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東方白來伝  作者: 冴月(元:九尾の白狐)
紅霧の異変
60/67

紅の夢、譚の終

最終話です。読んでいただければ幸いです。


※追記:H29年10月30日、復活します

反対を探していた美鈴と合流した。と言っても、美鈴が反対側を通り過ぎ、一周してフランの部屋の前に来ただけなんだが。

「妹様が、ひどく暴れてなくて良かったです」

美鈴が言う。やはり、フランは「暴れる」というイメージが強いらしいな。

「美鈴も言うのね……まぁ、暴れたんだけどさ」

フランは、何も言えない顔をした。


そんな話をしているうちに、霊夢とレミリアがドンパチしてる大広間に着いた。

……にしても、レミリアは勝てたのかね。「死ぬがよい」みたいなこと言ってたけどさ。どうもレミリアが勝つビジョンが見えない。

「あうー……まさか1発も当たらないなんて……弾幕は難しいわ」

案の定、カリスマ性の欠片もない事を言っていた。

仰向けに倒れているレミリア。その側に立つ霊夢がフンと鼻を鳴らす。

「弾幕で私に勝とうだなんて、あと数年は思わない事ね」

「……弾幕ごっこに、肉弾戦とか組み込まれないかしら」

そうしたら楽なんだけど、と呟くレミリア。そりゃあそうだ。吸血鬼が人間に体術で挑むだなんて、役不足もいい所である。

そんな不満足レミリアが、こちらに気づいた。

「あら、白夜来てたの」

「おう、きてたぜ。にしても、ぼろぼろに負けたなあ」

 レミリアの服は、弾幕によっていろいろな所が焦げていた。

「私、体術のほうが得意だしね」

 そんな事を言っている割には、悔しそうなレミリアである。

「……ところであんた、ずいぶん口調が変わってるようだけど」

 今まで口を開かなかった霊夢が言う。

「ああ、あれはあれは威圧する為よ。私、色々と小さいでしょう?だから」

なるほどね、よくあるあれだな。「女だからってなめる奴がいるから、少しでも強くみせる為口調を威圧的にする」ってやつ。レミリアも苦労してるんだなぁ……。

「だとしたらお嬢様。そう言って下さいませ」

 俺達の後ろからヌッと現れたのは、従者の十六夜咲夜である。

「私、操られでもされてるのかと思いましたわ」

胸に手を置き、安堵の表情を浮かべる咲夜。あれには俺もびっくりしたわ。ガラッと変わるんだもん。

「あー、咲夜には見せたことなかったか……」

思い出したように言った。気まずそうな顔をしているレミリアである。

「ねぇ、お姉様。この巫女相手に1発も当てられなかったの?」

俺達をかき分けるようにフランが顔を出す。ヤケにニヤニヤしている。

「そうだけど……そういうフランはどうなのよ。そこの白黒「白黒じゃない、魔理沙だ」……魔理沙に当てられたの?」

「ざっと三回ってとこね」

「なっ……!」

目を見開き、驚く。腕の力で立ち上がったレミリアは、フランに近寄る。

「そ、そんなの偶然よ!その……魔理沙がいた所に弾が来ただけよ!」

屁理屈にもなっていない反論である。ふんと鼻を鳴らし、胸を張るレミリア。その様子を咲夜は、我が子を見る様な目で見ていた。

「しかし、本当に逆だよな」

レミリアとフランの性格がである。少しませているようなフランに対し、レミリアは歳相応……いや、見た目相応という感じである。この光景だけ見ると、本当の姉はフランと言ってもいいのではなかろうか。

上手く言いくるめられたレミリアが、フランを悔しそうに睨んでいると、霊夢が呆れたように言った。

「馬鹿なことしてないで、早く準備しなさい」

「準備?空気準備って何よ」

「はぁ……異変が解決した後は、敵味方含めて宴会。みんなで飲み合って、大団円ってなってるでしょ」

そう言うと、霊夢は一人で去っていった。

「そういえばそんな事あったわねぇ。……咲夜、宴会の準備とか手伝ってくれる?」

「分かりましたわ」

パッと消える咲夜。時止めでも使ったのだろう。……こんな時にも使うのな。

「じゃあとりあえず、この場は解散という事で……。また後で会いましょう」

バッと翼を広げ、部屋をふわりと出ていくレミリア。

「あ、待ってよ!」

フランも、レミリアのあとを追ってかけて行った。

「……じゃあ、帰るか。あぁ、白夜たちは先に帰っててくれ。私はちょっと本借りてくる」

魔理沙は手にした箒に跨り、スィーっと扉の奥に消えていった。

「……私達も帰りますか」

「そうだな」

麟がふわりと飛び上がる。

俺はその後を追って、紅魔館を出た。




□■□■□■□■□■□■□■□



なんだか長い一日を過ごしたような気がする。

麟の家出(ある意味俺の誤解ではあったが)から始まり、その捜索で色々なところを探した。道中、紅い霧のせいで、興奮した妖精達が弾幕を放ってきて、その対処に追われたため体はクタクタである。完全に妖怪であったのなら、こんな体の疲れもなかったんだろか……。

「白夜さん、銭湯行きませんか?」

お風呂セットを装備した麟が言う。いつも付けていた簪も解いており、行く気まんまんというやつである。

「そうだな……汗もかいちゃったし、行くか」

俺もお風呂セットを用意し、一緒に銭湯に向かった。



銭湯は、いつもよりも空いていた。普段であればこの時間、芋洗い状態と言えるほど人がいる……は言い過ぎか。ともかく人が沢山いるのであったが、今日に限っていなかった。皆、博麗神社の宴会に向かったのだろうか……遠いのに。

女湯に入った麟と分かれ、風呂場に入る。中には人が誰も居らず、独占状態であった。

体を洗い、浴槽に浸かる……ふぅ。染み渡るぜ……。

「ほんと、染み渡りますよねぇ」

「そうだな。こんなお湯はなかなか無いよ……なんでお前がいるんだよ」

「いちゃだめなんですか?」

「ダメじゃないけどさ。もっとこう存在感を出しながら……もういいや」

毎回の事すぎて呆れたよ、もう。

隣でヘラヘラ笑っている蝶花さんを睨みながら思った。

「しかし、女のお前が何で男湯なんかにいるんだよ」

「私に性別はありません。ほら」

顔はいつものまんまだったが、体付きが男になっている……って、そんな見せなくていいわ、嬉しくない。

「しかし、変に巻き込まれなくて良かったですねぇ」

いつの間にか持っていた、杯に口をつけながらいう。

「異変にか。なんでだ?」

「だってほら。変に干渉すると歴史変わっちゃうかもじゃないですか」

なんだその、今は俺のいた頃よりも過去みたいな言い方。今を生きているのに。

「んー……。歴史が変わるというより、運命が変わると言った感じですかね」

どういう事だ。難しくてよくわからん。

「つまり、大方の『東方』の歴史を知る白夜さんが干渉しすぎる事で、本来あるはずの無い未来が生まれちゃうって事です」

そういったのって、過去に干渉するから起きるんじゃないのか?

「でも、実際起きてるんだからそうじゃないですか」

……なんだなんだ。コイツの話の意図が読めないぞ。意図が読めないのはいつもの事だけどさ。

「まぁ、とにかく。私が言いたい事は、この物語はあなた達が一番の鍵になっています。干渉しすぎるのも自由、しないのも自由。これからどんな話にしていくかはあなた次第ですよ……まぁ、既にここまで来といてしないってのも無理な話ですけどね」

そう言うと、浴槽から上がる蝶花。

「ではまた」

手をヒラヒラ振りながら、風呂場から消えていく。

「……何だったんだ」

どんな話にしていくかとかなんとか言ってたけど、意味が分からない。干渉?運命?……あなた次第って何なんだ。

よく分からない神様の話に頭を悩ませて数十分。なんだかぼーっとしてきた。

のぼせかけているのだろう、風呂場を後にする事にした。




洗い場を出ると、先に上がっていた麟が、ソファに座っていた。頭にタオルを乗せながら、牛乳をコキュコキュ飲んでいる。

「おう、上がったぜー。俺も飲もうかな」

「んぐ……買っておきましたよ、はい」

おお、これはありがたい。麟から牛乳を受け取る。瓶のフタを開け、一口。……うむ、旨い。

ソファに座りながら、あたりを見渡す。風呂に入る前までにはいなかった人間も何人か来ていて、少し騒がしくなってきた。静かな銭湯が好きな俺にとっては、少し残念な感じである。

「そろそろ行くか」

麟に声をかける。麟は、二本目の牛乳に手をつけていた。

「んぐ……分かりました」

麟は、半分以上残っていた牛乳をグッと飲み干し、入口にかけて行った。


昼間の温度は既に消え去り、少し肌寒くなっていた。空は黒くなり、星が瞬いている。

「なんだか長い一日でしたねぇ」

星を見ながら、麟が言う。

「そういえば私、ご飯食べてません」

「おう」

「お腹空いたなぁ~」

「そうだな」

「……どっか食べ行きません?」

……行きたいんだったら最初から言えばいいのにな。

「じゃあ、ミスティアの屋台にでも行くか?」

「いいですね!行きましょう!」

そう言うと、麟は、宙に飛び上がった後、空に消えていった。

「……置いてかれた」

わざわざ口にするまでもない、おいてけぼりというヤツである。

「はぁ……」

先に全部食べられては勿体ない。俺も早く行かねば。

「なら、送りましょうか?」

側から現れた、二つのリボン。その間から、紫が顔を出していた。

「いや、いいよ。その隙間、未だになれないからな」

「あらそう。慣れれば結構快適なのに」

隙間の入口を広げ、中を見せつけてくる。やめろ、俺はその中のデザインが苦手なんだ。

「で、何の用だ?一緒に八目鰻食べに行くわけじゃあないだろ」

「それもいいけれど、今は少し忙しいの。また今度にするわ。さて……」

隙間を大きく広げる。すると、中から人が出てきた。

高そうな着物を着ていて、髪は淡い紫色。霊夢達より年下くらいの、女の子である。

「ありがとうございます。まさか、大妖怪に送っていただけるとは」

「そんなかしこまらなくても。じゃあ、私はこれで」

じゃね、と、隙間に消えていく紫。

「……」

「……」

取り残された二人。俺と着物さんの間に沈黙が現れる。

「……出雲白夜さん、ですよね?」

「は、はい」

こちらの目を見る着物さん。そして言う。

「……一緒に幻想郷縁起を作ってもらえませんか?」

「……はい?」





えー、これにて白來伝は終了いたしました。


ここまで読んで頂きました皆様、本当にありがとうございます!

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