表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
たったひとつの冴えない能力(ちから)  作者: 相田 彩太
第二章 悲願の達成者
17/63

その3 レベルとランク

 「では補講を始める。さっきは少し声を荒げて悪かったな雑賀。お前はこの国に来たばかりで社会の仕組みを知らなかったんだよな」

 教壇からたった一人の生徒、雑賀に向かって鳳仙先生が言う。

 「先生、それよりもさっさと補習を終わらせましょう」

 「あーその、そんなにはぶけるな雑賀、ほらほらおやつをやろう。この補講はそんなに堅苦しい物じゃない。食べながらで良いからゆっくり聞くといい」

 そう言って、鳳仙先生は手にしたマドレーヌを渡す。

 「先生! 俺、補講大好きです」

 雑賀の目に光が戻った。

 報告書にある通り、こいつは食べ物で釣るのが効果的だなと鳳仙先生は思った。

 雑賀の態度が急に好意的になった事に満足し、鳳仙先生は講義を始める。

 「では簡単に、ランクとレベルの説明をしよう。先日、雑賀を含め生徒達は能力測定でレベルを測ったよな」

 「はい、俺は念動力LV4--(マイナマイナ)でした」

 「そうだ、レベルとは超能力の強さを定量的に測定した物、つまり一定の基準を設けてそれを達成するとそのレベルの評価が付くという事だ」

 「念動力のレベル評価では動かせる重量が一トンだとLV4、十トンだとLV5の評価が付くという具合ですね」

 「そうだ、雑賀のように射程距離が短かったり、身体の動きと連動するといった条件が付くとマイナスが加えられる。逆に射程距離が長かったり、精密操作が出来たりするとプラスが付く。ここまでは良いな」

 鳳仙先生が雑賀に確認する。

 「はい」

 「ではランクだ。ランクとはこの国での社会的地位を示す。知っての通り、この国は半社会主義の国だ。社会主義と言うと二十世紀に失敗した例があるので響きが悪いが、私に言わせればこの国の体制は少々穴はあるが良く出来ていると思うぞ」

 そう言いながら鳳仙先生は電子黒板にピラミッド型の絵を描き、そこに四本の横線を書いた。

 「そうだな、企業に例えるのが分かりやすいかな。この頂点に居るのが総帥、そしてその下に居るのが三名のSランク能力者、会社で言うと社長と役員クラスだな。その下が定員制のAランクこれが事業部長や部長クラス、さらにその下がBランク、Cランク、Dランク。ピラミッドの外にいるのがEランクとGランクだな」

 鳳仙先生はピラミッドについて階層別に説明する。

 「先生、Fランクは無いのですか!」

 「無い、理由は単なる語呂合わせだ」

 「語呂合わせ?」

 「雑賀、お前の身分書、学生証には何と記載されている」

 「『RANK G』と書かれています」

 「それは未成年、つまり学生の『G』だ。お前達生徒や未就学の幼児は全てランクGに区分されている」

 「成程」

 納得したようにウンウンと雑賀は頷く。

 「そしてお前達が卒業し、この国で就職するとランクDに区分される。ここまでは全員同じだ。この後、勤勉に職務に就き、功績を重ねるとランクが上がる。DからCに、CからBにと言った具合にだ」

 「要するに出世するって事ですね」

 「そうだ。レベルの高さとランクは相関関係はあるが、必ずしもそうではない。どんなにレベルが高くても働かなくてはランクは上がらない。つまり才能があっても働く気がない奴は出世しないって事だな」

 「先生、ランクEってのは?」

 「Eは働かない者だ。老人や主婦、あとはニートだな」

 「だからピラミッドから外にあるのか」

 「そう、ランクEやGは一定の収入とポイントしか与えられない。お前達は成績の良し悪しに関わらず収入、というか小遣いは一定だ。ランクが上がると支給金額やポイントが上がる。天野がAランクを目指すと言ったのもそういった理由だな」

 「先生、ポイントってのは?」

 聞きなれぬ単語について雑賀が尋ねる。

 「それも知らなかったのか、ポイントは要するに貯めると嬉しい賞品(ボーナス)が貰えるポイントだ。主に怪我や病気を治したり、お金になったりする。ランク毎に貰える年間ポイント数が決まっているので、長年勤めるといっぱい貯まる。まあ、年金みたいな物だな」

 「おお、じゃあ噂の『若返り』とかも出来るのかな」

 若返りとは、この国の目玉の一つで、言葉通り若さを取り戻す超能力の処置の事である。

 雑賀はこの国に来る前に、テレビで兆単位の私財と引き換えに若さを取り戻した富豪のニュースを見た事を思い出した。

 「『若返り』は高いぞ、Aランクで長年勤めてやっと受けられるボーナスだ」

 雑賀の問いに鳳仙先生が答えた。

 「一応、お前達学生もボランティア、いや報酬を貰っているからバイトと言った方が良いかな。それをする事でポイントを稼ぐ事が出来る。僅かだが将来的にはプラスになるので考えておくといい。その他にも特に優秀な成績を修めた者にもポイントは与えられるので頑張る事だな。さて補講は以上だが、何か質問は?」

 そう言って鳳仙先生は雑賀を見つめた。

 「先生、おかわりはありませんか」

 合間合間で食っていたのであろう。空になったマドレーヌの袋を上げて雑賀が言った。

 「雑賀、素直なことは良いが、少しは自重を覚えろ」

 鳳仙先生は手にした教本でポフッっと雑賀の頭を叩いた。

 ポコンと乾いた音がした。

お読み頂きありがとうございます。

今回は社会制度についてのお話しです。実力と社会地位の差が生じる設定になっていますね。

これは、決して将来ランクの高い登場人物がザコ化してしまった時や、ランクの低い人物が実は高い能力を隠していた時の言い訳を準備しているわけではないですよ。

ええ、決して(目を逸らす)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ