お店始めました
多分今年ラストかと。
よろしくお願いします。
「言うわけでお好み焼き屋さんを始めてみた」
「どういう訳よ……」
呆れた顔で、テーブルに座っている霊夢が言った。
「いやぁ、前に食事処がいいって霊夢言ってたじゃん?そこで思いついた訳よ」
「なんでまた」
「お好み焼きって人里……というか幻想郷では珍しいでしょ?だから」
「まぁ、そうだけれど」
霊夢は、鉄板に乗ったお好み焼きをヘラでひっくり返す。このお店は自分で焼く方式なのだ。
程よく焼けたお好み焼きに、甘口のタレをかけてハケで引き伸ばしてゆく。全体に満遍なく塗り、その上に鰹節、マヨネーズ、青のりをかけて……そして完成だ。
「…いい匂い」
「だろ!生地もお手製だし、タレもマヨネーズも青のりもこだわってるんだからな!」
わざわざ外から取り寄せたのだ。旨くないはずがない。
霊夢は、ゴクリと喉を鳴らしながらヘラでお好み焼きを切り分ける。……あ、霊夢は四等分派なのか。
「いただきます」
お好み焼きが、霊夢の口に運ばれる。入った瞬間、霊夢の目が少し見開いた。その後、ゆっくりと咀嚼し、飲み込んだ。
「……美味しい!」
パァッ!と霊夢の表情が輝く。
「よ、良かった……」
正直なところ不安だったのだ。試食はしていたが、ほかの人の味に合うかどうかの確認はしていなかったからな。
「以前、冷めたものを紫から貰ったけれど、やっぱり出来立てホヤホヤの方が美味しいわ」
そう言って、また口に頬張った。
数十分後。お好み焼き一枚じゃ足りなかったらしく、チーズと明太子のミックスもんじゃ焼きを霊夢は平らげた。とても幸せそうである。
「ごちそうさま。美味しかったわ……」
「そりゃどうも。お粗末さまでした」
ここまで笑顔で食べてくれるとは、作ったかいがあるってもんだ。
「お勘定だけど……」
「あ、今回はタダでいいよ」
「え、ありがと……。いや、本当に払わなくていいの?試食だとは言え、お店でご飯を作ってくれたのに」
「いいよ。霊夢は、ここの原案をくれたようなものだし、感謝してるからね」
まぁ、次からはちゃんと払ってもらうけども、と付け足す。
「……じゃあ、遠慮なく」
カウンター席から立ち上がり、店の入り口へと向かう。
「美味しかったわ、今度は魔理沙連れてくるわね」
ひらひらと、手を振りながら霊夢は去っていった。
夜。帰ってきた麟にお好み焼きを振る舞う。中身は豚肉とチーズだ。豆腐のサラダも付けて健康的である。
「……びっくりしました。白夜さんがお店始めるだなんて。しかも食事処とは……」
「人間に紛れてバイトをしたおかげかな。五年も居たから、レシピとか色々覚えちゃってさ」
「へぇ……」
パクリとお好み焼きにかぶりつく。うん、美味い。豚肉の旨味と、とろとろに溶けたチーズ。そしてそれらを繋げる玉天が何ともいい具合に絡み合っている。
「明日から開店ですよね?今日はちょっと用事があったので手伝えなかったですけど、明日からは頑張って手伝いますよ!」
フンスッ!と言った感じでやる気満々な麟である。
「ありがとう。そんな麟にささやかなプレゼントがあるんだ」
ゴソゴソと後ろの荷物を漁る。
「プレゼントですか?……あ、もしかしてお店の制服ですか?かわいいのがいいなぁ…」
想像を膨らませる麟。お楽しみは、これからなのであった。
「良いですねこれ!可愛いです!」
何故か、飛び出たアホ毛がぴょこぴょこ揺れる。
麟の今の格好は、フリルのエプロンドレスに、レース付きのカチューシャ。
そう……いわゆる、メイド服というやつである。
「こんなの、どこで貰ってきたんですか?」
「いやぁ、アリスにちょろっとお願いしてね。まぁ、それ相応の対価は払ったんだけど……」
「なるほど……ありがとうございます!私、明日から頑張りますね!」
意気揚々と、決意表明をする。……が、俺は少しばかり残念だった。
「(あれー、おかしいな。俺、照れながらも着てくれる麟が見たかったんだけどなおかしいな。いやまぁ、今のままでも可愛いんだけどさモジモジしながら怒る麟のが見たかったというかなんというかなんだこれああもう可愛い)」
嬉しそうにくるくる回る麟。俺はほのぼのしながら見つめたのだった。
そういえば、今年でこの小説(果たしてそう呼べるのか)が5年目でした、凄い。そりゃあ、自分のお酒が飲めるようになるわけです。
相変わらずの駄文ですが、読んでいただけると幸いです。
※次話についてですが、試験的に作風を変えます。ご了承ください。