第三話
前回のあらすじ
・緑の生物から宅配便受け取りました
突然だが、人をどのような生物だと思うだろうか?
少なくとも俺は、この地球という世界で最も偉大な生物でもあり、最も優れた生物だと思う。
思考力、技術、言語そして文明など様々な分野においても優れ、この地球上で人間に勝てる生物はいない。
さらに、空想力、妄想力、にも優れ物語を自分で作ることもできる。
このようなことができるのは本当に人間くらいだと思う。
もちろん、いろんな見解があるだろう。
しかし人間というのは自分の身に起きたこと、もしくは見て聞いたことしか信じることができない生物でもある。
つまり現実に起きたこと以外は理解ができないのだ。
そのため空想上のような生物が自分の前に現れたとき、人はどうなるか、それは……
今の俺の姿といっても過言ではないだろう。
「…………」
口を間抜けなほどポカーンとあけ、二月という絶賛真冬というこの時期に、突っ立っている。
もちろんあの緑の奇妙な生物から受け取った荷物を持ちながらだ。
……落ち着け、落ち着くんだ俺。
簡単な話じゃないか。そう、俺は夢を見ていたんだ。
緑の生物は俺の空想、もちろんあのカメのような巨大な生き物もそうだ。
……だが目の前にあるこの箱は?
それにポケットに突っ込んである配達の控えは?
「……現実なのか」
少しづつ現実と向き合い始める俺は、足元に荷物を置き、胸ポケットから煙草を箱から一本取り出す。
そしてポケットに突っ込んであるライターに手をかける。
取り出した煙草を口元まで持って行き、咥え、片手にはライターそしてもう片方の手で煙草を風から守るように、ライターを包み込む。
そしてジッ、ジッと火をつけ煙草をふかせる。
この行動は月に一度か二度しか煙草に手をかけない俺にとっては異常なものだった。
現にこうして、もう、二本吸い終え、三本目に手をかけてしまっている。
「……ふーっ」
煙草の先端は灰に変わり、そこから出でいる白い煙は上へ上へと昇っていく。
しかしその煙は冷たい風に流され、すぐに乱れ空と同化してしまう。
「…………」
腕時計を見てみると、時刻はすでに6時を迎えようとしていた。
家を出ようとしたのが5時20分。
少しづつ朝日に照らされていく俺。
傍から見れば煙草をふかして、冷静に見えるのがすこしかっこいいのだろう。
しかし俺の心中は計り知れない、恐怖に包まれているのだった。
「…………」
課長になんて言い訳をすればいいんだ!!
俺は頭を抱える。
いままで幾度となく失敗やミスをしてきたが無断遅刻はしたことがない。
俺の社会生活はついに終わりを迎えてしまうのか?
ああ、母さん、親父、もう少しで田舎に帰ります。
俺は、課長の顔を思い浮かべる。
もしこのまま、会社行ってしまったらと思うと……
……終わったな。
社会人生活にさよならを告げる俺。
するとそんなさなか、一つ声が聞こえてくる。
「そんなの簡単です!」
それは若い少女の声だった。
「だ、誰だ!?」
辺りを二、三回見渡すが誰もいない。
確かに声が聞こえてきたはずなんだが……
「気の……せいか……」
「気のせいじゃないです!」
俺が反応すると今度は下から聞こえてきた。
しかし俺の部屋はマンションの一階の中央に位置する。
したがって下は段ボールを除いて地面。
どう考えてもおかしい……
「おかしくないですよ!」
「…………」
……やっぱり熱でもあるのかもしれない。
「てかそろそろ開けてくれませんか?」
「あ、開ける?」
「足元に段ボールがありますよね? それです」
そういわれて、足元に置いてあるダンボールを見てみる。
すると少し、ゴソゴソとダンボ-ルが動く。
「ま、まさか……」
少しづつ段ボールが近寄ってくる。
いやそれだけではない、なぜか段ボールが近づいて来るたびに、動悸が増していく。
それに、無差別にエロいことを考えてしまう。
おかしい……ほんとうに何がどうなっているのか……
「……ゴクリ」
さらに唾液が絶えず出てきてしまう。
もちろんそれを抑えることはできない。
だがそんなことを気にする間もなく俺は、三つある段ボールを一つ一つ丁寧に開けていく。
一つはメイド服や奇妙なゴスロリ衣装の入った段ボールだった。
こんなの誰が着るんだよ……
「……わ、私が着ます」
……やはり段ボールの中から聞こえてくる。
てか俺の心の声を完全に読んでやがる!
それにしてもどう考えても人の入れる段ボールではない。
もし人が入っているならば、家電量販店などで冷蔵庫を買うときほどの段ボールが必要だろう。
しかし目の前にある箱はすべてそんな類のものではなく、もっと小さく、せいぜい入れたとしても、小学生高学年が、体育座りをしてギリギリだろう。
大人は絶対に入れないくらいの大きさであった。
ほんとにこんな段ボールに入っているのか?
俺が悩んでいるとまたしても少女の声がする。
「ああ……もう……我慢できません……」
少し震えた声が聞こえてきた瞬間、二個あった段ボールのうち一つが、ガサガサと動く。
俺はその段ボールに顔を近づけた。
すると、
「旦那様ーっ!」
何を思い行動したのだろうか、少女はいきなり飛び出す。
まるで抱擁を求めるかのように両手を広げ、飛び出してきた少女と俺は無情にも、額どうしをぶつけ合う。
「ぐあっ!!」
「あうっ!!」
俺は後ろにのけぞりしりもちをつく。
それに対して少女は、頭を押さえているだけだった。
「いたたたた……」
「いってぇぇぇ」
少しめまいがするが、今は少女の方が心配だ。
俺はすぐに立ち上がり、手を差し伸べる。
「だ、大丈夫ですか?」
少女はその手を掴むと何もなかったかのように、立ち上がる。
「は、はい。ありがとうございます」
「い、いえ……」
「「…………」」
俺と少女は顔を見合わせる。
俺は何処か照れくさいため顔をそむける。
すると少女は
「うっ……うぅ……ぐすっ……」
突然泣き出した。
「ど、どうかしましたか!?」
俺は少し慌てる。
しかし慌てながらもポケットの中から常時持ち歩いているハンカチを取り出し手渡す。
もちろん毎日洗濯しているきれいなやつを、だ。
「ぐすっ……い、いえやっと、やっとお会いできましたから……」
「や、やっと?」
……うちの親戚にこんな可愛らしい子いただろうか?
いやいるわけがない!
うちの親戚に女は忌々しいあの従妹しかいないはずだ!
といううことは、どこかで会ったのか?
「えーっと、どこかでお会いしましたっけ?」
「い、いえ、会ってなどはおりません。写真で一度……」
写真か……
いや、もし見ていたとしても、家族と撮った写真くらいしかないはず……
それか高校の時の写真?
いや、俺部活の時以外ボッチだったわ!!
「ははは……」
「あの、どうかしましたか?」
「い、いやなんでもないです……」
言えない……
高校でボッチだったなんて……
「そ、そうですか」
「はい……」
俺は下げていた頭をあげ少女を見る。
すると少女も俺を見ていた。
「「…………」」
俺と少女は無言で見つめあう。
かわいい……
少女は、どこか幼い顔つきながら、立派な二つの果実を持っていた。
髪は紫がかった黒い色で朝日に照らされ、よりきれいに輝いていた。さらに、手足は長く、まるで課長のようなプロポーションをしている。
かといって、身長は高いわけではなく、段ボールに入ろうと思えばぎりぎり入れそうなくらいの身長である。
しかし最も特徴的なものがあった。
それは……
服装がえろい!!
水着ほどとは言えないが 布面積が少ない。
しかし、つぎはぎの服装を見てみるとこちらのほうが、よっぽどエロく感じる!!
「そ、そんなに見ないでください……うぅ」
どうやら視線でバレたようだ。
少女は照れて、もじもじとし、手で顔を覆い隠す。
その姿はまるで天使のようだ。
それにしても、こんな服装の少女をこのまま外に放り出してもいいのだろうか?
いやよくない!
絶対よくない!
それなら家に上がってもらう?
いや絶対に上がってもらわなくてはならない!!
「「あ、あの!」」
俺が提案しようとした瞬間、相手も声をかけてくる。
声がかぶさり俺は少々照れくさくなる。
それに対して少女は、頬を紅色に染め上げていた。
「ええっと……」
「…………」
少女の反応を見てみると、俺は照れくささが吹き飛んだ。
可愛すぎる……
俺は動悸がますます止まらなくなった。
しかしまたしても冷静にふるまって……
「まぁ……とりあえず? うち、きますか?」
家に誘った俺であった。
ようやく登場しました!
ここまで読んでいただきありがとうございました!




