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たったひとつの冴えない能力(ちから)  作者: 相田 彩太
第二章 悲願の達成者
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その2 能力実用

 キーンコーンカーンコーン

 午後の授業が始まる。

 能力者の国の授業は主に三分野に分かれる。

 一つ目は一般教養、教育が始まった頃から脈々と続く語学・数学・自然科学及び新に加わった超能力概論である。

 二つ目は能力開発・育成、『念動力』『瞬間移動』『精神感応』『超感覚』『心霊治療』『予知』の六要素を鍛える。長所を伸ばすのも良し、短所を補うのも良し、新たな要素に目覚めるのも良しとする実技の基礎育成である。

 そして三つ目が能力実用であり、能力を考える授業である。午後は雑賀が始めて受ける能力実用の時間であった。

 「さて、今日は今年度初めての能力実用の授業な訳だが、転校生もいる事だし基本のおさらいから始めるぞ」

 教壇に立った鳳仙先生が雑賀に目線を向けた。

 「では雑賀、君は将来どんな大人になりたい?」

 ピッと雑賀を指し鳳仙先生が尋ねた。

 「特に考えていません!」

 「正直だな雑賀!」

 「父さんにもそう褒められました!」

 二人のやり取りに周囲からクスクスと笑いが漏れる。

 「お前は漫才師にでもなるのがお似合いだぜ」

 腹を押さえ、笑いを噛み殺しながら天野が言う。

 「あー正直なのは良い、そして少年のままなら今の答えでも良いが、君はいずれ大人にならなくてはならない。今の問いは君が大人になった時、どんな職業に付きたいかを聞いているのだ。あるだろ? 将来の夢ってやつが」

 再び鳳仙先生が尋ねる。

 「おお、確か小さい頃はマタギになりたかった。だけど今はどんな職業に付きたいか具体的に考えた事は無いな」

 「プププッ、マタギって山奥で熊狩ってるのか、お似合いだ」

 もはや噛み殺せない笑い声が天野の席から聞こえてくる。

 「うん雑賀、それは良い夢だが、そろそろ現実を見なくてはな。では笑っている天野、君達生徒の主な進路を言ってみなさい」

 コホンと咳払いをして鳳仙先生は天野を指した。

 「はい、まずは高等学校に進学します。その中で卒業後の進路を『戦力庁』『財力庁』『人力庁』から選び就職。後はその庁内で精力的に勤め、自らのランクを上げる事に努め、やがては頂点を目指すのが進路です」

 凛とした声で天野が答えた。

 「うむ、全ての人が頂点を目指したり、頂点に達する訳ではないが正解だ。実際に九割以上の生徒が天野の言った通りの進路に進む」

 「先生! 残りの一割はどこに進みますか!」

 手を上げて雑賀が尋ねた。

 「良い質問だ。残りの一割はこの国を出て別の国に所属するのを選ぶ。少し哀しい気がするが自らが決めた進路だし祝福してやるのが大人の判断ってやつだな」

 手にした指示棒をクルクル廻し鳳仙先生は再び雑賀を指す。

 「さて、では雑賀、再び質問だ。さっき天野が言った『戦力庁』『財力庁』『人力庁』とはどんな仕事をする所が答えてみろ」

 「知りません!」

 「バッドだ雑賀! 知らない、分からないなら想像力を働かせろ。名前から類推するんだ。ワンモアセッ!」

 「『戦力庁』は戦う事を使命とし、『財力庁』は財を成す事を生業とし、『人力庁』は人力で労働する事を示すと予想します!」

 はきはきとした声で雑賀が答えた。

 「うむ最初の二つは正解だ。『戦力庁』はその能力(ちから)で軍事・防衛・治安維持を務めるのが仕事だ。『財力庁』はお金を稼ぐ事が仕事だな。ここまでは合っているが『人力庁』は不正解だ。そもそも人力で働く事とは具体的に何を示すのかね?」

 「その能力(ちから)に頼らず、普通の人と同じく頭脳と体力で仕事をする事だと思いました」

 雑賀の答えの鳳仙先生が目を丸くする。

 「どうしました? 俺、変な事言いました?」

 「すまん、思った以上にまともな答えだったので、少しビックリしただけだ。雑賀、お前脳みそがちゃんとあったんだな」

 鳳仙先生の声にクラスメイトから失笑が漏れ、雑賀はちょっと不機嫌そうな表情を浮かべた。

 「すまん雑賀、先生が言い過ぎた。お前の言ったように能力を使わず業務に携わる者は各庁に一定数居る。主に事務や庶務を行っているな。能力者ではあるが能力(ちから)が弱くて能力を使う事を前提とした業務が行えない者達だな。では、その笑いを噛み殺している天野、人力庁について説明してやれ」

 鳳仙先生の指名を受け、口と腹を押さえていた天野が立ち上がる。

 「はい、『人力庁』とは一般人の中で発生した能力者の発見・保護、他の能力者の国からのスカウト、及びこの国の能力者の教育を司る庁です」

 「よろしい。天野の言った通り『人力庁』とは能力者の発掘・育成が主務だ。先生達も人力庁に所属している。国を構成するのは軍事力、経済力、そして人材の力だ。古くは人は石垣、人は城とも言われるように、優秀な構成員は非常に重要であり、それを司るのが『人力庁』なのだ」

 天野の答えにウンウンと頷きながら鳳仙先生が言った。

 「そう、能力(ちから)の弱い奴は落ちこぼれるのがこの国の掟。哀しいがそれが現実だ」

 天野が少し嫌味に言った。

 「それは少し違うぞ天野、たとえレベルが低くても能力の使い方や鍛え方次第で貢献する事が出来る。具体的には財力庁だな。例えば十キログラム程度のLV2念動力(テレキネシス)でもその射程距離を一心に伸ばし、衛星軌道上の宇宙ステーションに物資を運べる程に鍛え上げた者は大きな財を国にもたらし、最終的にはAランクに昇格した」

 「先生、でもそれはAランクに成るまで二十五年も掛かっています。私は実力さえあれば数年でAランクになれる戦力庁に入りたいです」

 「おお、天野の進路希望は戦力庁か、厳しい道のりだがお前なら何とかなるかもな。だが、先生の業務はお前達生徒の可能性を引き出す事だ。単純な戦闘だけでなく、お金を稼ぐ才能や、人を育てる才能を開花させるのが仕事だ。だから宿題を出す」

 鳳仙先生の『宿題』というキーワードに生徒達が「え~」という声を上げる。

 「今から渡すプリントに自分の能力(ちから)でどんな商売が出来るかを書いて来週の授業までに提出しなさい。例えば、心霊治療の応用で切花をいつも生き生きとさせる使い方とか、過去には良い例がいっぱいあったぞ。想像力とそれを実現させる能力(ちから)こそが君達の将来に幸をもたらす」

 そう言って鳳仙先生は『僕の、私の能力(ちから)を生かした商売について』と書かれた紙を配った。

 「何か質問はあるか?」

 鳳仙先生が生徒達に尋ねる。

 「先生! Aランクって何ですか!」

 「そこからか! 雑賀!」

 終業を告げる鐘が鳴り響く中、雑賀は補習を告げられ少し顔をしかめた。

お読み頂きありがとうございます。

今回の小ネタは「ワンモアセッ!」ビリーズブートキャンプですね。

時事ネタは風化が早いので使い時が難しいですね。反省。

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