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たったひとつの冴えない能力(ちから)  作者: 相田 彩太
第四章 希望の挑戦者
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その6 雑賀と浅慮と希望と

 「君はどこか悪いの」

 特に会話のネタが無くなってしまい雑賀は肩の少女へと声を掛けた。そしてまずい事を聞いたと思って後悔した。

 「うーんとね、あたまが悪いの」

 雑賀の心配をよそに少女は素直に答えた。

 「奇遇だな、俺も頭が悪いってよく言われる」

 「もーおにいちゃんたら、じょうだんがうまいんだから」

 その答えに少女が笑う。

 「その頭じゃないの。脳の病気なの。あと三ヶ月だって」

 「そうか……」

 雑賀は深く後悔した。それ以上、言葉を発する事が出来なかった。

 「でもね、おねえちゃんが何とかするっていってた。だから大丈夫なの」

 「そうか……それはよかったな」

 何とかなるものなのか。噂に聞く大回復という超能力で助けてもらうのか。雑賀は転校する前にニュースで聞いていた何でも治す奇跡の御業みわざについて思い出していた。

 確かニュースではとある富豪が億単位の金を出して末期癌を治したと言っていた覚えがある。

 「あのね、今日はありがとね」

 考え事をしている雑賀の隣で頭の花冠を触りながら少女がお礼の言葉を述べた。

 「いいよこれくらい。また一緒に花冠を作ろう」

 「ほんと! じゃあ約束」

 そう言って少女はその小指を伸ばす。

 雑賀もそれに応える形で右手の小指を伸ばした。

 その指が触れ合うかと思いきや、雑賀の指に触れたのは温かい指ではなく、夕暮れの涼やかさを帯びた植物、白詰草で出来た指輪であった。

 「約束のしるし。またいっしょにあそぼうね」

 雑賀の小指をその手で包み少女は微笑んだ。

 「ああ、約束だ」

 雑賀も微笑みながら言った。

 雑賀は歩みを進め、病院へ到着する。

 そこに天野の姿は見えない。

 まだ、移動中なのかな。そう思って雑賀が来た道を振り返ると、後方、病院の中から声が聞こえてきた。

 「モモ! 勝手に出ちゃだめじゃないか」

 再度振り向く雑賀の元へ、天野と朝顔が駆け寄ってきた。

 全力で走ってきたのだろう、その息は荒い。

 「ごめんなさい。どうしてもおねえちゃんにこれをプレゼントしたかったの」

 少女はそう言って頭から花冠を取り天野に渡す。

 「ああ、綺麗だ。ありがとうモモ。おねえちゃんからもモモにプレゼントがある」

 「えっ、なにかなーうれしいなー」

 プレゼントという言葉に少女が肩を躍らせる。

 「大回復の日だ。たった今、手続きをして来た。おどろくなよ。二ヶ月後の六月三十日だ」

 二ヶ月、その言葉に雑賀の顔に安堵の表情が浮かぶ。

 「えっ、そうなの、二ヶ月なの」

 「ああ、二ヶ月だ。だからもう心配するな。そしてもう心配掛けないでくれ。モモに何かあったら私は悲しくなって泣いてしまう」

 「うん、ごめんね」

 少女を肩に乗せたのは少し正解だったな、おかげで二人の目線が同じ高さになっていると雑賀は思った。

 肩に乗る重みは変わらなかったが、雑賀は肩の荷が軽くなった気がした。

 天野はそっと少女をその手で持ち上げると、ゆっくり地面に降ろした。

 「さあ、病室に戻ろう、ご飯とお薬を取らなくちゃ」

 「えーモモおくすりきらい」

 「だめ、ちゃんとおくすりのむの」

 会話を交わしながら二人は病棟に入って行った。

お読み頂きありがとうございます。

リンはポイントを使って二か月後に大回復を妹に施す権利を得ています。

この権利は先の予約になればなるほど低ポイントや低額で受けれます。

逆を言えば、直近になればなるほど高くなるという設定です。

明日とかになると現金で億単位になる設定です。

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