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反抗声明  作者: みざり
26/29

責任と不死



遅れてゴメンよぉぉぉ~





 「んー?」


 現在、私ことトゥーリ・トラバリンは一冊の本を片手に頭を悩ましていました。


 「どうしたの?」


 声と同時に背中に重みがかけられます。

 問いかけてきたのはクテルでした。

 亜竜の大侵攻から既に一年を経ています。あのあと大侵攻はグゥ爺と王都からやって来た等級外によって終息することになりました。

 クテルの能力の変化が予想外の方向に進むということがありましたが、それ以外は特に変わることなく日々を過ごしました。

 まだ出会ってから一年と少しですが、前と比べて随分と肉付きは良くなりました。骨と皮ばかりの頃が考えられないほどに健康的な見た目をしています。

 背中に貼りついていたクテルを引き剥がし、前に持ってきて抱きつきます。


 「少しばかり苦戦してましてね。思いのほか、厄介な問題が出来てしまったのですよ」


 まだ十も数えないとはいっても女の子にこんなことを言ったら殴られるかもしれませんが、こうして抱きつくと肉が付いたなと実感しますよね。昔は骨が刺さるので痛かったりしたんです。


 「苦戦?何読んでるの?」

 「難しい本ですよ。でも、今日は疲れたので止めます」


 本を放り投げ、クテルを抱えたままベッドに倒れこみました。クテルは嬉しそうにキャーキャーとはしゃいでいます。


 放り出した本の題名は『不死道』というものでした。

 アンデット、スケルトンに始まりゴーストやレイスのような存在の頂点の一つとされるリッチによる研究書です。言うまでもなく禁書認定を受けた本です。

 リッチに至るには二つの方法があります。一つはアンデットが長い年月をかけて進化すること、もう一つはとある闇属性の禁呪を使用することです。

 そして『不死道』の著者は後者の方法でリッチへとなったものでした。

 著者であるリッチはすでに教会によって滅ぼされていますが、滅ぼした際に接収した研究書を兼ねた日記がどこからか流出したのがこの『不死道』です。つまり、この禁書には不死に関する話が事細かに記されています。



 さて、私が何故『不死道』を読んでいるのか?それはあることに思い至ったからでした。


 あること、それはレーヴェとクテルの寿命でした。

 長命種であるエルフのレーヴェは当然として、莫大な魔力によって人間という括りから外れてしまった人造魔獣であるクテルもどのくらいの歳月を生きるのかがわからなくなっているのです。

 クテルに関しては使ったのが負の魔力でしたからむしろ短命になっている可能性だってありますが、それなら良くもありませんがまだ納得できます。

 しかし、クテルが長命だったとしたら私の方が先に果ててしまうでしょう、尽きてしまうでしょう、朽ちてしまうでしょう。

 それだけはいけません。私はどこまでも身勝手に生きていますが、その分だけに自分のしたことには全てを背負わなくてはならないと考えています。

 だからこそ、クテルやレーヴェよりも長く生きて、見届けなくてはいけません。




* * * * *




 クテルはどうにも眠ったようです。


 「どうしたものですかねぇ?」


 『不死道』を見た感じではアンデット化も成功率が高いとは言えません。

 アンデットになるまでなら誰だって成功しますが、その先が問題になるのです。アンデット化とは負の魔力によってその身を変質させる影響で理性を無くすことが起きるのです。

 『不死道』の著者も最初はその高い魔力によって理性を保っていましたが、時間と共に暴走していく様が『不死道』には描かれていました。


 「ただいま戻りました」

 「ん、もどりました」


 どうやら依頼を受けていたザッカートとレーヴェの二人が戻って来たようです。


 亜竜の大侵攻からザッカートはよくレーヴェとともに冒険者の依頼を受けるようになりました。よほどグゥ爺やもう一人の等級外の姿が衝撃だったようです。

 そして、ザッカートという前衛を手に入れたレーヴェは武器を杖から弓に変えました。もっとも前衛として鍛えていたレーヴェの筋力は弓であっても爆撃のような威力を発揮しますが……。


 「……どうかしましたか?」


 考えていたせいか、返事をしなかった私にザッカートが不思議そうにしています。


 「いえ、少し眠いだけですよ。おかえりなさい、二人とも」

 「……そうですか。邪魔だったでしょうか?」


 ひとまず挨拶を返した私にザッカートは返事と疑問を投げてきますが、レーヴェはベッドに飛び込んできました。

 とりあえずザッカートにはヒラヒラと手を振ることで答えを示し、戻っていいと伝え、レーヴェには湯を浴びて来いとベッドから蹴落としました。

 ザッカートは礼をして部屋から出ていき、レーヴェはひどく不本意そうにしていますが汚れているのですから仕様がないでしょう?



 二人が出ていった後、クテルの静かな寝息だけが響く部屋で一人考えに沈みます。


 「本当にどうしましょうかねぇ?」






誠に申し訳ない

ちょっと墓守の来襲とかで立て込んでいました。


肉や魚をたくさん食べさせられました。

私の成長は止まっているというのに、……肉もないですよ?本当ですよ?

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