亡き王女のためのセプテット
今更ですけど、タイトルは飾りです←
どこかの弓兵みたいな台詞を言い放った後、レミリアは弾幕を放つ。紅い玉や赤い玉、大小様々な弾が放たれていく。その数は、一度に数えるにはあまりに多すぎる。数多の弾幕は紅く光る月光を受けて、その不気味さを更に引き出していた。だが……。
「すげぇ……」
そんな言葉が出てくる。もし、これが相手を倒すために作られたものであれば、このような感じなんだろう。しかし、これは、「弾幕」である。相手を倒す、殺すためのものではないから、その弾幕の持つ狂気でさえも「美しい」と思えてしまう。
「白夜さん! 見とれるのもいいですけど妹様を探さないと……」
美鈴が言う。そうだった、自分はフランを探している最中だった。館の前に落ちていた麟の髪飾りの事もある、麟が居るかどうかは分からないが、早急に探し出さなくては……。
にしてもどうするかな。このまま探してもキリがない気がしてきた。
「手分けして探してみるか」
「ですね。……白夜さん、道わかります?」
「大丈夫! いつかの俺みたいに迷ったりしないさ!」
「大丈夫かなぁ……」
心配そうな美鈴。大丈夫だって。だいたい道なんて、通った場所に目印でもしておけば迷わないだろ。
「だから迷うんですよ」
そんな幻想俺がぶち殺してやる。
「はぁ……」
信じていないな……まぁ、始めてきた時以外にも軽く十回は迷ってるからな。無理もない。
「兎に角、気をつけてくださいよ!」
美鈴はスーッと飛んでいってしまった。
さて、フラン探しに行きますか。まずは何処から行こうか……。
「……地下の部屋にでも行ってみるか。なんか分かるかもしれない」
ちなみに、フランの地下部屋は館の一番奥にある。とりあえずそこに行ってみよう。
フランの部屋についた。相変わらずの頑丈な鉄格子で部屋が隔離されているが、扉の鍵は開いている。
「……はっ!? ……しょ!」
なにやら声が聞こえてくる。もしかしてちゃんと部屋の中にいたのか……?
ゆっくり、ゆっくりと、ドアを開ける。
地面と鉄がこすれる音が、やけに耳を刺す。なんで俺は緊張してるんだ……。
隙間から、光が溢れ、中の状況を目に映し出した。
「はっ!? なんでロイヤルストレートフラッシュなのよ!?」
「いや、で出しまったものは仕方ないですし」
「ちゃんとシャッフルしたのよね?」
「ちゃんとしましたよぅ……ショットガンシャッフルまできちんとしたじゃないですかぁ……」
フランがトランプを放り出しながら頭を抱え、麟が戸惑っている光景が映し出された。
「……お前ら、何やってるんだ?」
「あ、白夜。来てたんだ」
チラリとこちらに目をやる。フランの興味は、今、トランプに向ききっているようだった。
「……え、あの……麟。何やってるんだ?」
「フランさんとポーカーです。白夜さんも入ります?」
いや、そういうことじゃなくてだな。
「白夜聞いてよ! 麟ったらさっきからフルハウスやらロイヤルストレートやら連発してるのよ! 挙句の果てはロイヤルストレートフラッシュだし……運がいいってレベルじゃないわ!」
「俺に言われてもなぁ……ってそうじゃない!」
少々声を張り上げたことで、麟とフランがキョトンとする。
「麟、なんで急に家出なんかしたんだよ」
ㅤバツが悪そうに「あー……」と言って黙る麟、さらっと、「きっと、ダメダメな白夜に愛想つかして逃げちゃったんだよ」と言ったフランにデコピンに与えつつ、返事を待つ。
「……うう。なんか予想外の事が起きてばかりだなぁ……」
ㅤ溜息をついた。少ししょんぼりしながら、麟は話し始めた。
「いやぁ、たいした理由じゃないんですけどね……ただ、白夜さんをびっくりさせようときただけなんです」
「……驚かせようとした?」
「はい。つまり……」
ㅤつまりこういう事だった。
①俺、家出状発見。探しに家を出る。
②麟、家に戻ってきて料理。
③一度帰ってくる俺。ドッキリ大成功。
ㅤという訳らしい。どうゆうこっちゃ……。
「私……料理出来ないで、いつも居候の白夜さんに作ってもらってるじゃないですか。だから、咲夜さんから料理教えて貰ってたんです。できないのは嫌だからって。それで、いきなり料理しても面白くないから、ちょっとしたドッキリを……しようとしたんですけど、フランさんに連れられてしまって……」
「お前が原因か!」
ㅤフランの方を向く。当の本人は、鳴ってない口笛を吹いてごまかしていた。なんだろう……こう言ってはあれだけど、心配して損した気がする。
「まぁ、でも。無事で良かったよ……そういやフラン、お前部屋の外で暴れたりした?」
「なによ、その暴れる常習犯みたいな言い方……まぁ、確かに暴れたけどさ」
ㅤフランは、白黒金髪の箒を持った奴と弾幕ごっこをして負けたと語った。
「久しぶりだったから魔力とか血の調整が慣れなくてねぇ……まぁ、あっちはスイスイ避けていたけれど」
ㅤさ、流石魔理沙……加減が分からないフランに、弾幕ごっことはいえ勝利するとは……。
「うーん、考えてたら運動したくなってきちゃった。白夜、力比べしようよ」
「お、俺!?ㅤ流石に一半妖怪と吸血鬼様では差がありすぎるのでは……」
ㅤそう言うと、ケラケラ笑いながらフランは
「大丈夫大丈夫!ㅤ別に戦おうってんじゃないんだから。腕相撲だよ腕相撲!」
ㅤ麟が何処からか机を用意して、俺達の間に置く。なんで麟も乗り気なんだよ……。
「勘弁してくれ……」
ばか力の吸血鬼との腕相撲に、頭を抱えたときだった。
「っ!?」
轟音が鳴り響く。かなり大きな振動が地面を伝わり、事の重大さを伝達した。
「あー、これ、あいつのグングニルね」
「あいつ?」
「レミリアお姉さまのことよ」
「……ああ」
なるほどね、……さしずめ、レミリアが霊夢に槍をぶん投げたんだろう。
「誰か、弾幕ごっこでもしてるんですか?」
「レミリアと霊夢がしてるよ」
「へぇ……」
ㅤフランが目を少し見開く。
「ねぇ、見に行ってみようよ。ポーカーにも飽きちゃったし」
ㅤふわりと宙に浮き、ドアを開けて言った。
「あ、おい……行っちゃった」
ㅤほんとに、自由気ままだなフランは。
ㅤ……まぁ、以前の、狂気じみた会話の繋がらなさに比べれば、かなりマシなほうなんだが。
ㅤ少し昔の事を思い出していると、麟から声がかかる。
「白夜さん、私達もいきましょう?ㅤ霊夢さんの弾幕ごっこだなんて、あまり見れませんし!」
ㅤ麟が部屋を去る。……確かに。霊夢って、普段の妖怪退治の時は、大体ぶん殴って終わらせるからな。珍しいものかもしれない。
ㅤ俺は、先程見た弾幕を脳裏に浮かべながら、フランさんに部屋を出た。
あと二話位でおしまいです。
ちなみに、次回作にも麟ちゃん白夜は出てきます