Lampshadeと夏の終わり rotation8
最近、ブログの最後を結構『ええ』で終わらせている感じがして書きました。
最近、眠れない夜が続いていた。
でも僕はソレが今年の夏の異常なほど暑い気温のせいだと思っていた。それに僕はそもそも暑がりだし、そろそろ年齢的にも何かしら一つくらい自律神経失調症とかが発症してもおかしくないだろうし、それにそもそも暑いと思考が滞るし、滞ると「本当はもう少し位はできるはずの自分」のことを想像してしまうし、で、結局出来なくてお酒に逃げてしまうし、なので、つまり、だから、それが、結局のところ諸々のストレスになって僕は寝られなくなったのだろう。
と、
己を不明にstressを感じ、そのstressから我が身を守る行為がまたstressを生む。
人間というのは得てしてそういうものだ。
三島先生の「音楽」でもたしかそういう部分があった、だから間違いないだろう。
・・・あれ?たしかあったような気がする。五、六年前に読んでそこに感銘を受けたんだけど、どうだったんだっけ・・・?
・・・まあ、とにかく、
三島先生が言うんだから間違いはない。
それに僕のこのstress程度のものが弓川麗子のソレと肩を並べるなんてそんなおこがましいこともないし、だから僕はそれをほっておいた。
まあ、おそらく時間が解決してくれるだろう。だからこの災害夏季が過ぎ秋になったら僕は寝るぞ。三年寝太郎が引くほど寝るぞ。それに何もゾンビに噛まれた訳でもなし、まあ、ほっておいても大丈夫だろう。
と、
そういう判断のもと。
しかし、
どうやら、どうやら違ったようだ。現に朝晩は冷える様になった昨今においても僕は寝ることができないでいる。少しくらいの後遺症はまあ仕方ない、それも考慮にいれて少し我慢して過ごしていたのだけど、でも、どうもおかしい。それに、そもそも眠たくない。いつの頃からかうまく言い表すことができないけど、でも、眠たくない。一切眠たくない。気がついたら僕は一切眠たくないのだ。
は?
疲れた=眠い、でも寝れない。だから困っている。
ではない?
眠れないから困っている=別に眠たくないから。
こうなのか・・・?
僕は怯えた。
これは、つまり・・・村上春樹さんの「眠り」ではないのだろうか?
・・・、
僕は怯えた。
「もしそれが事実だとしたら・・・」それに怯えた。
あれは・・・、
あれはだって・・・、
僕は震えた。
あの話は・・・、
僕は震えた。
童話の藁の家の中で怯えてアラシが過ぎるのを待つことしかできない子豚のようにブルブルと震えた。
「まあ、単なるstressでしょう。まあ、あまり細かいことやつまらない事でくよくよしないようにしなさい」
僕を見ないで医者はそう言った。
「ですが、眠くないんです」
僕は言った。それなりに切迫感が出ていて、自分で驚いたくらいだ。
そう言うと医者の先生は僕の方を見て、
「・・・じゃあ何か、君自身に気になることでもあるんじゃないのかね?」
そう言った。
「・・・気になることですか・・・」
「神経症っていうのはね、得てしてそういうものだよ?」
「・・・そう、ですか・・・」
「スマホのバックヤードってあるでしょう?」
「・・・あ、ああ、ありますね・・・」
僕はあまりよく知りませんが、でも先生が言うんだからあるんでしょう?
「一個のアプリを終わらせないでまた別のアプリを起動したらバックヤードっていうのは発生する。そしてそれはあるだけでスマホの電池を食うものだ。まあ、当たり前だね?終了させないからそういうことになる。小さい頃、お父さんとかお母さんとかに教わらなかった?『遊んだらおもちゃは片付けなさい』って」
教わりました。でも、人生の最初の方は僕は楽しいことを優先させて生きてきました。ソニックバスター捨てられてからは凝りましたけど・・・。
「それにね、これは全部人間が考えたことだ」
「まあ・・・そうですね・・・」
「人間が作った機械だ、それで起こることはもちろん人間にも起こるよ?」
「・・・僕自身が思い出さないようなことで、僕は今寝られないんですか?」
そんな馬鹿げたことがあるか?
「そういうことになることもあるよ・・・」
「そんな・・・」
「人間なんていうのは得てしてそういうものだ」
病院から放逐された後、整理できない感情はまだあったものの、僕は仕方なく帰路についた。
朝晩は随分と涼しくなってきたが、昼間はまだ暑い。陽が当たる所に出るといまだに電子レンジにいるような気がする。歩くとすぐに汗が噴き出してくる。帰ったら少し玄関先に打ち水でもしようか・・・。
そんなことを考えて歩いていると、突然、胸ポケットのスマホが震えた。
「・・・」
・・・メールだ・・・。
僕がGmailのアドレスを教えている人っていうのはそれほど多くはない。
案の定、差出人を見ると『実家』という記載があった。
実家から・・・?
なんだ?
どうせまた、「ご飯は食べているのか?」とか「仕事はちゃんとやっているのか?」とかそんなんだろう?
そう思って僕が本文を見ると、
『曽祖母です。元気ですか?』
メールはそういう書き出しで始まっていた。
●●さん、曾祖母です。元気ですか?
こちらはもう、すっかり夏も過ぎ一日一日と秋が深まりつつあります。
そちらは如何でしょう?まだまだ暑い日が続くのでしょうか?いずれにしても体調管理などには十分に気をつけて過ごしてください。
さて、順番は前後してしまいましたが、いきなりこんなメールをして申し訳ありません。大層驚かれたんではないかと思います。
ただ、あなたにこのようなメールを送ったのは私なりに理由があってのことです。
どうか、ご了承頂きたいと思います。
それというのも、あなたが昨今インターネットで色々なものを書かれているのを知りまして、それを読ませていただいた感想を送らせていただきたいのです。
老婆心ながらお読みになって頂けますと幸いです。
まず、アメーバさんのブログについてですが、どうもあなたは虚実織り交ぜて書かれるのが好きなようですね。面白いと思います。それに毎日やるのは結構なことだとは思います。ただ、毎日やるからには工夫というものをしていかないと人は飽きると思いますよ?たまに写真とか絵とかそういうのをアップしては如何でしょうか?それに、ところどころ誤字脱字があります。そういうのは読む側はとても気になるので、アップをする前に今一度見直しを行い、それからアップしてみてください。
次にツイッターの方ですが、あなたは『即興小説トレーニング』というものをやるためにツイッターのアカウントをとったそうですね?あなたの作品の中で何度かそういう部分を目にしました。別段、結構なことだとは思いますが、そのことを何度となく使っているので、見ている方はそれが目につきます。『またかよ・・・?』と思っていましまして逆にそれを鼻にかけているように写ります。あなたは生活の多くをああいった『芸』に捧げているのかもしれませんが、そういう苦労を見せないことが作る側には大事なのではないでしょうか?それに、あくまでも、あなたの好きでやっていることですからね。それを今一度認識していただけたらと思います。
ピクシブの方も拝見しました。私は絵に関しては特に問題ないのではないかと思います。絵は心です。ただ、何枚かに一枚はとても手を抜いている印象が強いのでそれだけ気をつけてください。あとキャプチャで『絵が上手くなりたい』というような記載は避けられたほうが賢明です。上記のように苦労というのは他者が見ていてあまり気持ちのいいものではありません。
そして、小説家になろうですが・・・、『くねくね』拝読させていただきました。私個人の感想ですが、あれはいけません。それに、あれは●●子さんのご実家の話ではないでしょうか?それをあんなふうに面白おかしくふざけて深刻そうに書くのは良くないと思います。今は住んでいないからと言ってなんでもかんでも書いてしまうのはいかがなものでしょうか?それに作中ではさも『今年のお盆は実家に帰って墓参りをした』かのように書いてありますが、貴方はしていませんでしょう?そういう嘘もあまりいいものではないと思います。なによりも、ああいうものを書く際は全てを仮名にするのが最低限のルールなのではないのですか?あれでは、あなたのお母様のご実家に顔向けできません。ただ、せっかく書いたものですし私も削除しろとは言いませんが、次からは書く前に相談をするなりしていただけたらと思います。
以上です。長くなりましたね?申し訳ありませんでした。ただ年寄りの口うるさい小言だと思ってもらっても構いませんが、あなたがやっていることっていうのは存外、色々な人が見ているということをお伝えしておきたかったので今回このようなことに至りました。どうか肝に銘じておいてください。
最後に、あなたが最近寝られないのはあなたがあの『くねくね』を書いたからです。あなたのお母様の実家をあのように書いたばかりか、お盆にこちらに帰ってきてもいないのに、さもお墓参りをしたかのように書いたのが原因です。もちろん名誉にかけて誓いますが、これは祟りとかそういうものではありません。あなた自身があの話に罪悪感があるからです。
貴方には昔から臆病なところがありましたから、それがあなた自身を苦しめているのです。大体貴方は昔から優しすぎるきらいがあります。書くならそんなこと気にしない、気にするなら書かない。そういう線引きをしないでなんでもかんでも書いてしまうとそういうことになります。どうかご自愛ください。体は資本です。健康は何物にも代え難いのですからね?
それでは失礼します。●●さんもお元気で。
あと、荷物送りましたので、ちゃんと受け取ってくださいね。
ピンポーン。
家に帰り僕が曾祖母からのメールを読み終えたと同時にチャイムが鳴った。
出ると、
クロネコヤマトの宅急便だった。
ダンボールだ。
受け取ったダンボールの側面にはマジックで日通のペリカン便という記載があった。
そう、
僕の実家は確かに日通のペリカン便だったな。
僕はそれを見て懐かしい気持ちになった。
ダンボールの梱包を剥がして開けてみると、
中から曾祖母の葬儀の時に使った卓上灯篭が出てきた。
懐かしいな・・・まだあったのか・・・。
僕は思った。
コンセントにさしてスイッチをつける。
すると僕の部屋は一瞬で群青色に染まった。
そこは、様々な絵柄が横に流れる鮮やかな世界だった。
最近、日が落ちるのが早くなった。
時刻はもう夕刻だった。
僕の部屋はもう外から干渉を一切受け付けない。
部屋は回転する灯篭一色になっている。
涼しくなってきた。
おばあちゃん、僕はこれで許してもらえるんでしょうか?
やがて、
抗えない眠りが僕の前にやってきた。
僕はそのままその場所で横になった。
灯篭はぐるぐると回り続け、景色は変わっていく。
いつまでも回っている。
いつまでも景色が流れていた。
僕は弱い人間だな・・・。ふとそう思った。
人間なんて得てしてそんなもんだ。
耳元でそう聞こえた。
しかしそのあとすぐ意識が混濁した。それがなんなのかも確認できないまま、僕は眠りの只中に沈んでしまった。
特に説明しないまま進んでいく感を出したかったんです。