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2013/4/27 東京 二

____2013年4月27日 東京 中野区


中野区に流れる神田川は一級河川であり、荒川の支流である。

神田川は元の名前を平川と言い、かの徳川家康が江戸に封建されてから治水工事によって江戸の人々の生活を支え続けてきた川である。


徳川の時代とは日本国土の大改造時代であった。今まで戦に明け暮れていた大名は幕藩体制に従い、すべからく徳川家への忠誠を誓うことで日本に真の平和が訪れた。平和になれば大名は戦で領地を獲得することはできない。自分が今、幕府から与えられている土地が財産の全てである。こういった状況において徳川も含む大名ができる財産の増やし方は大抵一つしか無い。それは土地の生産性を向上させることだ。

こうして日本各地でインフラの整備が行われた。農業用水道、道、海岸の埋め立てなどの整備が200年という長大な時間行われた結果、今の状態の日本国土が形成された。

幕府が60年もの歳月を費やして江戸湾に注ぐ利根川を大きく東側に曲げ、銚子を通って太平洋に注がせるようにした利根川東遷の規模の大きさを考えると、この時代ほど日本人が自分の住む土地をより良くしようと努力した時代はないだろう。

今我々が利用するインフラ系の社会資本は大抵の場合、江戸時代の整備が起源となっている場合が非常に多い。


神田川に沿った道で礼子と公彦が凛を探している。この道は凛がよく通る道で買い物をするときのルートや、散歩なんかもこの道を使っている。街路樹の桜の木は花を完全に失い、若葉がのびのび成長しようとしている。

2人はこの道で凛を探す前に彼女に電話をかけている。凛は出なかったが、問題はそれだけでない。

「おかけになった電話番号は、現在使われておりません」

凛の携帯番号が抹消されていたのだ。これはあり得ないことだ。こうなると2人は凛のことがますます心配になってくる。

「はあ、ほんとにどこに行ってるんや凛ちゃん」

「わからないな・・・放課後から消えたのなら移動範囲が限られてくるからこういう所で見つかりそうだけど・・」

「昼からおらんてどういうことやねん!俺らに何も言わずに姿をくらますなんて!」

「・・・なあ、公彦」

「ん?」

「普通、女子高生が授業をサボって行くようなところといえばどこなんだ?」

礼子が思いついたように公彦に問いかける。

「あー確かに、そこから考えるとアイツがおる場所を絞れるかもしれんな。

例えば・・・ゲーセン?」

「そんなのいつでも行けるだろうし、アイツはゲーセンに行ったこと無いんじゃないか?」

「まあそうやけど」

「・・・・・・・公彦、お前、凛が大学生と付き合ってるとか、そういったことは聞かないか?」

「・・・ハアァッッッ?!!」

公彦は関西人バリのオーバーリアクションで危うく転びそうになる。

ちなみに公彦は関西弁チックな言葉使いであるが関西圏に住んでいたことは一度もない。

小さい頃テレビで関西芸人のコントを見て以来、その独特の発音にインスパイアを受けた公彦は意識して関西弁を話した。結果、彼のネイティブランゲージまでもが関西弁になってしまった。

ちなみにフォーマルな場では彼も標準語を使うらしい。

「うるさい、そういった話を聞くかどうかって言うことをお前に聞いてるんだ」

礼子が煩わしそうに言う。

「き、聞くわけ無いやろ!そんな話が俺の耳に届けばその大学生とやらは生きて明日の朝日を拝めんで!」

「うーん、女子高生と大学生の密会・・・ないな、なんといってもあのムツリンだからな」

凛は中学生の時から飾り気のない女子で男女が付き合うとかどうとか、といった話から最も遠い女子であった。

彼女曰く

「たかが中高生が好きだの付き合ってだのなんて言ってるけど、わたしはそんな事を言う人達を一切信用しようだなんて思わないわ。ただの子供のごっこ遊びよ、あんなのは。子供に愛がどうだなんてわかるわけ無いんだから」

ということをよく2人に言っていた。



____同日 千代田区 ムラサキタワービル


明石はタバコの火を消す。

凛を連れた明石とウェン、アリスは今から潜伏している紫共会の残党を殺害するために、千代田区から中野区までを移動しなければならない。距離は10キロメートルほどある。

「敵は2人、私達と相手を入らせた人払いの展開限界時間はいくら?」

アリスが明石に問う

「ざっと見積もって10分、もうすでに展開は完了してる」

明石がそう答えるが、ここで凛が疑問に思ったことを明石にぶつける

「え、なんで今の時点でその人払いっていうのを始めてるんですか?今から中野区までって車でも20分くらいはかかると思いますよ?」

凛の疑問はもっともだ。今、人払いを展開すれば明石たちは目的地に到着するまでに展開の限界時間を過ぎてしまうはずだ。

「ふふん、だとよ、蒼人」

ウェンが少し嬉しそうに蒼人に向かってそう言う。

「ああそうだ、車ではそれくらいだろうな。だが俺達には車で移動するほどの時間がない」

「じゃあどうやって・・・」


「こうするの・・さっ!」

「きゃっ!」

明石が不意に凛の体を抱えると部屋の窓の方へ一気にジャンプする。

ここでのジャンプという表現はあくまでフォームのことを指すだけである。

ジャンプによる運動は凄まじい早さ、地面と並行のベクトルを生み出し窓へぶつかりそうになる。しかし明石と凛の体は窓にぶつかることなくガラスをすり抜けて外へ射出され、夕方の都心の上空を一直線に滑空する。明石の後ろにはウェンとアリスが後続していて、3つの物体が高速で空を飛んでいることになる。

しかしそのことを地面に立つ一般人は知らない。たとえ上を見上げたとしても彼らを目視することはできない。明石たちは自分たちの姿を見せないよう周囲に人払いを展開しているからだ。人払いは音速を超えて発生するソニックブームさえ遮断する。

4人は弾丸のようなスピードで目的地へ移動する。この時凛は凄まじい風圧を感じているが不思議と体に強い痛みは感じないし、息もできる。普通なら息なんてできないほどの速度で空気とぶつかっているのにである。

「不思議かい?」

明石は自分が抱えている凛に問いかける

「それがミレニアムノアーズの力、そのほんの一部だ」

凛は返答ができない、口を開ければ大量の空気が肺に入って破裂すると思ったからだ。

しかし実際そういったことにはならないだろう、なぜなら彼女もまた、ミレニアムノアーとしての才覚を発揮しつつあるからだ。


明石たちはわずか20数秒で人払いが展開されている目的地に到着した。そこは中野区の神田川が流れているそばの道である。ここに、紫共会の残党がいるらしい。

「これから残党を探すんですか?」

凛が明石に問いかける

「いや、もう場所はバレてる。あとはあいつらがおとなしく出てくるか、意味のない追いかけっこをするか・・・」


明石がそういった瞬間、いつの間にか彼らの前に茶色のスーツを着た男が立っていた。

「やあやあや、おひさしぶりだねぇ明石くん?」

男は明石を見てそう言う

「細川平三郎・・・まさかこの俺が獲物を仕留め損なうとはな、その退却能力は見事なものだ」

「紫共会残党細川平三郎、ここにカンパネラがあなたを処刑します」

アリスが事務的に死刑の執行を告げる

「オー恐ろしい恐ろしい。1対4などさすがの私でもいなしきれるか・・それでは、こちらも切り札を出そうかね」


そう言うと細川は指を鳴らす。すると物陰から一人の女性が出たてきた。

その女性は普通の1.5倍ほどの長さはあろうかという大きな日本刀を携えている。

「へぇ、この人がカラスの追撃を振りきったフリーランスってわけね。なかなかの美人いや、すげえ美人じゃん?」

ウェンが確認ついでに品定めをしながら言う。

「・・・・・・・」

その女性は何も言わずに明石たちの方を見据える。


ここで凛は眼前の男の正体を思い出した。

あの男は前に明石に殺されたはずの男だ。

「な、なんで・・あの人が生きて・・」

「いや、そもそもあいつは心臓を一回刺された程度では死ななかったんだ。俺の考えが甘かった」

「そう、明石くん。キミがさっさとあの場所をあとにして、私の生死を確かめなかったというのがキミの最大のミスさ。・・そういえば、その小娘は何やら明らかな素人らしいが・・一体何のつもりだ?」

「新しいカンパネラの構成員さ、今日はお前を使って研修だ」

「い、いやわたしは入るなんてまだ一言もいってないです!」

「・・・ハーッハッハッハ!面白い!この私を研修材料にするなどと・・・」

ここで細川平三郎の目が変わる

「死ぬ覚悟はできてるんだろう・・なぁあ!!」


突如

明石たちの視界が真っ暗闇に変わる。しかしそれは細川が明石たちの目をどうこうしたわけではない。

明石たちは大きな黒い球の内部に閉じ込められたのである。

「紫共会はあぁ!!東京の守護者であると同時にいぃ!!人類を間違った方向へと導き続ける愚かなゴミクズどもをおぉ!!その肉の一片も残さずに黄泉の国へ送る使命を持っているうぅ!!」

「その両方の使命に水を差すテメェらは・・紫共会会長の俺があぁ!!

黄泉の国へ送っていぃぃやあぁるうぅぅ!!!」

細川はそう叫ぶと明石たちを包む黒い球を圧縮させていく。

「な、何かが迫ってきて・・あ、明石さん!どうするんですか!?このままじゃわたしたち何かに押しつぶされちゃいますよっ!」

「慌てるな陸奥。今のうちに自分がどうすれば生き残れるか考えておけ。俺達がこの結界を破ったらあとはすぐに勝負がつく。双方が全力を出し、どちらかが押し負け、殺される。お前は自分で自分の身を守りつつそのさまをよく見ておけ」

この状況で自衛を求められても凛にできるだろうか。少なくとも彼女自身はそう思わなかった。

そう言っているうちにウェンが結界を殴りつけて豪快に破る。ガラスが砕けるような音とともに結界が破れ、4人が外の光を浴びる。


しかし明石たちは細川とその傭兵の姿を確認できなかった。どうやら細川の結界はあくまで次の一手のための時間稼ぎでしかなく、明石たちの殺害は"できればいい"程度のものでしかなかったらしい。

そして日本刀を振りかざした女が直上から明石に斬りかかる。すさまじい衝撃が地面を伝わる。明石は間一髪避けたが、その後も女の攻撃が続く。

「くっ、こりゃあ手強いぜ、あの姉さんの行動には全く隙がねえ」

明石をとらえ続ける女に接近しようとウェンが挑むも、そのつど刀の軌道に阻まれる。女が使っている日本刀はただの日本刀ではない。

そもそもミレニアムノアーズにとって一般的な武器、例えば銃弾、剣等は通用しない。明石が細川をぶっ飛ばして壁に激突させた時も、普通は壁が血まみれになって人間は潰れるはずだ。しかし細川は血を流さないどころかすぐに平然と起き上がっていた。ミレニアムノアーズはその程度の力では傷つけられないのだ。

なら女が使っている刀はなにか?もしそれがただの鋼鉄でできているものなら明石はわざわざ避けなくてもいい、明石に傷はつかないからだ。

その刀は女の力によって対ミレニアムノアー加工が施されていた。こういった加工をする技術をその女は持っている。もちろん加工をするためにはそれなりのミレニアムノアーとしての力が要求されるが。

よってもし明石があの長大な刀に一太刀浴びせられるようなことがあれば間違いなく重症を負う。当たりどころによっては簡単に殺せるのだ。


(洗練された動きは何の障害もなければ隙がない。そして隙を作るためにウェンが攻撃を仕掛けようとしてもあの刀にかかれば必ず負傷する、だから深くに踏み込んで手を出せない・・・・これがあの人の強みですか・・・)

アリスが冷静に分析する。そのとなりでは凛が明石に言われた通りに戦闘の様子を見続けていた。

「陸奥さん、あなたは細川がどこにいるかがわかれば知らせてください」

「は・・あ、はい!わかりました」

アリスによって凛にまた1つ仕事が増えた。

「・・・たしかに、強い傭兵です。しかし・・たかが強い傭兵というだけでは私達3人にはかないません」

そう言うとアリスは静かに目を閉じ、少しだけうつむく。


そしてアリスの目が勢い良く見開かれる。その目はさっきまでの美しい青色の目ではなくなっていた。

黒い、そして瞳孔が怪しく光る赤色になっていて、その恐ろしい2つの目が刀を振るう女を集中して見つめる。

「・・ッ!?」

すると女の動きが一瞬止まる。この機を逃すまいとウェンが渾身の蹴りを入れようとしたが、突然

「ウェンさん!横です!!」

凛が細川の姿をとらえた。それと同時に細川がウェンに黒い球を大量に放つ。この黒い球はもちろん、細川が作り上げたもので、現実世界にある物質で構成されていない。

「傭兵を助けるなどと不本意ではあるが・・致し方ない、あいつがいないと勝てないからな・・・」

姿を表した細川がそう言ってウェンの付近まで到達した球を炸裂させる。

「んがッ!?」

ウェンは吹っ飛び近くの建物にぶつかり、落ちてくる瓦礫に埋もれる。

「ウェンさん!!」

「彼は大丈夫です、あなたは残った黒い球の軌道に注意してください」

アリスが凛を見ずにそう言って注意する。

「それより、もう勝負の決着が着きそうですよ」


女の執拗な追撃から開放された明石はすぐに体制を立て直す。女が明石の方に向き直った時はすでに明石の姿がなかった。

ただ、陽炎とは違う、不自然な空間の歪みが残るだけだった。

次の瞬間、細川が絶叫する

「ごああああああああああ!!!」

黒い球を打ち出し続ける細川の右腕が消し飛んでいた。

「うるせえ、ゴキブリ野郎。心臓1つで死なないテメェが腕の一本なくなっただけで喚くんじゃねえよ」

明石が自らの腕を叩きつけ、細川の腕をすっ飛ばしたのだ。10メートルほどの距離を一瞬、いや一瞬より早い速度で移動し、彼は細川の力を完全に封じた。

そのあまりの早さに細川は"瞬間"が終わるまで自分に起こっている異常事態を確認できなかった。

「あ、あ”あ”あ”っぐっ!」

明石はもだえ苦しむ細川の首を掴んで持ち上げ、引導を渡そうとしたが、傭兵が自分の雇い主を守るため、再び高速で明石に斬りかかる。

「テメェもテメェでうぜぇ、命が惜しけりゃ引っ込んでろ」

明石がそう言うと細川を放り投げ、女に向かってかかる。


「・・・・瞬間移動?」

凛がそうつぶやくとアリスがイエスと言って

「しかし、ただの瞬間移動よりよっぽどたちが悪いものですよ」

と付け加えた。

「瞬間移動の瞬間、彼はどこにもいないし、どこにでもいる。さしずめシュレディンガーの明石くんといったところでしょうか?」

凛にはよく意味のわからないことをアリスは言ったが、どうも理解しかねるほどの原理で明石は戦っているのだということは分かった。


そんな時、凛とアリス、明石が女と戦闘を繰り広げている中、なんとか体制を持ち直した細川がこの場にとって不自然なある現象を見つける。



「なあ、さっきから人がぜんぜんおらんやん、どういうこっちゃ」

「さあ、なんかの偶然じゃ・・・って、アレはムツリンじゃないか?」

「へ?・・あっ!凛ちゃん!ほんまや、凛ちゃんやん!おーいっ!」

「ここにいたのか・・。ん?ムツリンの周りにいる人たちはなんだ・・?」

「なんか素振りの音みたいなのが聞こえるけど・・・」



人払いがされた空間に、本来入ることのできない一般人の男女二人がこっちに向かってきている。

(公彦と礼子!?そんな・・なんで?)

凛が驚きを露わにする

「!?・・・陸奥さん、もしかして彼らはあなたの知り合いですか?」

「っ!・・・はい」

(どうして・・・明石くんの人払いは陸奥さんほどのイレギュラーがない限りはまず破られることは無いのに・・・まさか陸奥さんが知らずに呼び寄せている・・・?だとしたら彼女にはどれほどの眠っている力があるというの・・・?)

アリスが原因を考えていると突然、細川がこちらに向かってきている2人に猛スピードで接近し、男を蹴飛ばし、女子の方を残った左手で強引に掴む。

「き、公彦!礼子!」

友人の危機に凛も恐怖する。

礼子はいきなり見知らぬ男に首を掴まれたことに抵抗する。

「!?っ、な、何ですかあなたは・・はっ離して・・えっ!?」

礼子は自分の首を抱えている男に右手がなく、途切れている腕の部分から血が流れているのを発見し、恐怖する。何が何だか分からないが、突然目に入ったグロテスクな光景に礼子は血の気が引いた。

細川は大声で叫ぶ

「てめええええらあああぁ!!動くんじゃねええええ!!」

蹴飛ばされて意識を失っている公彦以外の、この場にいる全員が細川の方を向く。

しかしこの状況で人質を使うというのはどうであろう。細川は自分が人質にとっている人間が敵の身内だということを聞いていたためこういった手段に出たわけだが、それでもこの作戦は無意味である。

人質を助けるために明石がもう一度細川の方に瞬間移動するだろう。それより早く細川の手が人質を殺すことができるのならまだいいがそれでも、アリスの目を使った力で動きを止められれば絶対に間に合わない。

いままでの敵の行動からそれくらいは予想がつきそうなものである。

しかし、今の細川にはそんなことを考えている余裕などなかった。余裕がなかったゆえに彼は完全に詰みの状況に自分から入っていく事になった。

もう勝負はついてしまっている。

「・・いや、おっさんそれは意味ないんじゃね?」

ふっとばされてから気分が萎えて活躍してなかったウェンが瓦礫に埋もれたままつぶやく。

が、そのつぶやきは細川に届かない。


そして細川が止めた場の動きがついに動き出す。

血しぶきが上がる。どこからか?細川の首からだ。彼の首はある一撃により一刀両断された。

そして高く飛び上がる細川の首を見つめながら首を切った人物が初めて口を開き、こう言う



「紫共会、細川平三郎・・・契約違反だ・・・・」



細川を殺したのは雇われたはずの女であった。女はこの場にいる誰よりも早く、細川を攻撃した。

これにはカンパネラの3人と凛も驚いた。傭兵がいきなり雇い主を殺したというのもそうであるが、何より驚いたのはその早さだ。

女は明石と同じく瞬間移動を使っていた。しかし明石と違うのは移動した直後の周囲の状況である。

爆音が鳴り響き、突風が吹き荒れる。ソニックブームが発生した。これは女が音速を超えて物理的に体をそのまま移動させたということになる。

女は首がなくなった細川にまだ捕まっている礼子を細川の腕から引っこ抜いて助ける。

そして女が続けて言う

「紫共会、お前たちは自分たちの使命は東京の守護神であることだと言った」

「しかし細川、お前は罪のない東京の市民に危害を加えようとした」

「よって私はお前を紫共会の構成員とは認めない」

「お前は万人に憎まれ、殺されるだけの、ただの悪党に成り下がった」


「これで紫共会は消滅、契約はこの時点をもって破棄される」


刀を鞘に収めつつそう言い放つ。

この女はただの傭兵ではない。


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