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たったひとつの冴えない能力(ちから)  作者: 相田 彩太
第五章 最悪の勝利者
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その12 エピローグ 最悪の敗北者

 喜びの歓声を耳にしながら総帥はリムジンに乗り込む。

 「お疲れ様でした、総帥」

 秘書が総帥にねぎらいの声を掛けた。

 「何か言いたそうだね、君」

 「いえ、特にはありません。ただ、少し意外だっただけです」

 「ああ、我も意外だったよ。まさかあの子達が課題をクリアするとはね。新しい世代の波が来ているのかもな」

 「いえ、意外だったのは総帥が昨晩あの子に大回復を掛けた事です」

 「ん、そんなに意外だったかい? 我が実は甘々なのは君もよく知っているだろうに」

 「ええ、存じています。でも私の見立てでは今回の件の落とし所は、彼らに自分達の無力を思い知らせた後に、彼らの懇願を受け、彼らに一ヶ月の無償奉仕を約束させた上で、一週間か二週間後に先払いで大回復を施す所だと思っていました」

 「ああ、我も最初はそう考えていたさ。でも昨日の予言部の報告があったろう。今日の結果は『最悪』だと」

 「ええ」

 秘書は頷いた。

 「この我の国で最悪の結果なんて起こさせる訳ないだろ。最後のあの子達の顔を見たかい。あれが最悪の結果だと言う者がいたら、我はそいつの人格を疑うね。今頃予言部の奴等は『ぎゃふん』と言っているだろうよ。いい気味だ」

 総帥は顔に意地悪そうな笑みを浮かべた。

 「そうですね、見ているこちらも嬉しくなるような()い笑顔でした。ところで総帥、最悪の結果とはどのようなものでしょうか」

 「決まっている。彼らが勝利しようがしまいが、既に(くだん)の妹さんは手遅れだった、だ」

 「なるほど、希望を持たせて、それが手に入ったと思ったら、(たなごころ)より零れ落ちていく。確かに最悪ですね。総帥の深いお考え、胸に染みました。では、それを踏まえた上でこれを」

 秘書は懐に手を入れ、総帥に折りたたんだ紙を手渡す。

 「なんだねこれは」

 紙を受け取った総帥が問いかけた。

 「昨晩、総帥が見るのを拒否した今日の予言の詳細です」

 秘書の言葉を受け、総帥は紙を開き中の予言を読む。

 そこにはこう記されていた。

  

 予言部からのお知らせ~。

 明日の総帥は少女に金的され、

 少年の局部を眼前に見せ付けられ、

 女教師にお酢ドリンクをぶっかけられた挙句、

 敗北するという『最悪』の結果を迎えるでしょー。

  

 「……」

 沈黙が流れた。

 「総帥、何か言う事は」

 秘書の声は冷ややかだった。

 「……ぎゃふん」

 「いい響きです」

 

 能力者と呼ばれる新人類が歴史の表舞台に出現してから半世紀が過ぎた。

 創世期の危機も、黎明期の動乱も経て、今、時代は円熟期を迎えようとしていた。

 彼らの戦いはこれから始まりはしないが、

 彼らの青春は今始まったばかり。

長い間お読み頂きありがとうございました。

生徒達の保護者である鳳仙先生が落ち着いた様子を見せていたのも、前章のラストの伏線も章タイトルもここで回収しています。

この話は一旦ここで区切りを迎えます。

第三のヒロイン百合子の話は? 色々な設定は? と思わる方もいらっしゃると思います。温かい感想や希望があれば続きを書こうと思います。

では、別作品か続編でお会いできる事を楽しみにしています。

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