その8 希望の挑戦者たち
天野も驚愕していた。無敵と思われる防御を朝顔が破った事に。
天野は必死に思考を廻らす。
よく考えろ、私は何か間違えていた。
まず、力押しでは通じない。
私の仮説通り総帥の防御に限界があり、それを超えれば通じるとしても、今の私達ではそのレベルに達しない。
だけど、あの光の壁の防御を突破するしか勝利の目はない。
どうすれば突破できる。事実、朝顔が突破したのだ。方法はある、方法があるはずだ。
そもそも、どんな攻撃も防ぐ壁を持っていたとして、普通に生活出来るのか。
常時展開していたなら、誰も総帥に触れる事すら適わない。
熱いシャワーを浴びる事も、いや熱々のコーヒーを飲むことすら出来ないだろう。
不意打ちが効かない事は狙撃の結果からも明らかだ。
だから、あの壁は自動防御の機能を備えている事は間違いない。だったら、その発動条件を見つければ。
天野はギッと風船を睨み付け能力を込める。念動力では無い、精神感応の能力だ。
割れろ!
その意志の力に光の壁が出現し、それは阻まれる。
やはりだ。私の仮説が間違っていなければ、あの光の壁は自動防御、そしてその発動条件は……
一定以上の威力、もしくは悪意・敵意に反応する!
その考えに到って、天野は再び下を向いた。
発動条件は分かった。だがそれを突破するのは難しい。
もしくは”or”条件なのである。
威力があってもダメ、悪意・敵意があってもダメ、両方持っていても当然ダメ。
先程の朝顔の攻撃が通ったのは、悪意も敵意も威力もなかったから。
彼女は総帥を慕っていた。
総帥を傷つける意志があった訳ではない、ただ憤っていたのだ。
優しいと信じている存在がみんなを傷つけた事に。
そしてその拳には威力は無かった。
事実、腹で受ける分には問題なく、たまたま、玉にあたったから、ああなったのだ。
だけど、どうする、どうやって風船を割る。
天野の前に自らの影が写る。それを見て、天野はひとつの考えに到った。
「止めろみんな!」
天野は叫んだ。
「そう言われても、止められないっすよ」
「そうそう、俺らにも意地があるんでね」
立ち向かっている者達は既に片手で数える程に減っていた。
「勘違いするな馬鹿ども! 作戦が出来た! 皆は所定の位置で待機、雑賀はそのままオフェンス。時が来たらポイントを伝える。海下と朝顔はこっちに来てくれ」
作戦という言葉に皆の目に輝きが戻る。
「ホントかよ!」
「信じていました」
「やっぱ頼りになるぜ兄貴」
みな口々に叫んで総帥の元から離れていく。
ただ一人残った雑賀は、総帥の攻撃を必死に受け止めていた。
「やるぞリン! 俺達で勝利を掴むぞ!」
「ああ、お前が勝利の鍵だ!」
もう下は向かない。強い意志を胸に抱いて天野は立ち上がった。
お読み頂きありがとうございます。
ここではリンが総帥の絶対(と思われる)自動防御の秘密を見抜く話です。
ですが、本作のコンセプトとして「分かってもどうにもならない」という面があるので、真の攻略はこれからです。やっとコメディ要素が出てきました。
今回の小ネタは「勝利の鍵だ!」ガオガイガーの次回予告の後の一枚ですね。
もちろん勝利の鍵は雑賀ですよ、主人公ですもん。




