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たったひとつの冴えない能力(ちから)  作者: 相田 彩太
第二章 悲願の達成者
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その7 よろしくってよパーカー

 「ありがとな、君のお蔭であの子達は無事だったよ」

 河口まで到着した時、雑賀がデイジーに語り掛ける。

 「ん、何の事ですの」

 デイジーは少しとぼけてみせる。

 「何って助けてくれたろ、岩を縦に割ってさ」

 「ああ、その事ですわね。わたくしなら当然ですわ」

 少し誇らしげにデイジーは言う。

 「でも、良かったな。やっぱり俺の思った通り君の能力(ちから)は誰かを傷つけるだけじゃなかったじゃないか。優しい君の心があればきっと人の役に立つ仕事だって見つけられるさ」

 宿題の事を思い出しながら雑賀が言った。

 「そ、そうですわね。実はわたくしはとっくに気付いていましたけれど」

 背中に居て良かった、だって恥ずかしい赤い顔をみられなくて済んだのですもの。そう思いながらデイジーは強がりを言った。

 そして河口を抜け、二人は再び川を走り始める。

 「ところで、君の家はどこだい。家まで送るよ」

 「学校の西の丘の中腹ですわ。このまま川沿いに進んで大きな橋を潜ると見えて来ますわよ」

 「あー分かった。それならあと数分で着きそうだな」

 そう言っているとデイジーが言った通り、大きな橋が見え、それを越えると緑の丘の中腹に大きな屋敷が見えてきた。

 「ひょっとして君の家ってあのお屋敷?」

 「ええ、そうでしてよ」

 「見かけや仕草だけでなく、本当にお嬢様だったんだな」

 「私の溢れる気品は隠せないものですわ」

 「自分で言うか」

 そう言って雑賀は川から川原へ、川原から道路へとひょいひょいとジャンプする。

 道路に出たら目標とする屋敷までは目と鼻の先であった。

 「到着ー」

 速度を落とし、門の前で雑賀が立ち止まる。そしてゆっくりと背中のデイジーを降ろした。

 「お嬢様、遅いお帰りで……何があったのです!?」

 門から出てきた執事と思われる姿をした男がびしょ濡れのデイジーの姿を見て驚きの声を上げた。

 「少し水浴びをしただけですのよ、パーカー」

 何気ない口調でデイジーが答えた。

 「それよりもパーカー、お客人ですの、ご案内差し上げて。わたくしはシャワーを浴びて来ますわ」

 隣に居た雑賀を指してデイジーが言った。

 「え、この生徒さんでしょうか」

 少し驚いたようにパーカーと呼ばれた初老の男性が尋ねる。

 「ええ、彼にも着替えとシャワーをお願い」

 そう言ってデイジーは屋敷に入って行く。その先には数名のメイドが控えていた。

 「かしこまりました」

 パーカーはデイジーの後姿に恭しく礼をした。

 「では坊ちゃん、こちらにどうぞ」

 雑賀へ向き直り、手招きした。

 「いや良いよ、そこまで迷惑掛けるわけにはいかないって」

 両手を振りながら遠慮がちに雑賀は言った。

 「そうは参りません。そんな濡れたままの姿でお返ししてはディジー家の名折れになります」

 「いや、でも悪いよ」

 「シャワーの後には温かい紅茶とお菓子をご用意します」

 お菓子という言葉に雑賀のお腹の虫がくーと鳴る。

 「そ、それじゃあ、お言葉に甘えちゃおうかな」

 「ええ、それではこちらに、時に坊ちゃん、お名前をよろしいでしょうか」

 「雑賀、雑賀魚一(さいがうおいち)だ、よろしく」

 「では雑賀様、こちらへ」

 パーカーに促され、雑賀は屋敷に入る。

 「ここが浴場になります。服はその籠にお入れ下さい。十分程度で洗濯・乾燥が完了しますので、ゆっくり温まって下さい」

 「ありがとう、何から何までお世話になります」

 「いいえ、お気になさらず。時に雑賀様、一つお尋ねしてよろしいでしょうか」

 今までのにこやかな笑みから真剣な面持ちになってパーカーが言った。

 「はい、何でしょうか」

 パーカーの気に圧されたのか敬語交じりで雑賀が言う

 「雑賀様はお嬢様のお友達ですかな?」

 その問いに雑賀は少し言葉を詰まらせた。

お読み頂きありがとうございます。

今回の小ネタというか登場人物名がそのままですね。

サンダーバードの執事のパーカーそのままです。

セバスチャン以外の執事名を探した結果です。

自分のネーミングセンスの無さに反省。

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