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たったひとつの冴えない能力(ちから)  作者: 相田 彩太
第一章 砂塵の疾走者
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その6 そんなのもあるのか!

 「いや凄いな」

 「うん、竜ちゃんは学年トップの万能型能力者って言われているんだよ」

 「そうか、俺じゃとても敵いそうにないな」

 「え、でも次の念動力(テレキネシス)が雑賀君の得意分野でしょ。そこで頑張ればいいんだよ」

 「え、なんで俺の能力が念動力(テレキネシス)だって分かったの?」

 「簡単だよ、さっき竜ちゃんが言ってたでしょ。特殊型の能力者なら噂が出るはずだって。雑賀君は念動力(テレキネシス)の限定型の能力者でしょ」

 「うんそうなんだけど、さっきから出ている万能型とか特殊型とか限定型って何?」

 「あー外地から来た雑賀君は知らないかもね」

 朝顔は腕を組みながらうんうんと頷いた。

 「じゃあ、あたしが簡単に説明してあげる」

 「よろしくお願いします」

 雑賀は頭を垂れた。

 「素直でよろしい、じゃ説明するね。今あたし達が受けている六種のテスト、これが超能力の基本六要素なの」

 「ええと、『精神感応』『予知』『超感覚』『瞬間移動』『心霊治療』『念動力』の六つだよね」

 「そう、六要素の内、四要素以上の能力が使える者を万能型、三要素以下を限定型って言うの」

 「なるほど、少し分かったよ、そして特殊型って言うのは基本六要素に当てはまらない能力を持った人の事だろう? 例えば炎を操るとか」

 「あれ、結構理解力あるじゃん。でもそれじゃあ半分ね」

 「え? 違った?」

 「うん、炎を操るのは基本六要素の組み合わせの場合が多いの。では問題、炎の定義は?」

 「炎の定義って何? 炎は炎じゃないの?」

 「超能力概論はちゃんとした学問だよ。分類する以上ちゃんとした定義があるに決まっているでしょ。炎の定義は熱と光を出す気体の変化、もしくは個体か液体から気体に変化する際に熱と光を出す事よ。この現象を炎と定義するの。超能力じゃない炎は化学変化でこれを実現している訳ね」

 「気体じゃないといけないの?」

 「当たり前よ、赤熱した鉄の棒は熱と光を出しているけど、雑賀君、あなたはそれを炎と呼ぶの?」

 「ああ、それは炎とは呼ばないな。うーん、ずいぶんややこしいんだな。で、それと半分正解とがどう関わるの?」

 「慣れればややこしくないよ。炎を操るのは念動力(テレキネシス)で空気中の酸素と水素を集めて化学反応の炎を起こし、それをさらに念動力(テレキネシス)で動かすか、どこからか炎そのものを瞬間移動の一種、物質召現(アポート)と呼ばれる能力で手元に持ってくるかというケースが多いの。特に前者が多いわ」

 「なるほど、六要素の組み合わせで実現しているんだな。よし分かった『特殊型』ってのは六要素の組み合わせで実現できなさそうな能力を言うんだろ」

 指をビシッと朝顔に向け雑賀が決めポーズを取る。

 「ブッブー、引っかかった引っかかった、雑賀君それ引っ掛けだよテストに出るよ」

 朝顔がクスクス笑う。

 「えっ、違うの」

 「うん違う、よく間違う所なんだ。正しくは六要素の能力の特徴は『相乗』と『相殺』で特殊型の特徴は『排他』と『定常』なんだよ」

 「難し過ぎて頭から煙が出そうだ」

 雑賀が頭を抱え込む。

 「慣れると簡単だよ。いい『相乗』と『相殺』ってのは、みんなで能力(ちから)を合わせたり、逆に邪魔したり出来るんだよ」

 「ああ、念動力(テレキネシス)で力を合わせれば一人で持てない重たい物を持ち上げたり、逆向きに力を掛ければ持ち上げるのを阻止したり出来るって事か」

 「せいかーい。念動力(テレキネシス)だけじゃなく、その他の能力でも同じ事が出来るよ。相手からの精神干渉を防いだり、瞬間移動(テレポート)をブロックしたり」。

 「おおーなんかカッコいいな。じゃあ『排他』と『定常』って?」

 「『排他』と『定常』ってのは、たとえどうあろうと今ある状態を変化させて、その能力の一意の結果の状態に持っていく事よ。簡単に言うと因果を無視しちゃうの。○○すると××になるってケースが多いわね。例えば『6をひっくりかえすと9になる!』とか『8を横にすると、む、∞(無限大)!』とかね」

 「ああ『風が吹けば桶屋が儲かる』ならぬ、『風が吹けばパンツの色が攻撃色に変わる』って感じか」

 朝顔の顔が真っ赤に染まり、その拳が雑賀を吹き飛ばした。

 「だから! パンツの話はもう無し!」

 「ごめんなさい」

 「で、話を続けると、特殊型は因果を無視するの。特殊型はレアな上に強力なものが多いから、竜ちゃんは、もし雑賀君が特殊型の超能力を持っているなら、噂になってないとおかしいと言ったわけね」

 「特殊型って強いの?」

 強力という言葉に反応してしまうのは男の(さが)か。

 「うーんと強い弱いで言えば間違いなく強いけど、きっと雑賀君の言っている意味の強さじゃないよ。簡単に言うと、特殊型はね防御が出来ないの。例えば何かを壊してしまう特殊型の能力があったとして、それを壊れないように念動力(テレキネシス)で護ろうとした場合と、何もしなかった場合の壊れ具合はどうなると思う」

 「そりゃ護ろうとした方が被害が小さいだろ」

 「またブッブー。結果は同じよ。特殊型の特徴は相反する結果をもたらす別の能力で護ろうとしても、似た能力でより強い結果をもたらそうとしても、常に同じ結果しかもたらさないの。これが『排他』と『定常』ね」

 「なるほど、上書きという意味での強いか」

 「そう、そして今の所、特殊型の能力はどの六要素の能力より上位にあって結果を上書きしちゃうの。特殊型に勝てるのは、より上位にある特殊型だけなのよ。予知の結果だって変えれるんだから」

 「うーん、わかったようなわからないような」

 「そうね。よく例えられるのは、世界をキャンパスの絵に見立てると、特殊型はその世界にシールを貼っちゃうようなものなの。下地が何色であろうが、シールの色を消すような色であろうが、シールを貼られたら最後、もうシールの色と柄に染まっちゃうわけ」

 「もう一歩! 何か食べ物で例えて」

 「えっ、そうね…… 世界を鍋に入ったスープに例えたとすると、鍋をどれだけかき回そうとカレー粉を入れるとカレーになっちゃうし、麺を入れるとラーメンになっちゃうわよね」

 「うんうん」

 「このカレー粉と麺が特殊型による世界への干渉で、例えスープがチキンベースであろうと、野菜ベースであろうと、それを『排他』し、カレーという『定常』に持っていくって事なの」

 「それで、世界はカレーになってしまうの? それともラーメン?」

 「特殊型が競合した時、同時に存在出来るものであれば世界は『カレーラーメン』になるわ」

 「カレーラーメン! そんなのもあるのか!」

 「でもね、投入されたのが、カレー粉とトン汁の素だった場合、世界はカレートン汁にはならず、カレーになるわ。カレー粉がトン汁の要素を全て打ち消して世界を『カレー』にしてしまった事になるわね」

「なるほど! カレーが最強ということだな! よくわかった!」

 雑賀がうんうんと頷いた。

 「ホントに分かってる?」

 妙に納得した雑賀の顔を見て、朝顔は少し不安になった。

 「バカな頭でも理解出来るとは、朝顔は教え方が上手いな」

 「竜ちゃん」

 「よう朝顔、それに転校生」

 ついさっき去って行った天野が二人の隣に立ち、口を挟んで来た。「もう、念動力の試験は終わったの?」

 朝顔が問いかけた。

 「ああ、()いていたからなレベル4をクリアしてきた」

 「すごーい、これで三要素でレベル4でしょ、もう大人の中でもハイレベルだよそれ」

 「ああ、でもこんなもんじゃないさ、来年はもっと上を目指す。お前も頑張れよ朝顔」

 仲が良いのだろう。雑賀への言葉には棘があったが、朝顔へ掛けるそれは丸い。

 「で、転校生、お前の念動力のレベルはいくつだ? 2か3か? まさか限定型で1って事はないよな」

 少し挑発気味に天野は雑賀に声を掛けた。

 「一応LV4だよ、転校前のテストでそう言われた」

 その時は意味は分からなかった。だが、今日の試験を受けている中で、雑賀は前に己の念動力がLV4と言われた事を思い出し、それが示す意味を理解した。

 その数字は念動力(テレキネシス)の強さを計測した結果なのだと。

 「えっ、雑賀君LV4もあるの。すごーい竜ちゃん以外じゃ学年に一人だよ」

 「へえーじゃあ見せてもらおうかその念動力を」

 「いいぜ。見せてやるよ」

 売り言葉に買い言葉という格言は知っていたが、それを実社会で使うとはな。雑賀は少し不思議な感じがした。

 「じゃあ、いっしょにいこっ」

 少し険悪な雰囲気を感じ取ったのだろう。二人の間に言葉通り割って入った朝顔は二人の手を取り、次の『念動力』のエリアへ移動した。

お読み頂きありがとうございます。

このあたりは設定が並んでいて退屈になってしまっていて反省です。

今回のネタはタイトルにもある「そんなのもあるのか!」孤独のグルメですね。

6をひっくり返すと、のくだりがキン肉マンですね。

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