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たったひとつの冴えない能力(ちから)  作者: 相田 彩太
第三章 汚泥の帰宅者
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その8 傍観者の喧騒

 セカンドミレニアム総国第二中学の校舎の隣には今は使われていない旧校舎がある。中央に大きな時計塔を持つそれは正式な授業では十年以上使用されていないが、中は意外にも綺麗である。

 理由は簡単だ、生徒が遊びに使っているからだ。生徒の中に綺麗好きで裕福な者がいるのであろう、廊下と教室に自動掃除機が設置されている。半世紀以上の歴史を持つそのシリーズは、ただ床をブラシで擦り埃を吸引するだけであった第一世代から進化を続け、充電器への自動帰還、階段の踏破、瓦礫の採取の他、ゴミを指定場所に投棄する機能が付与されている。

 その時計塔の最上階に数十人の人だかりが出来ている。

 「ちょっとそこ男子、もっと詰めなさいよ」

 「仕方ないだろ狭いんだから」

 「百合子ちゃん、そろそろ三分だから、こっちの集音器をお願い」

 「こっちの双眼鏡もー」

 集まっているのは一年B組の生徒達、行おうとしているのはデイジーと天野の決闘の観戦。本当は近くで応援したかったのだが、本日の決闘はここの面々は知らない事になっている。天野が内緒にしているからだ。

 だが、その事を唯一知っている相手がまずかった。

 朝顔が情報をこっそりクラスの面々に流したのである。

 だから、決闘の舞台となった第一野球場から離れた旧校舎の時計塔から覗こうという話になったのである。

 今、彼らは画像を情報端末に映せる双眼鏡と高感度&ノイズフィルタ付集音器を用意し、それを百合子の能力『三分伝説インスタントレジェンド』で強化してみんなで観戦しようとしているのである。

 「接続完了したよー、これで端末に映せるよー」

 双眼鏡と集音器から伸びたコードが情報端末に繋がれている。その情報端末に画像が表示されると、その前に人だかりが出来る。

 「ちょっと見えませんの」

 百合子が人山の後ろでぴょこぴょこ跳ねる。

 「ほら、百合子ちゃんが見えてないじゃないの。どきなよ男子」

 「ごめんごめん、百合子ちゃん」

 「それよりも、画面の位置を変えた方が良いんじゃないか、百合子ちゃんには三分おきに双眼鏡と集音器に触れてもらわなくっちゃならないんだろ」

 「そうね、じゃあ配置を変えましょう」

 「でも、百合子ちゃんは背が足りなさそうよ」

 「はいよ! ミカン箱」

 あれよあれよという間に窓の下に木製ミカン箱が置かれ、百合子がその上に立つ。

 「よし、映った」

 「音声もOKよ」

 「まったく人使いが荒いですの」

 百合子が大の字のポーズを取ってちょっと背伸びをする。

 その指が双眼鏡と集音器に触れると情報端末の画像がより鮮明になり、音声はよりはっきりと聞こえて来た。

 「さすが百合子ちゃん」

 十文字がいつもは腰の高さにあり、今は肩の位置にある百合子の頭を撫でる。

 「もっと褒めるのですの」

 百合子は未だ少女というよりは幼女と言える胸を反らす。

 「来たぞ、デイジーだ」

 情報端末に二人の姿が映る。

 皆の視線が集中し、一同が静まり返る。

 始まるのだ、闘いが。

お読み頂きありがとうございます。

また少し短めです。(反省)

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