新店内容構想中
さて、阿求をご立腹にさせてしまった訳だけど、何で幻想郷縁起を手伝うだけで、為引越しに出費をしてくれたのか話そうか。
もともと、阿求は体が弱い。稗田家の特徴である、短命ということを差し置いても弱かった。最近は、努力をしているそうで、俺とあれ位言い合っても疲れなくはなったらしいが。
少し脱線してしまったが、とにかく阿求は体が弱いのだ。しかし、彼女が執筆しているものは『幻想郷縁起』。これは、妖怪図鑑、英雄伝、危機地区案内、未解決資料等からなる書物であり、全て執筆者――今でいう「阿求視点」で書かれている。つまり、この書物を執筆するためには阿求自身が見聞きする必要がある。俺は、この手伝いを任されたわけだ。
ところでこの縁起。十何代も続いているという大事なものだ。人里の人々にとってかなり有益な資料でおり、皆頻繁に手に取って読んでいる。そんな大事なものの「作風」を今回から変えてしまうのだと。なんでも、群馬よりも個に注目するなどと言っていたが、イマイチよく分からなかった。
まぁ、ひとつ言えるのは、とてつもなく時間がかかり大変であるという事だ。
最近ではその作業もいよいよ大詰めだ。途中、冬が来なかったり、朝が来なかったり、天気がおかしかったり、妖怪の山に神社ができたり、温泉がでてきたり、霊が溢れてしたり、宇宙人が攻めてきたり、信仰かけて戦ったり、季節がおかしくなったりしたが、まぁ博麗の巫女さんが何とかしてくれたおかげで何ともなかった。霊夢さまさまだな。
「まぁ、そんなことあるわよ」
俺の脳内を読み取った霊夢が言う。相変わらず、人外地味てるな。
「人外って何よ。私はちゃんとした人間よ」
いや、ただの人間がテレポート出来るもんか。
「気づいたら出来てたのよ。しょうがないじゃない」
そこら辺が普通の人とは違うんだよなぁ……。
「そんなこと言ったら、魔理沙だって特大ビーム出すし」
あれは八卦炉のお陰だろ。
「咲夜は時間止めるし」
あれは能力だし。
「……とにかく! 私は人間なの! ちゃんとした!」
霊夢は、煎餅を噛み砕きながら言った。なんだかなぁ。
「というか、あんた。何で神社に来たの?」
お茶を啜りながら言った。そうだ、本題を忘れてた。
「霊夢さ、人里に出来て欲しいお店とかない?」
「お店? あんたがやるの?」
「うん。ちょっと阿求の所に世話なりすぎたから。そろそろ金を稼がないと」
「なるほど。そうねぇ……」
腕を組み、考え始めた。
「飯屋、とかは?」
「飯屋? もうあるじゃん」
人里には、瓦屋根の大きな飯屋がもう既にあり、なかなか繁盛しているのだ。
「ただの飯屋じゃなくて。外の料理を専門にやればいいのよ」
「あぁ、なるほど」
それならそこそこ行けそうだ。実際のところ、人里にある飯屋は、なんというか昔っぽい。特に江戸みたいな感じ。料理も、蕎麦うどんとか天ぷらばっかりだし。
「飯屋……飯屋。いいかもな」
問題は何の飯屋にするかだが、そこは帰って麟と話し合おう。
「ありがとな! さっそく練ってみるよ」
「はいはーい。見せ始めたら奢りなさいよー」
お茶を啜り、煎餅を食べながら言った。
ちなみに、他の知り合いの人間に聞いたところ
魔理沙:本屋→鈴奈庵があるので却下
咲夜:人の血を扱うお店→色んな意味で却下
とまともに付き合ってもらえなかった。




