その9 クラス代表決定戦
「さて、みんな能力測定は終わったかな」
大掛かりな測定に引き寄せられたのだろう。校庭にクラスの生徒全員が集まっていた。
「ええ、終わったようですよ先生」
周囲を見渡し天野が答えた。
「じゃあちょっと休憩して。それからクラス代表を決めるぞ」
「クラス代表って?」
「そうか雑賀は知らなかったか。クラス代表は簡単に説明するとクラスで一番戦闘に長けた生徒の事だ」
雑賀の問いに鳳仙先生が答えた。
「なにそれ、面白そう。だけど危なさそう」
「まあ、参加しなくても良いぞ、クラス代表は九割方決まっているからな」
「そうなのか」
「ああ、誰だって勝ち目の無い戦いはしたくはないし、先生も生徒に怪我させたくは無い。先生の指名で大抵は決定するな。事実、A組の代表はそれで決まっているし文句を言う生徒もいなかった」
フォークリフトから降りながら鳳仙先生が言う。
「ちなみに我がB組の代表は天野に決まりだ。誰かが異論を挟まない限りはな」
「先生、あたしは雑賀君を代表に推薦します!」
とととと鳳仙先生に歩み寄り、朝顔が言った。
「はい?」
急に指名を受けた雑賀が驚きの声を漏らした。
「おおそうか、実は先生も雑賀は候補にと考えていたんだ。天野が体調不良の場合の補欠として」
「でしょ、あたし人を見る目はあると思うんだよね」
二人が意気投合する。
「先生、それは転校生を買いかぶり過ぎですよ。こいつは使えない馬鹿力野郎です」
天野が二人に口を挟む。
「馬鹿力は良いが、使えないは聞き捨てならないな」
少し気を悪くしたのか雑賀がムッとした口調で言った。
「使えないから使えないんだ。論理的に、馬鹿にも分かるように簡潔に説明してやろう」
「おう、説明してくれ」
ああ、一日で売り言葉に買い言葉を二度も使うとは、一触即発の状況に周囲の空気が冷え込むのを感じながら雑賀はそう思った。
「お前とあのフォークリフトとどう違う? あっちの方がパワーが上じゃないか。どこにでもある機械で代用出来る超能力に価値はないだろ」
天野の言葉に雑賀は少し考える。
「なるほど一理ある」
少し納得した調子で雑賀が応えた。
「だから馬鹿と言われるんだ! 少しは頭を使って考えろ!」
天野が怒気を孕んだ声で言う。
「いいか、お前の力は使えないが、そう言われて素直に受け止めてどうする。お前の方が体積が小さいとか、エネルギーが食料だけで効率が良いとか、直方体だけでなく複雑な形状の物体を扱う事が出来るとか、何か考えられるだろう。彼を知る前に己を知れ。考える事を止めるなら、究極生物にでもなって宇宙へ飛んでけ!」
まくしたてるように天野が言葉を続けた。
「天野、お前って実は良い奴なのか?」
雑賀が少し考え込んで言った。
「竜ちゃんは優しい良い子だよ」
朝顔もその意見に同調する。
「天野は少し堅物で厳しい事も言うが、基本的に相手の事を思いやる自慢の生徒だ」
鳳仙先生もそれに続く。
「だから話を逸らすなと」
天野が呆れたように言った。
「まあ、そう怒るな天野。雑賀はここに来て間もないんだ。常に能力の応用法を考えるこの国とは文化が違うんだ」
少しおどけるような口調で鳳仙先生が言った。
「雑賀、これから学ぶ事になると思うが、自分の能力をどう活用し生かすか、それを考える事はとても重要だ。生かす方向は色々あるが戦闘はその一つだ」
「んー、俺はあまり念動力を意識して生活して来なかったからよく分からないけど、そう言われたなら考えるようにするよ」
「だからお前は、言われたから考えるとか、自分の意見が無いのか!」
「いや、もっともな意見だからそう思ったんだが。やっぱお前、口悪いよ! 言い方ってもんがあるだろ!」
二人が睨み合う。
「あー分かった分かった。じゃあクラス代表を決める試合をしよう。勝った方がクラス代表で、遺恨は残さない。これでどうだ」
「いいですよ、転校生に能力の使い方を教えて上げますよ」
「いいぜ、拳を交えて友情を深める。俺好みの展開だぜ」
「よし、じゃあルールを説明する。そこの四角い線の中で戦う。場外に出ると一時中断して先生がカウントを取る。十カウント以内に戻れないと敗北、相手がギブアップ宣言したら決着、口が聞けない場合は地面か相手の体を叩いてタップしろ。試合時間は十分、勝負が付いたと先生が判断したらストップを掛ける。また時間切れの場合は先生が判定で勝敗を決める。相手が即死するような攻撃は禁止だ。その他には特に制限事項は無い。能力の限りを尽くして戦う。これがルールだ」
鳳仙先生がルールの説明を行った。
「結構物騒なルールなんだな」
「なんだ怖気づいたのか、だったら棄権かとっととギブアップするんだな」
「言ってろ」
「では二人とも中央の開始線に並べ」
鳳仙先生の声に合わせ二人が向かい合った。
「始め!」
お読み頂きありがとうございます。
今回はネタはないです。やっぱり主人公がバトルするのは王道ですよね。
ワンパターンじゃないですよ、決して(目を逸らす)




