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反抗声明  作者: みざり
11/29

時は過ぎて


前回言ったように時間が飛びました。


というわけで十二才編です。




 時が経つのは案外早いもので、レーヴェを鍛えることはや二年。つまり私の12才の誕生日を迎えました。

 レーヴェはすでに一級の冒険者たちと遜色ない実力を身につけました。


 ギルドから一級認定を受けたのは今から半年前のことでした。ついでだから、前から考えていたご褒美もその時に上げました。



 『一級認定おめでとうございます、レーヴェ。ついてはそのお祝いと言ったところでしょうか』

 『……?』

 『不思議そうな顔をしていますね。私は努力するならちゃんと餌は与える人間ですよ?』

 『………』

 『まぁ、良いです。ご褒美というのはアナタの知りたがっているだろう鎧についての情報です』

 『……ッ!?』

 『ええ、そうです。アナタの両親の仇です。そんなに睨まないでも教えますよ』


 『まずは何から教えましょうか。そうですね、分かりやすくあの鎧の冒険者階級からにしましょう』

 『あの鎧の階級は等級外です。……ええ、そうです。ここ一年近く冒険者の真似事をアナタもしていたのですから、等級外の連中の化け物っぷりは知っているでしょう』

 『……そうですね、一級になったばかりのアナタでは手も足もでないでしょうね。なにせ等級外の連中は魔力を解放した私と張り合えるような化け物ばかりですから』

 『他にも情報はありますが、今回はこれくらいにしておきましょう。……そんな顔をしてもダメですよ?』

 『今は分かりやすい目標が出来たことを喜びなさい。そして、これからも頑張りなさいな』



 と、まぁ、こんなやり取りがありました。

 現時点でレーヴェは一級の中位といったところですから、まだまだ先は長そうですけどね。


 「まったく、毎度のことながら面倒が多いですねぇ。誕生会は」


 自室のベッドに寝転がり、足をパタパタさせているとザッカートは苦笑しながら答えます。


 「トゥーリ様、毎年似たようなことを言ってますよ」

 「仕様がないのですよ、面倒なものは面倒なんですから」


 そんなことを話していると、部屋の扉をノックする音が聞こえました。

 ザッカートと顔を見合わせると、ひとまず寝転がったせいで乱れた服装を整え、部屋に備え付けてある椅子に座りました。そしてザッカートに扉を開けるように指示します。

 扉を開くと、そこには


 「なんだお兄様でしたか。呼んでくれれば、こちらから行きましたのに」


 直系の兄であるヴァイゼルでした。こんな悪徳貴族の家系に生まれたというのに、裏表のない性格で正義漢という、回復魔術を使えるだけの私より聖人と呼ばれるべき人間だと思っています。


 「ああ、そうだがな。けれどあの話をするなら、俺の部屋よりこっちの方が安心だろう?」


 そして、肉親で唯一私の魔力、魔術の秘密を知っている人間でもあります。

 それを知って以来、兄は私にある提案をしてきました。


 「それで、あの話考えてくれたか?」

 「だから言っているでしょう。見通しが甘いと、私一人では結果は大して変わらないのですよ。せめて私以外にも等級外を五人は用意してくださいよ、革命を成功させたいと言うのなら」


 それは革命のお誘いでした。前々からお友達と面白いことをやろうとしていましたから、話を聞くだけ聞いてみれば、計画の甘いこと。いくらなんでも王国の貴族諸侯を舐めすぎでした。

 そんなわけで、もう少し考えろと言って断りました。


 「そうは言うが等級外なんて簡単に集まらないのだから仕方ないだろう」

 「なら、せめて仲間を増やしたり資金を集めるようにしてくださいよ。冒険者なんて金さえあれば、ある程度のは集まりますし、一定の質と量はそのまま勝率に繋がりますから。革命なんて言っても結局は戦争と変わらないのですから、時間を掛けるべきです」

  「しかし、それでは民が犠牲になるだけだろう。お前はそれを何とも思わないのか!?」


 まったく、この人は何を言っているのだろうか。

 民の犠牲?そんなの今更のことだと思うのですが。


 「別に何とも思いませんよ。民の犠牲?アナタの着ている服も、アナタの食べているものも、全部、全部、その民の犠牲から成り立っているのですよ。慈愛の精神は結構ですけれど、革命が失敗したときはその民の犠牲が増えるだけだと気づいてくださいな、お兄様」


 兄は無言で震えたあと、身を翻し部屋から出ていきました。


 「あれで良かったので?」


 ザッカートが尋ねてきますが、フンッと鼻を鳴らして答えます。


 「構いませんよ、あの程度の計画に巻き込まれて死ぬのはゴメンです。それに革命なんて催しは遠くから見るだけでも楽しめるでしょうから」

 「そうですか……」

 「何か言いたげですね?」

 「いえ、特にはありません」


 ―――そうですか、とザッカートに答えて、少し考えに沈む。

 確かに今のところは大したことのない計画ですけれど、もし面白い方向に傾くなら、わざわざ特等席を用意してくれるというのですから参加することもあるかもしれません。


 兄には頑張って欲しいものですね、私の楽しみのためにも。

 せいぜい、これからも兄には多少の注意を向けておくことにしましょうか。



 考えをまとめると、トゥーリは再びベッドに飛び込んだ。






強さの目安として


トゥーリ=等級外冒険者>ザッカート>>>越えられない壁>>>一級冒険者=レーヴェ


ザッカートはトゥーリと付き合いが長いだけあって、相性しだいでは等級外の化け物どもを相手取れます。

等級外には強さに差はなく、相性によって勝敗が決まります。

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