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反抗声明  作者: みざり
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トゥーリ・トラバリンの朝

ちと少ないかも?




 トゥーリ・トラバリンの朝は早い。

 日の出とともに起き出すので、窓の外もまだ明るくなりきっていない。

 けれどもトラバリン公爵邸では使用人の大多数が起き出している。黒い噂の絶えないトラバリン公爵家ではあるが、仮にも公爵の地位についているのだから能力が低くては仮にも公爵家の使用人が勤まるはずがないのだ。


 トラバリン公爵家の使用人について説明したが、トゥーリの朝に使用人達はあまり関わらない。

 それもそのはず、彼は起きてから部屋を出ることがないのだから。

 恐らくトゥーリが起きていることすら気づいていないだろう。


 それでは彼の起床から使用人達が起こしに来るまでの約三時間ほど何をしているのかというと、まず眠気覚ましも兼ねて寝起きの固まった身体をほぐすために柔軟を行うのだ。

 これは前世の記憶を得てからの日課であった。朝起きてからと夜眠る前の一日二回、柔軟を行うのである。

 三才のときに前世の記憶を得てから毎日欠かすことなく、繰り返したおかげで足もほぼ真っ直ぐに開ける状態を維持していた。



 柔軟はせいぜい十分ほどしかかかりません。

 残った時間を何に使うかと言えば、座禅を組みます。別に言い回しは精神統一でも、瞑想でもいいのですが……。


 自分は魔術の使用し始めてから、幾度となく魔力暴走を経験してきました。

 力を持った本人にすら制御しきれない力など手に余るだけなのですから、力は持てるだけ持つべきだと考えている自分にとっても魔力暴走は、頭を悩ます原因にもなっていました。


 魔力暴走は誰にでも起きる可能性があるモノであり、人によって暴走したときの症状が異なっていることに特徴があります。

 最も起こりやすい症状が魔術の暴発でした。

 調べてみると最下級の『灯火』という魔術が暴発した際、民家一つが全焼したという話があった。これを聞いたとき、自分の顔がひきつるのがわかりました。


 『灯火』が暴発したとき、一般的な魔力量の人間でその威力なのだ。

 自分の魔力量で魔術を暴発させてしまえば、国を消すくらいのことはできそうだったのだ。


 しかし、私の魔力暴走のときに起こる症状は魔力酔いと呼ばれるものでした。

 本来なら別に魔術を暴発させるより恐ろしいモノではありませんが、自分からしてみれば実に迷惑なものではありました。(魔力暴走の症状はどれも面倒なモノばかりですが……)


 なにせ魔力酔いが起きると酒に酔うのと同じで理性が削られ、まともに物を考えられなくなるのだから。

 その影響で普段、抑えている魔力も解放してしまいさらなる暴走を起こす悪循環、そして先日のような醜態を晒してしまうのです。


 なるべく、そのような無様を避けるためにも、魔力の制御訓練に多くの時間を割くようにしています。




* * * * * 




 自分を起こしにきた使用人がまた変わっていたが、いつものことなので気にすることなく朝の訓練を終えて、父と母、兄弟を交え朝食を取った。


 トラバリン公爵家には直系であるトゥーリとその兄に、側室の子供である兄と姉が一人ずつ、トゥーリの下に一人の弟と三人の妹の、合わせて八人の子供がいる。

 あくまで認知しているのがそれだけというだけで、トゥーリの兄弟は実際にはもっと多く存在しているのだ。トゥーリ自身、把握しているだけで三人はいたのだからまず間違いない。


 まぁ、父と直系の兄は仲が悪く、他の兄弟連中もどうやって父に取り入ろうとお互いを牽制しあうので、和気あいあいとはいかない食卓だけれども料理に罪はありません。

 本日のメインである鳥の照り焼き(?)は実に美味しかったです。

 朝からは少し重く思えるかもしれませんが備え付けの酸味の強い果実を絞ることで、さっぱりと食べることができました。



 それに意外と私は兄弟仲が悪くありません。むしろ、父に取り入るためにも向こうからご機嫌伺いに来ますから。

 父と仲の悪い直系の兄ともきちんと交流があります。何よりも兄は中々に面白いことをお友達と計画していますから、仲良くして損はありません。




* * * * *




 そんなわけで実にギスギスとした朝食を終えて、部屋で待たしていたレーヴェに食事を与え、ザッカートを呼びました。

 ザッカートは専属の護衛ですが主人である私が外に出るとき以外は、こちらが呼びつけるまで与えられた部屋で待機しています。



 ザッカートが来たあとに移動し、現在、練兵場にいます。

 公爵邸は広い敷地に練兵場を備えています。

 まぁ、見栄のようなモノですから使っている人間なんて僅かです。今も自分たち以外は誰もいません。


 何故ここに来たかと言うと――――


 「さて、レーヴェ。アナタには最低でも私相手に抵抗できるくらいにはなってもらわないといけません。けれど私は奴隷であるアナタに、あとは自分でどうにかしろと言うほど無責任ではありません」


 私の言葉にレーヴェは顔から血の気が引いていきます。

 先日のことをザッカートから聞く限りではレーヴェは言霊の影響で私を憎んでいると思っていたのですが、反応を見る限りでは強い憎悪で縛られているわけではないのでしょうか?

 少し疑問に感じましたが、今は気にせず話を続けます。


 「なので、私が鍛えて上げます」


 今の自分は本当に良い笑顔をしている自覚があります。




 ――――そう、特訓です!





魔術の威力と魔力の使用量の関係は比例ではありません

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