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反抗声明  作者: みざり
23/29

亜竜狩り



 「いやぁ、壮観ですね」

 「いえ、そんな悠長にしている場合ではないでしょう」


 現在、亜竜の大群を眺めていますが、なんとも凄まじい光景です。

 亜竜は腕の変わりに羽を持った姿をしており、飛行速度は他の竜種と比べても遜色ない上に、ブレスによる遠距離攻撃も備えた厄介者です。

 所詮、竜種でも最弱の存在なのでブレスの威力も防御力も、他の竜種からすれば低くはなっています。あくまでも竜種の中ではですが……。

 そんなわけでギルドにおける亜竜の討伐難易度は二級となっています。


 しかし、目の前の光景からすると


 「二級では厳しいですね」


 亜竜の群れは数えるのが億劫になるほどです。

 幾つかの群れで分かれているのですが、一番少ない群れでもざっと見ても百近くはいます。


 「厳しいのはわかっていますが、本当にやるんですか?」


 ザッカートが当たり前のことを聞いています。


 「何を当たり前な……」

 「でも、あの数ですよ?」

 「別に全部狩るわけではありませんよ。そうですね、あそこの群れ一つぐらいです」


 私があそこと指差す群れを見て、ザッカートも、それまで黙っていたレーヴェも顔をひきつらせました。

 指差した群れは軽く五百はいるでしょうから、そりゃ、顔もひきつるでしょう。

 しかし、亜竜ぐらい等級外が三人いるのですから軽いでしょうに、大げさな反応だと思いますがね?


 「いくらなんでも厳し過ぎるでしょう!?」

 「……むり」


 嫌がる二人ですが、もう遅いんですよね。

 だって、あの亜竜の群れがこちらを狙っているんですもの。先程からあの群れに向かって、魔力流して挑発しておいて正解でした。


 「クテル、亜竜のブレス程度では黒靄は突破出来ないでしょうから、物理攻撃には気をつけてくださいね」

 「はーい!」

 「ザッカート、レーヴェ、騒いでないで構えなさいな。亜竜達が来ますよ。あとザッカート、禁呪を使っても良いですよ。最下級でも竜種なのですから練習ぐらいにはなるでしょう」

 「……よろしいので?」


 騒いでいたザッカートが黙り、尋ねてきます。

 ザッカートは剣だけでも亜竜なら遅れを取ることもないでしょう。けれど亜竜の群れぐらいでないと、禁呪は練習にもならないでしょうから。


 「構いません。たまには使っておかないと、使うときに問題あっても困りますからね」

 「では、使わせてもらいます」

 「ええ、そうしてください。……あと、レーヴェは強化を幾つか掛けるので、まだ行かないでください。ザッカート、レーヴェに強化を掛ける間は一人でやっていてください」

 「わかりました」


 本当なら強化にそんなに時間は掛からないのですが、久しぶりにザッカートの禁呪もゆっくり見ておきたいですから。

 指示も出しましたし、レーヴェの強化をじっくりやっておきましょう。


 「トト様、クテルは?」


 そういえば、クテルを忘れてました。


 「そうですね、クテルはザッカートの戦いでも見て、待っておいてください。あ、ブレスが来たら防御だけはしてくださいね」

 「はーい」


 さてさて、ザッカート。アナタには少し悪いですが、楽しませてもらいましょう。




* * * * * 




 最近、トゥーリ様に付き合って盗賊退治などをしていたが、やはり剣に鈍りがあったことに気がつかされていた。

 実に不甲斐ないことだ。トゥーリ様の護衛になってからも鍛練を欠かしたことはなかったが、前よりも鍛練の時間が減ったのも事実なのだから。

 しかし、今回は亜竜が相手である。


 「存分に錆落としに付き合ってもらう」


 禁呪の使用が許可されているのだから、ありがたく使わせてもらおう。

 手加減など考えずに、最初から全力だ。


 『霊装・水天狗』


 禁呪が発動する。

 体が強化されるのが分かる、知覚が大きく広がる。


 空中を跳ねて、亜竜へと突っ込む。

 大きく口を広げ待ち構える亜竜を前に、剣を構え振り抜けば、口を広げた亜竜は真っ二つになった。

 勢いそのままにもう一匹に、剣の周りに水を螺旋状に回転させながら突きを撃ち込んだ。

 突きを撃ち込まれた亜竜の強固な竜鱗は意味をなさずに、逆巻く水流によって肉まで容易く抉られた。




* * * * *




  「ザッカートの禁呪は、禁呪にしては珍しく支援系のものです。まぁ、水属性の特性を考えれば分からなくもないですが」

 「水属性の特性?」


 レーヴェが聞いてきますが、特性ぐらい学ばなかったのですかね?別に隠すことでもないので話しますが……。


 「水属性は他の属性に比べると、突出した部分があまりないのです。火属性ほどの威力も、風属性の速さも、地属性の硬さも。けれど、変わりにクセがないということでもありますから使い勝手はいいのですよ」


 説明を聞いたレーヴェは納得した様子です。


 「そんな風に使い勝手の良い水属性を突き詰めると、あの形になったのでしょうね」


 視線の先では、水の塊を周りに浮かべたザッカートが空中を跳ねています。

 空気中の水分を一瞬だけ固めて足場にしているのでしょう。亜竜の機動力程度なら禁呪によって強化されたザッカートは余裕で捉えられるでしょうから、飛行出来なくても十分ですね。


 ザッカートの禁呪『霊装・水天狗』は自身の強化と特殊な能力を付与することが、その効果となっています。

 特殊な能力とは、自分の周りにある水を自在に操れるということで、空気中の水分を足場として固めたのがそれに当たります。

 この魔術は魔法に近いものとなっていて効果は使用者の想像力しだいになっています、そのせいで効果が安定しにくく暴走しやすいのです。けれどザッカートはあえてこの禁呪を使用しています。

 ザッカートがこの禁呪を使用するのは、魔術の威力ではなく使用者自身の能力と使い方によって発揮する性能が異なるからでした。剣だけに縋ってきた彼らしい魔術だと思います。


 ザッカートが剣を振れば亜竜が真っ二つに裂けました。斬撃に水を乗せて、斬撃の範囲を延ばしたのでしょう。

 突きには剣の周りに水を回転させることで威力を上げています。


 ザッカートの周りに浮かんでいる水の塊は全部で四つ、攻撃に三つ、防御に一つと分けて使っていますね。本来なら塊にして浮かべる必要もないのですが、空気中から固める時間を短縮するために浮かべているようです。

 亜竜程度ならともかく等級外が相手になると魔獣、冒険者問わず必要な処置でしょうね。ザッカートも色々と考えて使っているようです。


 十分でしょう、ザッカートの戦いぶりはよく見れました。


 「さて、レーヴェの強化も終わったので、私達も始めるとしましょう」




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