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可愛い友達

作者: 柊葉一

 友達の話だ。

 その子は律香といって、大学で同じクラスになった。目がパッチリしていて、唇がふっくらと女の子らしくて、最初から可愛らしい子だと思っていた。その割に話し方や態度は堂々としていて、自分の意見をはっきり言えるさばけた性格だった。そして時々どんくさい。

 そんな彼女とはすぐに打ち解けて、なんでも話をできる仲になった。

 入学して半年ほどたったある日、律香がまじめな顔をして「どうしよう」と話しだした時があった。

 彼女の所属している音楽サークルの4回生と、飲み会の帰り道でキスをしてしまったというのだ。その先輩とは、そのころ頻繁に律香が「すごい人がいるの」と話題に上げていた人だった。

 私は律香に聞いた。

 「その先輩のこと好きだから、キスしちゃったんでしょ?それに先輩も、律香のこと好きだからキスしたんじゃないの?」

 「……うん」

 どうにも切れの悪い返事だった。

 「付き合ったら?」

 「そうなったら私は嬉しいんだけど……」

 「こういうことははっきりしとかないと、気まずくない?」

 「うーん……でも、その先輩さぁ……」

 「なに?」

 「彼女さんいるんだよね」

 私の顔色をうかがう律香の心配そうな表情を、今でもはっきりと覚えている。

 律香のあの告白からさらに半年ほどたって、その先輩は卒業して東京で就職した。

 卒業式の日、さよならをしてきたのだと、律香は泣くのをこらえながら私に話してくれた。私は「そっか」と言いながら彼女の背中を撫でてやることしかできなかった。彼女は本当に先輩が好きだったのだ。

 彼女の気持ちを、私はすべては理解できないし、どちらかと言えば彼女のしていたことは、許されることではないと思っている。ただ、好きな相手にひたむきになれる姿勢は、少し、羨ましくも思う。

 私にも入学してからずっと好きな人がいる。いまだ普通の友達止まりで、これから何を頑張ればいいのかもよく分からない。そもそも恋愛を頑張ろうとしている自分は、どこかむずがゆくて恥ずかしくなってくる。けれど、律香が先輩の事を嬉しそうに話していた姿を思い浮かべると、やはり、あれは可愛らしかったと思う。自分もあんな風に話すことができる日がくるのだろうか。

 とりあえず、彼のことを律香に話すところから始めようと思った。

 

 

 

これから少しずつ周辺の話を広げていけたらいいと思います。

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