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これから住む家③

 部屋にはメアリー、エイミー、燐、最後に郁人の順で中に入る。

 足から降りれるように調整が燐がしてくれたため、郁人は安全に着地する事が出来た。

 そして改めて、部屋を見回すとあることに気付く。


「どうどう? すごいでしょ?」


 メアリーがこの部屋のできばえを自慢するように鼻息を荒くしている。


「うん、本当にすごいな。俺の部屋、そのまんまじゃん」


 この部屋は郁人が人間界で過ごしていた部屋そのままの状態になっていた。元となった郁人の部屋に比べると、この家の方が大きいため、隙間が出来ているところもあるが、それ以外は完璧だった。

 本棚に並べられている本も元の世界で発売されていた状態のままで揃えられている。

 さすがに押入れは部屋に設備されていないため、あくまで外観が似せられた造り。

 押入れがなくても郁人からすれば、住み慣れた部屋そのままのため、問題なく過ごせるような気がした。


「ありがとう、メリー」

「いや、ワシらもしたからな?」

「まったくメアリーは自分だけの手柄にして」

「ごめん、二人もありがとう。でもさ、この家具集めるの高くなかった?」

「コピーしただけだからタダですわ」


 エイミーは当然と言った表情でそう言い、そして燐が驚愕の事実を教えてくれた。


「お主が人間界で使っていたものがコピーしたものなんじゃがな」

「マジで?」

「うん、間違いないよ。やっぱり気付いてなかったの?」

「もしかして、この服も俺の元の服だったり……?」

「うん、そうだよ?」


 メアリーも郁人が気付いていなかった事に対し、不思議そうな顔を浮かべていた。

 コピーしているということはエイミーの趣味の話で分かっていた事だったが、まさか自分自身が被害を受けているとは思ってもいなかった郁人はショックを受けてしまう。

 改めて、妖怪の凄さを実感した瞬間でもあった。


「でも、まだやらないといけないことがありますわ」


 エイミーは部屋から持ってきたであろう杖で、部屋全体に魔法をかける。

 すると部屋の家具がいっせいに動き始めた。


「これぐらいで良いかのう?」

「ベッドはこれぐらい?」


 燐がテーブルを、メアリーがベッドの面積を広くすることで、さっきまであった意味のない隙間が完全になくなり、一つの部屋として完成する。

 テーブルもベッドも目算で四人用の大きさへと変わり、郁人はそのことに対して疑問が浮かぶ。


「あれ? なんで? 自分の部屋があるじゃん」

「仕方あるまい。お主と一緒に寝るのが寝やすかったのじゃから」

「あれ、やっぱり? 実はボクもそうなんだ!」

「私は二人を監視するためですわ。今朝みたいな事にならないようにしないと」


 エイミーは冷静にそう言っているが、燐とメアリーはさっきの件のことがあるため、まったく信じてない顔をしている。

 もちろん、郁人からすれば二人の理由も嘘だと分かっているのだが、拒否権がないことも分かっているため、これ以上追究しないことにした。


「な、なんですか!?」

「「別に~」」


 そんな郁人の気持ちを知ってか知らずか、二人はニヤニヤしながら、またエイミーをからかい始める。


「それはもういいですわ! そんなことよりも早く特訓に行きましょう! それが一番しないといけないことですわ!」

「特訓?」


 郁人は三人がふざけ始めたので、漫画でも読みながらくつろごうと考えいたのだが、それをエイミーにより止められる。

 しかも特訓とは城で聞いたあの特訓のことしか思いつかない。

 二人もそのことに賛成するように手を叩き、名案だと頷く。


「そうじゃのう。少しでも早いほうがいいからのう」

「うんうん。じゃあ早速行こうか!」


 三人は勢いよく部屋から出ると、さっきのように浮遊。

 今回、燐は手伝ってくれる様子はないため、郁人は仕方なく縄ばしごを掴んで降りようとしたら、


「あ、お兄ちゃん。そのまま飛び降りていいよ」


 メアリーにそう言われる。

 郁人は思いっきり固まった。

 メアリーは郁人が固まっている意味がまるで分かっていない様子で首を傾げている。

 郁人の固まっている意味が分かっている燐とエイミーはすかさず補足し始めた。


「言葉が足らないにも程がありますわ。メアリーが言いたいのは、『下にメアリーの使役している人形が居るから、落ちた郁人を受け止める』って言いたいのですわ」

「メアリーは人形を使役する能力があるのじゃよ。ワシらみたいに身を守る手段の一つじゃ」

「なるほど。でも嫌だ」


 郁人は説明されて理解し、下に居る人形らしき物も見えたが速攻で拒否した。

 メアリーを信用していないわけではない。きっとメアリーの人形だから安全かつ快適に受け止めてくれるだろう。

 しかし、そういう問題ではないのだ。

 もしかしての可能性で失敗するあるもあるが、それ以前にここから飛び降りることの方が怖いのだから。

 そのことに気付いた燐が郁人に近づき、こう言った。


「なんじゃ。勇気がないのか。だったら力を貸すぞ?」

「いや、遠慮す…うわぁぁあああああああああああああああああ……」


 郁人は縄ばしごを思いっきり握り締め、抵抗しようとした。しかし燐が無理矢理引っ張り、エイミーが縄ばしごを一時的に透明にしたため、あっさりと抵抗が出来なくなり、そのまま投げ落とされるように落下。

 その怖さから郁人が気絶したのは言うまでもない。


「あれは途中で気絶したね」

「みたいですわね」

「あやつにはまだ無理じゃったかのう」


 三人は人形の腕の中で気絶している郁人を上から心配そうに見下ろしていた。


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