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かくれんぼから始まる…

作者: 神名代洸
掲載日:2016/04/07

あれはいつだただろう…。


私が妻と出会ってからかもしれない。

それまでの私はこんな体験をしたことはなかったからだ。

妻とは学生時代の先輩後輩の間柄。

妻はとても気の優しい女性で同性からは嫌われてもいない。異性からは気の小さい奴と思われていたようだが少なくとも私には好印象しかなかった。

だが、妻にはちょっと変わったところがあった。

霊が見えるということだ。

なので付き合いだした頃は私を嫌ってそんなことを言っているのだとばかり思っていた。

でもそうじゃないとわかったのは妻とのデートで写真に写ったものを見たときから…。

それとわかるはっきりしたものではなかったが、妻曰くこれは霊です、と言われてから気になるようになった。

妻は的確に霊を見ることができた。ただそれだけだったが、当時学生だった私たちはその場のノリで妻との写真を撮ることに。

私は彼女の隣に立っていた。

シャッターを押され、デジカメをチェックすると黒い塊が彼女の体のすぐ近くに写っていた。

「ワーッ!きゃー‼︎」何て叫びながら校舎内を走り回っていた。

それから5年後私たちは結婚し、夫婦となった。子供も出来、幸せの中にいたのだ。、そんな時彼女の乗る車で事故があった。幸いにも大したことはなかった。だが、その時からだ…おかしなことが起きだしたのは。

まだ幼稚園に入ったばかりの娘が壁に向かって何か喋っていた。まるでそこに誰かいるように。その様子を固まってみていた妻の顔は真っ青だった。

「おい、どうした?」

問いかけても答えない。ただ、作り笑いをするだけだ。

私には何も見えない。だから聞くしかなかった。

「何かあるのなら教えてくれ。私では力にはならないかもしれないが。」

そう言うと妻は「ええ。わかりました。じゃあ言いますね。」そう言って話し出したのは娘が見ているものの事だった。


「娘は男の人と話をしています。その男性は…。」

内容を聞いてゾクっとした。

人の姿まで見れるなんて今まで聞かなかった。だからそれを聞いてビックリした。


娘に話しかけるが娘は私の声が聞こえてないのか振り向きもせず楽しそうに喋っている。私は娘を抱き上げ話しかけた。

「誰と話ししてたんだい?お父さんにはわからないなぁ〜。」「あのね〜、男の人。私と遊びたいんだって。私、どうしようか迷ってるの。だってかくれんぼしたいって言ってるんだもん。どこに隠れたらいいかわかんない。」

「ならな、お父さんの服を羽織って布団に潜ったらどうだい?お父さん、見つからないようにおまじないをかけてあげよう。」「本当?」「ああ、ホントだよ。」

娘は嬉しそうにニコニコ顔で私のジャケットを羽織り布団に潜った。私はすぐに自分のカバンから御守りを出して布団の上に乗せた。これで相手から見れなくなればいいのだが…。霊は動き出したのだろうか…妻にそう問いかけると硬い表情でうなづいている。と言うことは捕まる可能性もある。ジッとただジッと娘のいる場所を見ていた。

霊は何かを探しているようだと妻が言う。

もしかして娘を探しているのかもと思い緊張した。暫くラップ音が聞こえたが、すぐに音は止んでしまった。まるで何かに気づかれたかのようだ。


静かになったかと思えば今度は部屋全体が揺れだした。娘はまだ布団の中。出てくる気配はない。それはありがたかった。

だが、食器が割れたりする音にさすがに驚きそちらに振り向くと黒い塊がはっきりと私でも見えた。両目がない。窪んでいた。

気味が悪くて仕方がなかった。そのちょっとした隙に霊は私の方へとやってきた。

下からぬうっと顔を覗かれたのだ。たまらない。恐怖しかなかった。

男は怒りの顔をしていた。

娘を見つけられないのだ。

お守りの効果があったようだ。

怒りの矛先が私達に向けられた。

妻は【南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏…。】を唱えている。私も一緒になって唱えた。

その時娘の顔がちらりと布団から顔を出した。涙も流している。当たり前だ、いろんな音があちこちから聞こえてくる。怖いに決まっている。私は少しずつ娘へと近づいていった。そして布団の中に片手を入れギュッと手をつかんでやった。でも妙に冷たい…。確認の意味で自分の手元を見た。そこにあった手は娘の手ではなかった。ごつい男の手だった。

ぎゃッと叫んでしまった。

娘は両手でお守りを持っていた。震えながら持っているが離しはしなかったので霊には見られていない。

妻は真っ青になりながらもまだ唱え続けていた。家の中はもうメチャメチャだ。

台風が通過したような有様になっていた。

なぜこんなことになってしまったのか…必死に考えた。わからない。と、その時仏壇の事を思い出していた。ここ数週間全く開けていなかったことを。

慌てて仏間へと走り、仏壇を開けた。

そして米と水をすぐにお供えした。

すると黒い塊はその場にじっと立っていたが振り向きざまにニヤリと笑いそして消えていった。


娘は布団から飛び出し母親の元へと駆けて行った。私もすぐに妻の元に行き終わった恐怖に安堵していた。

「仏壇、ちゃんとしてなかったから怒って出てきたのね。これからはちゃんとしようね。」皆で話し合い、月に一度はお参りをすることを決めた。これで出てこなくなってくれればいいけれど…。


その後、一度は姿を現したが今度は怒りの顔ではなかった。優しい顔をしていた。

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