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一週間経過②

 郁人は燐によって崖の上へと連れ戻される。

 二人が用意してくれていた焚き火で冷えた身体を温めるということにながら、郁人は思い出したことがあったため、三人にそのことについて質問した。


「あのさ、俺があのまま人間界にいると死ぬってどういうことだ?」


 訓練初日の夜に郁人は小十郎と話した記憶はあったが、何を話していたかまでは覚えていなかった。

 そのことを落下した衝撃をきっかけに思い出す事が出来たのだ。

 三人はその言葉にさっきのからかった発言とは違う動揺した反応をする。

 何か知っている事は確定だった。


「あ、あはは……なんだろうね、それ?」

「さ、さあ? 知らんのう……」

「そんなこと誰に聞いたんですか? 夢の中の話でしょ? 忘れた方がいいですわ」

「夢の話じゃない。ちゃんとそのことについて記憶があるんだからさ」


 三人は郁人から顔を逸らしている。

 そんな三人の態度に郁人は少しだけムカッときてしまう。


「分かった分かった。夢の話なら今度聞くから、今は風邪を引かぬようにすればよいのじゃ」

「夢の話じゃないって言ってるだろ」

「夢ですわ。もし閻魔様と話したなら、私たちも気付きますから」

「魂だけ起こされたんだよ」

「え~、閻魔様にそんな暇ないはずだから、夢に違いないよ」

「そういうことじゃ。夢と言うことにしとけ」

「そうですわ、私たちはそういう話をするために相手しているんじゃないんです」

「うんうん。あ、もしかしたらボクの人形の誰かが悪戯したのかも! そういうのも中にはいるんだよね!」


 あくまで夢で突き通そうとし、郁人の話を聞かない三人に対し、


「閻魔様が教えてくれたんだよ。三人とも本当に嘘が下手だよな」


 郁人は冷たくそう言い切る。

 三人の態度に完全に腹が立ったからだ。

 もし、そのことを知っていても「今は教えられない」とでも言われたら、不満は残しつつも我慢はしただろう。来るべき時が来たら、教えてくれそうな気がしたからだ。しかし、この様子では誤魔化すことで満足してくれると思われているような気がして、我慢することが出来なかった。

 

「閻魔様が?」

「いや、そんなことあり得るはずないですわ」

「あ、当たり前じゃろ!」


 三人は郁人の態度と言葉の内容に驚いているようだった。


「なぁ、なんでちゃんと教えてくれないんだよ? そんなに隠し通すことなのか? 俺自身のことだっていうのに……」

「だ、だって……閻魔様に止められてるもん」

「ば、馬鹿! 何を言っておるのじゃ!」

「ですわよ! そんなんじゃ隠せって言われた――」

「エイミーもじゃ!」


 メアリーの言葉をきっかけに自爆し始める三人。

 なるほどと、郁人は理解する。

 だから小十郎もこの話をしたことを忘れさせようとしたのだ。よっぽどの事態が起きて、死ぬことになっていたのだろう。

 だからこそ言えない。


 それが分かったとしても郁人も納得できないものがある。

 ここに来た本当の理由も分からないまま、ここで過ごすことは嫌なのだ。いくら人間界より、必要とされたとしても……。

 そもそも新しい妖怪を作らないといけない理由で呼ばれたということ自体、最初からおかしいとは思っていた。


 本当の理由が言えない何らかの理由がある。

 だからこそ、それを話してくれるまでは待つつもりでいた。でも、そのことに気付いてしまったのだから待つことは出来ない。

 それなのに三人にこんな態度を取られたことにより、郁人は腹が立ちすぎて、近くにあった木を思いっきり蹴る。

 三人はびっくりしていた。

 郁人がこんな態度を取ると思っていなかったためである。


「今日は帰る」


 郁人はそう言って、乾かすために脱いだ服を再び来て、登ってきた道を下り始める。

 まだ半乾きにもなっていなかったが、今は三人の顔を見たくなかったため、我慢することにした。


「こ、こら! まだ訓練は終わってないぞ!」

「だからなんだよ?」


 郁人が燐の方を睨み付ける。

 その瞬間、燐はビクッと身体を震わす姿が見えたが、郁人は気にせずに下って行く。

 睨み付けられた燐は両腕を押さえ、悪寒を逃そうと必死になっていた。


「どうしたんですの?」

「お兄ちゃんに睨まれたぐらいで、そんなに怯えなくてもいいでしょ?」


 燐の震える様子に二人はのん気そうに言う。

 しかし、燐には違うものを感じていた。


「二人は気付かなかったのか?」

「何をですか?」

「あやつ、さっきの行動に殺気が混ざっておったことに……」

「殺気? 人間がボクたちを怯えさせられるような殺気を放てるはずないでしょ?」

「じゃ、じゃよな?」


 そこまで断言されると、さすがに燐も自信がなくなる。


「早く郁人を追いかけますわよ!」

「待ってよ~」


 二人はそう言って、郁人の後を追いかけていく。

 燐は二人が全然感じ取ってない様子を見ると、そのことに対しての自信がなくなったらしく、不安そうな顔を残しつつ二人の後に続いたのだった。


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