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2013/4/20 東京

____2013年 4月20日 東京 


「するとtを代入した式でtについての積分を求めることができて_______」

教室には数学教師の声とチョーク、ペンの音だけが存在している。そんな中で

陸奥凛はスヤスヤと寝ている。よりによって授業態度に厳しい数学教師の授業で。

幸いまだ気づかれてはいないものの、彼女の近くにいる生徒諸君はさぞかし迷惑だろう。彼女の寝息がうるさい、というわけではなく、数学教師に見つかってしまった時、彼の魂の咆哮を聞かなければならないのは寝ている本人だけではないのだから。


案の定バレて彼女は涙目に。そしてクラス全員にちょっとしたヘイトを蓄積して今日の授業は終わった。


「はあぁぁぁ~~っ」

(ついてないなあ、全く)

そんな感じで落ち込む彼女にいつもの二人が寄ってきた。

「隣の教室から覇王の怒鳴り声が聞こえたかと思えば、標的はおまえか」

「どうせ夜遅くまで液晶とにらめっこしてたんやろ。おれは知ってんねんで!」

「なあぁーによあんたら、人の不幸をわざわざ笑いに来たってわけ?」

「まったく、わたしの苦悩も知らないで」

「苦悩って・・凛さんそりゃあ自業自得ってもんですわ」

「はぁ、神童ムツリンもこうなってはかたなしだな」

「そこ!まるでわたしが神童だったみたいなうそをつかない!またあることないこと言ってわたしを捉えにくいキャラにすんなっ!」

「あーはいはい、わかったわかった、俺が結婚してやるけん、ここはひとつ落ち着こうや」

「おーよかったなームツリン、早めに結婚相手が見つかって」

「・・・公彦、あんたと結婚するくらいならパプアニューギニアで一生サバイバル生活するわ」

「おいおい、照れ隠しにしちゃあ俺のココロをひどうえぐってくるでぇ」

「そうだぞムツリン、拒絶するならもっとひどい言葉じゃないと」

「はぁ・・・・もう帰るわよー」

そう言って凛たちは教室をあとにする。彼女らは帰宅路が八割ほど同じであるためいつも一緒に帰るのだ。

凛と公彦は小学校からの付き合いで、もう一人の京極礼子は凛たちと同じ中学にいて、受験先が同じだったのを機に仲良くなった。

ちなみに覇王とは数学教師に学生が授けた名誉ある名前である。


3人は電車に乗り、優先席以外が空いていないことを確認すると、出口の側で手すりに掴まった。そしてここからは普通、今日学校であったことの話とか、勉強の話だとか、テレビ、ネット、ゲーム、うわさ話なんかで会話の花を咲かせるのが高校生のたしなみである。

しかし3人はそういった会話とは毛色が違う話をしていた。

「はあ、生まれる時代をまちがえたわ」

「ほーん、じゃあどんな時代が良かったん?」

「モンゴル帝国の千人隊の長になって東欧で略奪の限りを尽くしたかったわ」

凛がそう言うと公彦はちょっと笑って

「ンフフッ、なんで東欧なん?中華やアラブじゃいかんかったん?」

「スラブ人のパツキンのチャンネーたちと子作りしまくりたいから」

「ええぇ・・・」

「ん?なに?わたしなんか変なこと言った?」

「う、ううん、べ、別に・・男ならだれでも妄想することやし・・・」

「ただ、女の子のムツリンがそんな下衆なこと言うのはいろいろ問題だぞ」

萎縮する公彦に代わって礼子が凛に言う。

「えー、でもわたし男に生まれたらそれくらいのことしてみたいなぁー」

「凛ちゃん!あかん!それはあかんよ!」

「だって、モンゴル帝国よ?パワーイズジャスティスの世界で自由に生きてみたいのよ」

「うーん、わからんでもない・・・のかなぁ・・・」

公彦が悩んでいると礼子が凛の気持ちもわからなくはないといった感じで

「私はカリブの海賊になってみたいな」

と言った。

「映画みたいな?」と凛が問いかけると礼子は首を振って

「ううん、私は港を襲撃して奴隷をゲットして、その人手でプランテーション農業をする」

「おいおい、こっちも大概殺伐としとんなぁ」

「農業で得た資金で海賊業をさらに強化して大艦隊を作る。そしてイギリスの私掠船団として無敵艦隊と死闘を繰り広げる」

「そしてゆくゆくはイギリス東インド会社の中枢に入り込んでカリブ海をイギリス領と言う名目で私のものにする」

「もちろん最後は裏切るのよね?」

「もちろん、最後には独立してカリブ帝国をつくりあげる」

「もちろんて・・・こわい・・・」

「公彦は?何を略奪してみたいの?」

「ええ!?俺も略奪せなアカンの!?・・ううん、そうやなぁ・・・」

「やっぱ戦国大名やろ!侍になって同じ侍と雌雄を決するってのは日本男子としての憧憬の的や!」

・・・・・・・・・・・

「は?」

「・・・・・」

二人が凍りつく。どうやら戦国大名というチョイスは凛と礼子には受けないどころか逆効果だったらしい。

「はあ・・・公彦・・わかってないわ」

「まったくだ」

「ええ?だめなん?」

「だめよ」

「まず発想がにわか臭い」

「にわか臭いって・・・戦国ファンの人たちにあやまれや・・」

「わたしたちが求めているものはそういうのじゃないのよ、わかる?」

「よくわかんないよ凛ちゃん・・・」

(´・ω・`)こんな顔をしながら公彦はすがるように凛を見る。

「まあ分かるようになるまで勉強をすることだ」

礼子はそう言ってから目的の駅についたことを2人に知らせて、3人は電車をあとにする。


3人の日々の会話と言うのはこういったものだ。つまるところ歴史オタクである。このニッチな共通点が彼女らの友情を確固たるものにしているのだ。

趣味というものはその分野が狭いものであれば狭いものほど、共通の趣味を持つ人間同士の友情は深くなりやすい。

そして人間は共通の趣味をもつ友人との会話が、他の人との会話よりべらぼうに面白いものであると感じ、共通の趣味を持つ友人とばかりつるむようになる。

そういったことが連続的に、複合的に、社会的に起こることで


「オタク」


という存在が発生する。いろんな分野のオタクが世の中に存在するが、どんなオタクにも仲間が存在する。イメージしてもらうとわかりやすいが、一人のオタクと複数人のグループのオタク、「オタク」を想像するとき、どちらが一般的なオタク像として適切だろうか。固まっているおっさんたちがいかにもオタクと言った感じではないだろうか。

つまりオタクになる人はその人の人間性とか性格ではなく、趣味に完全依存している。こうなってはオタクの根絶など考えるだけでバカバカしい、虚無、幻想の話である。

この世に多くの「趣味」があるのならその時点で「オタク」は存在する余地があるのである。 

オタクとはそう定義されるべきなのだ。



____2013年4月21日 東京


日付が変わったとはいえ、夜中に起きている人々はまだ20日の気分である。

そんな時のとあるホテルの一室で一人の男が携帯越しに話している。


「まあ、向こうがどう出てきても、うまくやるさ。俺はそうできる力がある」


「別に慢心しているわけじゃないさ、自分の力量と向こうの予想力量を分析して、君に正確に伝えているだけさ」


「はは・・そうかもな・・それじゃ、また仕事が終われば連絡するよ」


男は電話を切り、都会の夜景のある一点を望みながら一人つぶやく。




「反動主義者ども・・・今日の生がてめぇらが父母から授かる最後の生だ・・」










一話でもっと書かないとダメでしょうか、うーん研究しときます。

オタク論議は書いてる途中で悟りました。

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