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「わるいわね。学校途中で抜けさせて」

「いえ、私も気が気でなかったものですから」


 金髪が湊と呼んだ少女は誠のとなりに座ってアイスティーを注文した。

 彼女の髪は肩口でそろえられていた。ただ、一部がかつての名残のように胸の上部にかかっている。


「しかし、後何人……か。誠、千里ちゃんからそこらへん聞いてたか?」

「いや、ただ呪われるとは言ってたけど」


 湊から聞いた話はこうだった。

 カミキリバサミは人間が召還した妖怪で、契約すると願い事を叶えるが、その為には儀式として13人の髪を切らねばならない。

 13人目の髪を切った時点で願いは成就されるが、髪を切られた逆順に呪いが女性に振りかかる。


「信じろという方が無理な陳腐な話だなぁ」


 誠は正直な感想を口にした。


「でも、ほんとなんですっ」

「とと、湊ちゃん。落ち着いて」


 身を乗り出しかけた少女を金髪がなだめる。


「で、そいつが言った訳だ。『後11人』って」

「はい」

「千里はあんたの後のはずだから残り人数はもっと減ってるはずだな。でも呪いってなんだ?」

「分かりません。本当につい最近なんです、噂が広まったのは。インターネットに情報がないのもそのせいだと思います」

「あんた犯人見たんだよな」

「はい」

「千里―と、おれの妹なんだけど、犯人は人間じゃないって言ってたけど――」

「その通りです。あんなの絶対人間じゃありません」


 少女の腕が微かに震えていた。


「変装とかの可能性もない?」

「……たぶん、実際に見ないと信じて貰えないと思います。私だって今でも信じられない、信じたくないくらいですから。でも、これだけは言えます」

「なに?」

「見たら一目でそれと分かります」


 乾いた音がなった。

 金髪が手を叩いたのだ。


「ちょっと休憩いれよーや。湊ちゃんも怖い目にあってまだ数日なんだ。あ、ケーキ食うかい?」


 金髪がウェイトレスに声をかける。

 しかし、その前に誠は席を立った。


「なんだ、誠。もういいのか?」

「ああ、少なくとも見逃しや見間違えの心配はなさそうだからな。助かったよ」

「まぁ、大丈夫だと思うが手がいるなら言えよ。暇してる奴なんてこの街にいっぱいいるぜ?」

「それもどうかと思うけどな。とりあえず、今は俺だけでやってみるさ」

「そうか?」

「じゃ、後はうまくいくように祈ってるぜ」

「ちょ、おまっ。何言ってんだ」

「あー」

「もしかして」

「私達、お邪魔虫?」

「意味不明な事いってんじゃねぇっ」


 去り際に少女の方を見ると顔を真っ赤にして伏せている。

 案外、脈無しではないらしい。


「代金は今度払うよ」

「水くさい事言うな。おごりでいいさ」

「じゃ、お言葉にあまえるぜ」


 誠は喫茶店を出て歩き出した。


「とりあえず、必要なものを取りにいかないとな」


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