第五話
前回のあらすじ
・少女の名前を知りました
「ええっと……末永くとは?」
「こ、言葉の通りです」
ミーシャは、頬を少し赤らめそういうが、ちっとも意味が分からない。
もしかして結婚という意味なのか?
いや、まさかそんなわけないよな……出会ってまだ数時間程度だし……
「ええっと……ちょっと何を言ってるかわからないというか」
「それは嫌ということでしょうか? ……そうですよね……私みたいなんかじゃ……いや……ですよね」
目をウルウルさせ今にも泣きだしそうなミーシャ。
その姿を見て罪悪感に押しつぶされそうになる。
「いやいやいやいや! そういうことじゃなくて……ちょっと気が動転しているというか……」
俺がそう言うと、ミーシャの肩がピクリと動く。
「気が動転している?」
俺はウンウンと、素早く二回頷く。
するとミーシャは何か考えるようなしぐさをして、
「詳しく教えていただけますか?」
と内容を聞いてきた。
真剣な顔をしているミーシャは先ほどとはまるで別人のようだった。
俺は自分の身に起こっていることを俺は彼女に話した。
空想上のゴブリンのような生物が現れたこと。
段ボールからミーシャさんが出てきたこと。
そして、そんな人から、末永くよろしくと言われたこと。
あと、何故かいやらしいことを考えてしまうこと……はさすがに言わない。
セクハラで訴えられたりしたらそれこそ、会社クビどころか、刑務所に入ってしまう。
「なるほど……まぁ確かに、考えなんてまとまりませんよね。そんな状況だと」
「で、ですよね」
「はい。空想上のような生物が現れて、段ボールから人が出てきた。それが私。それで挙句の果てには、末永くよろしくと言われた。であっていますか?」
「一応……」
いやよく、分析できるな当事者なのに……
「まぁいいと思いますよ。それより旦那様」
「いや良いとは思わないんですけど……」
「配達員から何かもらっていませんか?」
あ、そこは無視なんだ。
と内心驚く俺だが言葉にはしない。
「一応、紙の控えを……」
俺はそういって、ポケットの中にある控えを取り出す。
「これですね少しお借りしてもよろしいでしょうか」
「いいですけど、読めるんですか?」
俺はそういいながら、ミーシャに渡す。
「はい。一応私もあっちの者なので」
「あ、あっちの者……?」
俺は少し困惑気味に訊ねる。
「あ、言ってませんでしたね私……」
そういうとミーシャは、少し前にかがむ。
すると、
「……んっ」
大きな漆黒の羽が生えた。
それは蝙蝠のような羽であった。
しかし蝙蝠の持つ羽などよりもはるかに大きく、それでいて、そんな薄っぺらいものでない。
全長にしてみれば、軽々と天井に着くほどである。
「……実は私、サキュバスなんです」
ミーシャは、微笑んだ。
その笑顔は今日、俺に見せた中で一番の笑顔だった。
「…………」
そんな中、もちろん俺は無言だった。
その無言というのは、頭がこの状況に理解が及ばなかったということである。
しかしそれと同時に納得した。
だから、エロイことを考えてしまっていたのか!と。
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