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たったひとつの冴えない能力(ちから)  作者: 相田 彩太
第五章 最悪の勝利者
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その3 誘導者たち

 雑賀は再び総帥に攻撃を開始する。

 拳と拳が交錯し、何合と二人は打ち合う。一昨日とは違い、二人の戦いは雑賀がやや押され気味ながらも互角に見えた。

 それは雑賀が成長したからではない、雑賀が攻撃よりも防御に気を回していた事と、十文字からの援護射撃があったからだ。

 雑賀の顔面に総帥の拳が迫る瞬間、総帥の顔の側面が白く染まる。それは十文字の弾丸が防がれた証。

 だがそれは総帥の注意力が一瞬雑賀から外れる事も意味していた。その隙を雑賀は見逃さず、総帥の攻撃を(かわ)していた。

 「へへっ、総帥、あんたは防御は完璧のようだが攻撃は今ひとつのようだな。さあ、掛かってこいよ」

 雑賀は再び挑発する。

 「確かにどちらかと言えば攻撃は苦手かもしれないが、それでは勝負には勝てんぞ」

 余裕の笑みを浮かべ総帥は雑賀に向かって行く。

 「今だ!」

 雑賀は総帥に向かって行き、その身を下げ総帥にスライディングを掛ける。思わず下を見ようとした総帥の視界が黒く染まる。十文字が正面から総帥の顔面に弾丸を当てたのだ。

 雑賀は昨日の作戦会議での天野の言葉を思い出していた。

 総帥の防御が光って白く見えるのは、その防御壁が光を反射しているからだと。

 あらゆる攻撃を防ぐと豪語するならば当然光も防ぎ、それは外から見れば白く、総帥側から見れば当然、光を遮断しているので黒く見える。それは一瞬、視界を奪われるに等しいと。

 「リン、お前の仮説通りだぜ」

 雑賀はスライディングと見せかけた脚を曲げ、総帥の両脚に引っかかるようにする。

 昨晩、天野はこうも言っていた。総帥の防御壁が防がないものが一つあると。

 それは重力。

 もし重力を遮断するなら地面に立っていられない。防ごうと思えば防げるのだろうけど、敢えて防いでいないだろうと。

 だから、(つまず)けばきっと転ぶ、これが天野の分析。

 その読み通り総帥はバランスを崩した。

 そして転ぶのならば……

 「投げが通じる!」

 雑賀の体に(つまず)き、その体の上にもたれかかろうとする総帥の体を雑賀は両手で優しく受け止め、そしてゆっくりと上方に力を込める。ちょうと大人が子供に高い高いをするように。

 総帥の体が一瞬、雑賀に覆いかぶさると、それはポーンと放物線を描くように投げ飛ばされた。

 「おお、我を投げ飛ばすとは。でも、これでは我や風船にダメージを与える事は出来ないぞ」

 拍手をしながら、空中でくるりと体制を立て直すと、総帥は華麗に着地した。

 「やったぞ雑賀! デイジー今だ!」

 総帥が着地したのは中央の時計塔の真下、ポイントT―1。

 「合点承知ですわ! 大地よ破滅の崩落を!」

 デイジーの叫びと共に、総帥の足元が崩壊する。

 落とし穴だ!

 崩れた地面と共に落下していく総帥、その深さは僅か数メートル、能力(ちから)を使わずとも這い上がれる程度。

 だが、その穴の底で総帥が見た物は自らに向けられる巨大な鉄の筒とその横に控える少女。

 それは朝からずっと穴の中で待機していた百合子であった。

 「いらっしゃい。たっぷり味わってね」

 少女はお茶目にそう言った。

お読み頂きありがとうございます。

やっと能力バトルらしくなって来ました。

今回の小ネタは「落とし穴だ!」世界樹の迷宮ネタですね。

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