エピローグ
あれから一週間――。
三人の姿も子供ぐらいからだいたい中学生ぐらいの身長までに戻り、町の人の誤解も解け、事件が起きる前の生活に戻りつつあった。
そんな中、郁人は剣術の修行をしていた――いや、修行させられていたと言った方が正確なのかもしれない。
理由は刀を手に入れたからである。
「九十八、九十九ー、ひゃーあーくっ!」
あれから郁人は毎日、家の前で素振り百回が日課となりつつあった。
さすがに百回するとさすがに腕がダルくなり、持っていた木刀をその場に捨ると、素振りが終わった報告をするため、家の外壁に持たれて読書をしている三人に話しかける。
「おーい、素振り百回終わったぞー」
「んー、お疲れ様~」
「ごくろうごくろう」
「そういうわけで家の周りをマラソンしてください」
「するわけないだろうがよ」
三人は漫画を読みつつ、生返事。
エイミーの言葉は無視して、郁人も同じく外壁に座り、近くに置いてある漫画をパラパラと流し読みする。
中身は剣術系の内容。
三人とも剣術の経験がないため、漫画を読んで、知識を得ようとしているのである。
「あのさ、こんなの出来るわけないじゃん」
刀を鞘から飛ばしたり、地面を抉った際に舞い上がる土砂を相手にぶつけたりシーンなどが描かれている。違う本には水を使った一子相伝ものまであった。
完全に現実で出来るようなものではない。
「まぁ、炎とか水とかを出す技は無理ですけど、この神速系の剣術なら出来ますわよ?」
「ボク的には刀に幽霊とかを取り付かせる系も大丈夫なんじゃない? 出来るかどうかは別としてもボクたちが指示とか出来るみたいだし……」
「なんにしても挑戦してみることが一番じゃな。その刀のおかげである程度の事は可能なのじゃろう?」
「た、たぶんな」
今、家の外壁に立てかけてある刀を郁人は見つめた。
あの後、家に帰宅した郁人は最上階にある自分の部屋に向かうために、まず刀は持たずに精神を集中させてみたのだが、小十郎に言われたとおり、今まで感じていた感覚が生まれなかったのだ。
次は刀を持ち、挑戦した結果、今までのような感覚が刀の方から伝わり、郁人は浮遊に成功したのである。
ちなみに刀を放すとすぐに落下してしまったことから、刀を握った状態で念じれば、ある程度の事なら出来てしまうのではないか、というのが郁人の予想だった。
「あのさ、やっぱり剣術を学ぶ必要はないんじゃないか?」
「また、その質問?」
「またって言うけど、なんか納得出来ん」
「刀がワシらの訓練の時間を奪うからいかんのじゃ」
燐が今までに何回も聞いた答えを返してくる。
納得出来るような、納得出来ないような気持ちで郁人はため息を漏らす。
今さらながらに郁人が思うことは、これがあの鬼が行った仕返しなのかもしれないということだ。
刀を持っていれば、修行も必要ない。
つまり、三人にとってはまったく面白くない結果になっている。
最初の頃はそのことにゴネていたが、今では剣術の方向に楽しみを見出しているようなので、意味はなかったのかもしれないけれど。
「そういうわけで、まずはこの剣術を学んでもらいましょう! メアリーのよりは簡単ですわ!」
「え~、こっちの方が簡単だと思うけどな~」
「失敗したら、ワシらの生命に関わるかもしれんぞ?」
「あ、そっか~。仕方ない、エイミーちゃんのにしよう!」
「しないから! なんかいろいろと著作権に関わるからしない!」
「この世界ではそんなものは関係ないぞ」
「うん、関係ないね」
「――というわけでやりますわよ!」
ワクワクとした表情を浮かべる三人。
間違いなく楽しんでいると分かった郁人は大声で否定した。
「お前らの無茶にいつまでも付き合えるかー!」
「「「拒否権はない」」」
三人の声は見事にハモらせ、笑顔を見せるのだった。




