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たったひとつの冴えない能力(ちから)  作者: 相田 彩太
第四章 希望の挑戦者
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その2 雑賀とデイジーといっしょにごはんと

 昇降口に姿を現した雑賀の姿を見てデイジーの顔を思わず綻ぶ。

 「魚一君、一緒に帰りましょ」

 手を振ってデイジーは声を掛けた。

 「ああ、ごめん今日は行く所があるんだ」

 「え、今日は私の家に遊びに来る予定でしたのよ」

 雑賀の返事にデイジーの顔が強張った。

 「うん、だからさ。ちょっと買い物をして君の家に行くよ。お小遣いも入ったしさ」

 雑賀はそう言いながら手にした情報端末を見せる。

 この国の通貨は全て電子化されており、その金額は個人の情報端末に記録される。正確には情報端末上に、中央サーバ上に記録されている個人資産が表示される仕組みだ。

 この国に所属している者には全てお金が支給される。その名目は給金であったり、年金であったり、小遣いであったりランクによって様々だ。

 雑賀には小額だが毎月小遣いが入金されており、今日は初の入金日だった。

 「欲しい物があれば言ってくださればよろしいのに」

 不満そうにデイジーが頬を膨らませる。

 「いや、いつもお菓子をご馳走になっているから、今日はお返ししようと思っているんだ。じゃあ、またな」

 そう言って雑賀は猛スピードで走り出した。

 器用に人波を避け、その姿は数秒で見えなくなった。

 その速さで事故を起こさない事もささやかではあるが学校の噂になっていた。

 一時間後、ディジー邸の呼び鈴がリンゴーンと音を立てた。

 「これは雑賀様、ようこそいらっしゃいました」

 パーカーが門扉をゆっくりと開き、音の主、雑賀を邸内に招き入れた。

 「ときに雑賀様、本日は大荷物ですな。よろしければお持ちしましょうか」

 「ありがとうパーカーさん。でも平気だよ」

 そう言いながら鼻歌をフフンと歌いながら上機嫌で雑賀は歩いていく。

 「いらっしゃい、お待ちしてましたわ……いったい何ですのその格好は!?」

 館の玄関を開けて出てきたデイジーは雑賀の姿を見て思わず声を上げた。

 それもそのはず、雑賀は背中に巨大中華鍋を背負い、右手には大量の卵のパックが、左手にはキャンプ用の炭が入ったホームセンターの袋が握られていたのだ。

 「飛騨山中に巨大猿でも討伐に行くつもりですの?」

 今にも山篭りしそうな姿を見てデイジーが言った。

 「ああ、これか。この前言ったろ、いつもご馳走になっているのは悪いから、今度は俺がご馳走するって」

 「確かにそう聞きましけど、そんなに重装備なんて思いませんでしたわ」

 「いいからいいから。パーカーさん、すまないけれど庭をちょっと使わせてもらえないかな?」

 「かしこまりました。あちらをお使い下さい。また厨房からボウルと泡だて器もお持ちします」

 笑みを浮かべパーカーは屋敷へ向かった。

 雑賀はパーカーに言われた庭の土の部分に移動すると地面をその手でザッザッザッと掘り始めた。

 「何をなさっているの!? そんな犬のような真似をして」

 「穴を掘っているのさ、そしてこの穴に炭を入れて、鍋を置いて、これで鍋側は良し」

 雑賀は楕円形に掘った穴に炭を入れその上に鍋を置く。ちょうど楕円の細い部分で鍋の縁を支え、長い部分で空気を通すように。

 「雑賀様、ボウルと泡だて器、そしてテーブルをお持ちしました。水道はあちらをお使い下さい」

 念動力(テレキネシス)を使っているのだろう。パーカーは両手で折り畳み式のテーブルを持ち、その左右にボウルと泡だて器を空中に浮かべていた。

 「ありがとうパーカーさん」

 穴の炭に火を付け、庭の手入れ用の水道に向かい、雑賀は泥で汚れた手を洗う。

 「そろそろ教えて頂けませんこと。あなたとパーカーだけが分かっていらっしゃるようで、仲間外れにされているみたいですわ」

 不満そうにデイジーが言う。

 「ごめんごめん。この前、君の部屋で絵本を見て、俺も幼い頃にそれを読んだって話をしたろ」

 「ああ『ぐりともあ』ですわね、それがどうしたの……わかりましたわ!」

 デイジーは両手をパンと叩く。

 「そうそう、ボクらは仲良しぐりともあ♪」

 「この世で一番好きなのは♪」

 「お料理すること食べること♪」

 「「ぐり、もあ、ぐり、もあ」」

 雑賀に続けてデイジーも歌いだし、二人の台詞が重なって二人は笑い出した。

 「ふふふっ」

 「あははっ、さあ卵を割って泡立てようぜ」

 「ええ」

 雑賀は両手で丁寧に、だが手馴れた手つきで卵を割る。

 白いボウルが黄金色に染まっていった。

 「あれっ、上手くいきませんわ」

 一方、デイジーは力加減が分からないのか卵を丸ごと潰してしまったり、殻を大量に入れてしまったりしてしまう。

 「もう、こうなったら最終手段ですわ」

 デイジーは卵をそのままボウルに入れた。

 「破滅よ! 卵を縦に!」

 デイジーの声と共に卵に亀裂が入り、その隙間から卵白が漏れ出す。

 「これで後は殻を取れば良いのですわ」

 デイジーはふふんと胸を張り、ひょいひょいボウルから真っ二つになった殻を取り出した。

 「なんだ君の能力(ちから)、料理にも使えるじゃないか」

 カシャカシャカシャと小気味良い音を立てながら雑賀は手にした泡だて器で卵を溶き始める。

 「これでかき混ぜれば良いのですね」

 雑賀に習いデイジーも卵を掻き混ぜ始める。

 「そうそう上手い上手い。結構長く掛かるから歌でも歌いながらやると良いよ」

 「ぐりもあですわね」

 二人は再び歌いだす。

お読み頂きありがとうございます。

今回の小ネタは「ぐりともあ」有名な絵本のぐりとぐらですね。

あとは「飛騨山中に巨大猿」はグラップラー刃牙で夜叉猿退治に出かけた

刃牙の姿のネタですね。


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