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たったひとつの冴えない能力(ちから)  作者: 相田 彩太
第三章 汚泥の帰宅者
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その2 午後の小乙女

 セカンドミレニアム第二中学校には春と秋にクラス対抗のイベントがある。

 春はクラス代表による個人戦、そして秋には個人戦に加え全員参加の団体競技が催される。

 今年の団体競技は棒倒し、この国で百年以上の続く伝統競技だ。

 個人戦のB組クラス代表は百合子。この夏休み明けにB組に転入してきた特殊型能力者。

 特殊型能力者は能力者の中でも稀な存在で能力者の二十人に一人と言われている。

 特殊型とは因果を無視する能力。強力だが汎用性に欠け扱いが難しいとされるのが一般的意見だ。

 中には無価値と評される能力もある。

 その代表例として頻繁に引き合いに出されるのが金を鉛に変える能力である。

 だが百合子の能力を知った者は皆、その能力を黄金にも勝る宝だと称賛する。

 彼女の能力は道具(アイテム)を伝説の道具(アイテム)に変える能力。

 彼女の手に掛かればただのハサミも鋼の鉄格子すら竹ひごで出来たように切り裂く伝説の鋏と化す。

 既に彼女はトンネル工事用の掘削機を金属成分を多く含んだ巨大な岩盤をまるで粘土質の地層を進む事が出来る伝説の掘削機(ドリルマシン)に変えた実績を持っていた。

 A組との対抗戦に向かう百合子の姿を見て、天野は昨日の出来事を思い出していた。

 

 「百合子ちゃん、危険だ!代表戦は私が出る」

 「いいえ、委員長、あのいけすかない女に対抗出来るのは百合子しかいませんの」

 B組のクラス代表を決めるホームルーム、代表に立候補したのは百合子と天野であった。

 二人の立候補者を前に担任の鳳仙先生は、まずは二人で話し合って決めろダメなら先生が決める、と言って二人を見つめていた。

 「デイジーには誰も勝てない。だから終わった後のダメージが回復出来る私が代表になるべきだ」

 「あなたは春の代表戦で彼女に負けてらっしゃるではありませんか。それに最初から負けた後の事を考えておられて、あなたの冷静な状況判断力は一定の評価さしあげますの、でも、その諦めの良さは少々好きではありませんの」

 「お前はデイジーの能力のインチキさを知らないからそう思うのだ」

 そう、あれはインチキと呼ぶに相応しい能力だと心の中で天野は思う。

 「知ってますの。あの『赤い双星』は因果律に作用する特殊型能力。百合子と同じですの」

 「そう、同じだ。だがデイジーの能力は特殊型の中でもその特性が異常だ」

 「異常って因果への影響力が高いって事ですの?」

 特殊型能力が干渉しあった時、因果への影響が高い方の効果のみが結果として現れる。干渉が発生する事自体が稀であるが、その結果は国家のアーカイブに保存される。

 「違う、知っているかもしれないがデイジーの能力は対象や一定のエリアでの行為を大失敗(ファンブル)させる能力なんだ。あの『赤い双星』の名はサイコロのピンゾロを意味している」

 天野はそう言ってサイコロを振る仕草を見せた。

 「存じてますの。その『赤い双星』の前ではあらゆる能力が発動に失敗してしまいますの。たとえ『必ず殺す』を持った能力者でもその能力は『必ず発動する』能力ではありませんの。因果律への影響度の問題ではありませんのね。先の先を取る能力。確かにインチキですの」

 天野のアドバイスに対し、百合子は平然と答えた。

 「だったら、どうして」

 天野が問いかける。

 「こうみえても百合子は勝算の無い戦いはしませんの」

 「何か策があるのか」

 「それは明日のお楽しみですの」

 ちょっとおどけて百合子は口に手をあてた。

 天野は百合子の言葉に一抹の不安と一縷の望みを覚えながら次の日を迎えた。


お読み頂きありがとうございます。

B組の特殊能力者、百合子が登場します。

キャラ付けがありきたりになっているのが少し反省です。

彼女は将来的に第三のヒロイン化する構想はあるのですが、話をそこまで書き続けれられるか作者が試されます。(目を逸らす)

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