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たったひとつの冴えない能力(ちから)  作者: 相田 彩太
第一章 砂塵の疾走者
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その5 ヒーリングエスカレーション

 「えっLV3とLV4の両方にチャレンジするの?」

 試験官から驚きの声が上がった。

 「そう、問題ないはずだが」

 「そうだけど相当体力を消耗するのよ。中学生の間にLV4に行けば評価はかなり高くなるので今年LV3に挑戦して、次回にLV4に挑戦するのが良いと先生思うな」

 「いいから早く!」

 天野と呼ばれた生徒が語気を荒げる。

 「おいおい、またあのヤローが何かもめてんぞ」

 「んー竜ちゃん、ちょっと機嫌が悪いみたいだね」

 天野の試験が気になるのか、二人は次の試験場へ移動せず、その場に留まっていた。

 「わかったわよ。じゃLV3の被験者を呼ぶわね」

 試験官が手を上げると少し離れた椅子に座っていた青年が松葉杖を突きながら歩いてくる。その足は白色のギブスに覆われていた。

 「はい、この人の右足の骨折を治すのがLV3の試験よ。手配がちょっと遅れてごめんなさいね」

 天野が待たされていたのは、怪我人の移動が遅れた為だろう。試験官が軽く謝った。

 被験者が天野の前にずずいと差し出される。

 「了解した。お前、そこに座れ」

 被験者が椅子に座る。

 「よし、動くなよ」

 天野は鋭い眼光で被験者を見下ろすと、その太腿に両手を当てる。

 そして能力(ちから)を注ぎ始めた。

 「終わったぞ」

 時間にして一分も無かったであろう、天野は被験者から離れる。

 「ああ、ギブスの破壊はサービスしておいた」

 バキッという乾いた音を立て被験者のギブスにヒビが入り、四角いスクエア状に砕け落ちた。

 「おおー」

 周りから感嘆の声が上がった。

 「はい、破壊は念動力の試験に取っておいてね。じゃあ看ますよ」

 試験管はさっきまでギブスの下にあった被験者の足を凝視する。

 「はい、合格」

 再び周囲から感嘆の声が上がった。

 「じゃあ、続いてLV4に行くけど休憩する?」

 「不要だ、右手の骨折を治す」

 天野は右手を前に突き出すと少し目を瞑り、そして見開いた。

 そして鈍い音を立てその右手がありえない方向に曲がった。

 「あいてててて、見てるこっちが痛いぞ。あいつ何やってんだ」

 顔をしかめ、雑賀が言った。

 「自分の念動力(テレキネシス)で自分の手を折ったのよ。LV4の課題は自分の重傷を治す事だから、自分で折ったのね。本当は試験官の先生がやってくれるんだけど」

 「そうか、痛そうだな。でもLV1が自分で自分の小さな傷を治すのが課題で、LV2が他人の小さい傷だろ。ならLV3は自分の骨折を治すのが課題で、LV4が他人の骨折を治すんじゃないのか? なんで逆なんだろ?」

 雑賀が疑問を口にした。

 「治すだけなら自分の方が楽と言われる事が多いけど、LV3とLV4で逆なのにはちゃんと理由があるんだよ」

 「どんな理由?」

 「簡単よ、雑賀君。あなた骨折している痛みの中で集中して能力が使える?」

 「なるほど、確かに痛みでそれでどこじゃないな」

 「そう、これは危機的状況でも能力が使える精神力も試されるの。だからレベルが高いのよ」

 そして二人は天野を見つめなおす。

 「はい、たしかに折れていますね。じゃあ始めて下さい」

 試験官が開始を告げた。

 天野はその声を聞くと自らの手を見つめそして能力を注ぎ始めた。

 すると折れた腕が元の位置に戻りそして腫れて赤くなっていた皮膚も健康なピンク色に戻りはじめる。

 「ふぅー」

 天野は大きく息を吐き、腕を見つめていた視線を試験官に戻す。

 「終わりました」

 天野の声を受け試験官はその腕を握りそして凝視し始める。

 しばらく舐めるように視線を動かした後、試験官は言った。

 「おめでとう合格よ。凄いわね」

 周りから感嘆の声とパチパチと拍手が起きた。

 天野は周囲の視線を受け、軽く手を振り、会場を後にした。

お読み頂きありがとうございます。

今回の小ネタはタイトルのみです、セーラームーンの必殺技ですね。

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