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たったひとつの冴えない能力(ちから)  作者: 相田 彩太
第一章 砂塵の疾走者
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その3 瞬間移動は脱衣のあとで

 次のエリアの項目は『超感覚』である。

 「やっと半分か、で朝顔さん」

 「はいはい超感覚は漢字で書いた通り人の五感を超えた感覚、エクストラセンスと呼ばれるものね。本当はESP、Extra‐Sensaory Perceptionというだけどみんなエクストラセンスって言ってるわ」

 「ええと究極の小宇宙(コスモ)?」

 「それはセブンセンシズ、そんな古いのよく知っているわね。間違いじゃないけど未だそれの持ち主は現れていないわ。超感覚は基本六項目の中で最もバリエーションが多い能力で、視覚系でも透視、遠隔視、赤外線・紫外線視力、精密視、望遠視、超常視、霊視があるし、電脳系と言われる電波の受信・送信といった情報ネットワークに機械を使わずにアクセスしたりする能力をもあるわ。他にも聴覚・触覚・味覚・嗅覚に関連した能力もあるのよ」

 「なるほど、汗を舐めて『これはウソをついている味だぜ』って分かる能力とかなんだ」

 「だからなんでそんな古い事を知っているのよ。あってるけど」

 「いや、じいちゃんが超能力者の国に行くならば参考文献として読んでおけって」

 「そう、良いおじいさんね」

 「ああ、自慢の大好きなじいちゃんだ」

 「逆に朝顔さんが知っている方が不思議だよ。前世紀の本だよ」

 「ああ、それは総帥さんが趣味で集めた資料の書籍を公開しているの。能力対決になった時に結構役に立つってね。あたし達は漫画図書館って呼んでるけど」

 「そうか、超能力者が発現する前の想像力で描かれた書物だけど、今はそれが定石になってるんだ」

 「で、ここのテストはESPカードと呼ばれる星や波のカードを当てたり、あのトンネルを通って電波とかを感じたら手を上げて何を感じたか申告するの。その他に自己申告もあるわ『俺は人の気を感じる事が出来る』ってね。ここでチェック出来るなら試験してくれるし、ここになくても後日別の試験場に行ってテストを受ける事も出来るわ」

 「おお、引っ越して来る前にそのESPカードとやらは受けたぞ」

 「そう、で、結果は?」

 「もちろんレベル0だったぜ」

 親指を立てて雑賀が胸を張った。

 そして二人は試験に挑む。

 結果は両名ともレベル0であった。

 「ああやっぱり、あたしには超感覚の才能がないんだわ」

 「そんなに嘆くなよ、俺だって才能がないさ」

 少しうなだれながら二人は次のエリア『瞬間移動』に向かう。


 「よっ雑賀、調子はええか」

 テスト室の前でクラスの男子生徒とグループを作った海下が声を掛けて来た。

 「ぼちぼちにも届かへんがな」

 雑賀はがっくりと頭を垂れた。

 「まあまあ、そう気を落とすなや。次はお楽しみの『瞬間移動』やで」

 海下は雑賀の肩に手を回し小声で話しかけた。

 「お楽しみ?」

 楽しみなテストなんてあるのだろうか。雑賀は疑念の声を上げた。

 「せや、お楽しみや。まずは入り口の陰に隠れるんや。そして……おっ、おったで」

 雑賀は海下に倣い入り口に隠れ、中を覗く。海下の指の先にはテストに並んでいる女子生徒の列が見えた。

 「何だよ海下、別にお楽しみなものなんて見えないけど」

 「これからが本番や、始まるで、目を背けるなや」

 二人の視線が女生徒に向かったその時、先頭の女生徒がガバッと服を脱ぎ始めた。

 「はいっ? う、海下、あれ」

 「こっちを向くなや、それに後ろを見ると魂を抜かれるで」

 「い、いや、あの子は何をやってんだ。下着になってるぞ。つ、次の子は肌にぴっちりとした服になってるぞ!」

 レオタードをもっと薄くした感じだろうか。身体のラインがはっきりと見える姿の女生徒もいる。

 「あ、あれなんて、は、裸じゃないか。あ、ありのままの姿だって事を話すぜ」

 動揺する雑賀の視線の先には、全裸の少女、その長い黒髪で胸や局部を隠している女生徒が居た。

 「しっ、声が大きい」

 立てた指を口に当て海下が言った。

 「で、でも、あんな”デリケートな部分を好きにして”みたいなカッコが許されるのか!?」

 「だから声がでかいって。ええか、瞬間移動(テレポート)ってのは文字通り一瞬の内に空間を超えて移動する能力や。せやけど、自分自身のみを瞬間移動(テレポート)させるのと、服も一緒に移動させのでは難易度が違うんや。だから、あんな風に服を極小にしたり、ついには裸になったりする()もおるんや。ちなみに服を着たまま瞬間移動(テレポート)できれば、加点が付くで」

 海下の説明に納得したように雑賀が頷こうとするが、その視線は下方向に動かせず硬直したままになっている。

 「あー二人とも、何見ているの」

 二人の視線に気付いたのであろう、朝顔が抗議の声を上げた。

 「ちゃうねん、朝顔ちゃん、ちゃうねん」

 海下は否定の声を上げるが既に遅く、先に並んでいる女生徒からキャーという悲鳴があがる。

 「バカ! こっちみんな! スケベ! 変態!」

 「はん、そんなカッコするんが悪いんや。恥ずかしいなら、そうならんようにレベル上げんかい」

 女生徒の抗議に対し、海下は開き直った。

 その喧騒の中、雑賀は視線を動かせずにいたが、不意に目をこすった。

 「あれ、疲れたのかな。目が霞んで……」

 室内なのに雑賀の視界に霞が掛かる。しかも、その霞は尋常ではなかった。ちょうど女生徒の胸や腰下の部分のみに掛かっていたのである。

 「なんやこれは! これじゃあ見えへんやないけ」

 雑賀の目だけが異常な訳ではない、海下の目にも同様の現象が起こっていた。

 「お前らが下品だからな。念動力(テレキネシス)で空気を圧縮して屈折率を変えた。彼女達を護る為にな」

 どこかで聞いたような声が聞こえ、今度はキャーという黄色い悲鳴が起きた。

 「げっ、ドラゴン」

 声の主はさっきも会ったキツメの生徒だった。

 「(りゅう)様、素敵!」

 女生徒が賞賛の声を上げた。

 「どこから来たんだよ?」

 さっきまでは姿は見えなかった。来た気配も感じなかった。雑賀の疑問は当然のように思えた。

 「やっぱりバカだな転校生。ここが何のテスト会場か、その足りない頭で考えてみろ」

 「瞬間移動(テレポート)でやって来たのか」

 「そういう事だ」

 気付いて当然だろうというように、その生徒は言った。

 「お、天野、ちゃんと戻って来たな。よしレベル4(プラス)合格だ」

 試験官が皆に聞かせるように少し大きめな声を上げた。

 列から「おおー」という生徒のどよめきが起こる。

 「おい、瞬間移動でレベル4が出たってよ」

 「マジかよ、大人でも中々いねえじゃねぇか」

 後方から海下と同じグループの男子生徒の声が聞こえ、雑賀は思わず後ろを振り向いた。

 「雑賀! あかん!」

 海下の声は遅かった。瞬間移動のテストを受けるのは女生徒だけではない。当然男子生徒も受ける。だとしたら……

 「アッー!」

 雑賀はV字パンツや越中ふんどし、全裸筋骨隆々の男子生徒の姿を見て悲鳴を上げた。

 「だから言ったんや、魂を抜かれるって……」

 海下の声は届かず、雑賀は白く燃え尽きた。

お読み頂きありがとうございます。

今回の小ネタは「究極の小宇宙」が聖闘士聖矢

汗を舐めて『これはウソをついている味だぜ』がジョジョ5部

「デリケートな部分を好きにして」がデリケートゾーンとクリーミーマミの劇中歌デリケートに好きしてを掛けています。(かなり苦しい)

サブタイトルが「謎解きはディナーのあとで」ですね。(ものすごく苦しい)

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