだった。
「もうすぐね。」
「ああ、そうだな。」
二人はコツコツと貯金しながら、結婚式の資金を貯めていた。もう少しで目標に到達する。
豪華なシルクやご馳走は用意できないが、いつもより少しいいものを着て、少しだけ美味しいものを食べる。
二人だけのそんな式を夢見ていた。
「あ、そうだ!あなた宛に手紙が届いていたわ。」
「手紙?珍しいな、一体誰からだ?」
手紙の封蝋をみる。
「…王宮から?!」
そのマークはどう見ても王宮からのものであった。
王宮から一般人に連絡などただ事ではない。シーラが顔を曇らせた。
ピリッ
封筒をやぶり、手紙を取り出す。
「カムイ・タラシャ
みょうにち、王宮に召しませう。
至急の連絡ゆえ。」