閉話~メリークリスマス!!~
お久しぶりです。
色々多忙でなかなか書けませんでした。
ですが、クリスマスと言うことで。日常の話を投下致します。
ㅤ幻想郷にも、この季節がやってきた。
「クーリスマスが今年もやって~……」
ㅤ人里では、外の世界でお馴染みの「アノ曲」が、河童達の技術によって流れていた。
ㅤそんな中、寒さに震えながら歩く影がひとつ。
「寒い……」
私、冴月麟である。古着屋で見つけた、モコモコの手袋とマフラーを身につけているため、幾分かは寒さは和らいでいるが、やはり寒い。自然の葉が枯れ、落ち葉となっていることや、木々の枝に青い葉がついていないことが、冬をいっそう強調させているのかもしれない。とにかく寒い。
「今日は……クリスマス、でしたっけ?」
幻想郷では、つい数年前に流行りだした行事である。外の世界に比べ、非常に狭い人の世界である人里は、何かの流行り廃りが激しい。何かが流行ったと思ったら、数日後には終わっていた、などよくあることである。しかし、それが長い間続いたら・・・・・・それは習慣となるのである。この「クリスマス」と言う行事は、数年前に、あの「吸血鬼」達が広めていったものである。
よく定着したものだなぁ、と改めて思いつつ、人里を散歩する。
「いらっしゃい、いらっしゃい!! 今日は楽しいクリスマス!! ケーキが安いよー!!」
自身の「菓子屋」の前で、ケーキを売ろうとする売り子のおじさん。ちなみにこの「菓子屋」というのも、数年前、八雲紫が突然外から持ってきたお菓子が流行った結果、人里にできたお店である。
「ケーキ・・・・・・ケーキかぁ」
食べたいなあ。妖怪だといっても、一人の女でもある私。甘いものは、やはり食べたくなるのである。
「むむむ……」
財布と数秒ほどにらめっこ。隅々まで見てみるが、お金は足りず、落胆する羽目となった。
「今後の生活費を減らす……いやいや」
さすがにそれはいけない。我慢して、菓子屋の前を通り過ぎようとするが。
「安いよ安いよー! ……お、麟」
覚えのある声、そして耳。
「白夜さん……今日は売り子の仕事だったんですね」
彼は出雲白夜。現在、成り行きで、私の家に居候中である。
「なんか人手が足りないらしくてな……でも、今日ぐらいはゆっくりしたかったよ」
少し疲れた表情をする。
彼は、いわゆる「何でも屋」である。一言頼めば、何でも引き受けてくれる。汚れた仕事や、退治の依頼はめったに受けないらしいけれど。
ともかく、そんな商売をしている彼の元には、毎日のように仕事が舞い込んでくる。それは、クリスマスである今日も、例外ではなかったのだ。
「がんばってくださいね……夕飯作って、待ってますから」
最近になって、「料理」という壁を乗り越えた私であった。咲夜さんにも、一目置かれるほどに成長できたのである。
「おう! ……あ、机の上にお金置いてあるから」
お金……? 何のことだろうか。
気になった私は、一度家に帰った。
家に帰ると、いくらかのお金ともに、置手紙があった。
『昨日の仕事のお金です。今日はクリスマス、豪華なご飯、おねがいします☆』
……全く、白夜さんらしい。
いつもどおりの彼に好感を覚えつつ、今日の夕飯のことを考え始めた。
◇◆◇◆◇◆◇
人里で買い物をしている時だった。
「おーい!」
声とともに土煙が俟ってきた。とっさに目をつぶるも、少し入ってしまったらしい、痛い。
「ああ、わるいな。大丈夫か?」
この声……しゃべり方は。
「魔理沙さん、もう少し落ち着いてこれませんか?」
へへっと笑いながら、普通の魔法使いは言う。
「人間は妖怪より寿命が短いんだ。せかせか動かないとあっというまなんだぜ?」
「それはこれと関係ありませんー」
なんだか悪い笑みを浮かべる魔理沙。だが、思い出したように話し始める。
「そうだ、今日クリスマスの宴会やろう思うんだ。場所は博麗神社、時間は……まあ、夕方頃に来てくれ」
なんと、今日は宴会らしい。まぁ、魔理沙の考えそうなことである。
ㅤそこで少し考える。皆とクリスマスを過ごすのか、否か。別に、白夜さんと過ごすのが嫌だってわけじゃない。ただ、よりみんないた方が、きっと楽しい。そう思った次第である。
「分かりました……色々料理持っていきますね」
ㅤそう言うと、ぱぁっと目を光らせる魔理沙。
「おう!ㅤ頼んだぜ!ㅤまた後でな!」
ㅤ箒にまたがり、すうっと空に飛んでいく。
「……さて」
ㅤ何を作ろうか。料理の妄想を張り巡らせながら、私は再び買出しに向かった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
ㅤさぁ、宴会の時間である。白夜さんは料理をしている最中に帰ってきた。一緒に料理を仕上げ、博麗神社に向かう。
「やっぱし寒いなぁ……」
ㅤ隣の白夜さんが呟く。料理を持っていない片方の手は、服のポケットに入れられていた。
「今年の冬は、今までで一番寒いですからね。雪でも降るんじゃないでしょうか」
「そうなのか……幻想郷って寒いんだな」
「そりゃあ山奥ですから。むしろ、ここからが本番ってところですよ」
「うへぇ……」
ㅤ露骨に嫌そうな顔をする。そんな話をしていたら、博麗神社に着いた。
「あら、いらっしゃい。素敵な賽銭箱はこちらよ」
「……妖怪からお金集ってどうするんですか、霊夢さん」
ㅤ面白くなさそうに、フンと鼻を鳴らすのは、博麗霊夢。この神社の巫女である。
「お賽銭じゃないなら帰ってくれない?ㅤ生憎、私は宴会の準備で忙しいのだけれど」
「俺達、その宴会に来たんだけどな。ほら」
ㅤ霊夢に風呂敷を渡す。中には、宴会のための料理が入っているのだ。
「……あら、気がきくわね。ありがとう」
ㅤ料理の風呂敷を受け取る霊夢。
「……どうやら、みんな既にいるみたいですね」
ㅤ奥の方で、ワイワイ騒いでいるのが聞こえる。レミリア含む妖怪からチルノ含む妖精までいる。とても大きな宴会だ。
「おー、みんな集まってるなぁ。……行こうぜ、麟」
「はいっ!」
ㅤこれから起きることを想像しながら、輪の中に入っていった。
「ダイソンのモノマネをするぜ!ㅤハッハッハッハッハッ……ハッ…………ハッ………………ハッ………どーん!(爆発音)」
『ワハハハ!』
「D〇Oのモノマネするわ。……最高に「ハイ!」ってやつだアアアアアアハハハハハハハハハハーッ」
『おおー』
「ニワトリのモノマネをしまーす……こけっこけコケコッコー」
『……お、おう』
「この流れでこうなるのはわかってたんだよちきょおおおおお!」
「じゃあ、白夜。一番受けなかったから罰ゲームね」
「おとなしくするんだぜ?」
「いやだぁぁぁぁぁぁ!ㅤ麟!助けて!」
「いやです。その液体、美味しそうじゃないですか」
「黒くてドロドロのこれが!?ㅤ嫌だぁぁぁ」
「……ふふっ」
ㅤ楽しい。皆といると、皆と喋ると。
「暖かい……」
ㅤ外で飲んでいるのに、暖かい。マフラーと手袋のせいだろうか。お酒を飲んでいるから、そのせいだろうか……。
ㅤ宴会終わり。皆、沢山飲み、沢山食べ、沢山会話した。その余韻に浸りながら、皆帰ってゆく。
ㅤ宴会の片付けは紅魔館の妖精メイドらがやってくれるというので、私達は帰路につく。
「今日は楽しかったなぁ~」
ㅤ隣の白夜さんがいう。ほんのり顔が赤くなっていて、お酒が回っているようである。
「魔理沙さんが誘ってくれて良かったです」
ㅤ色々な満足感を感じながら、私は頷く。
「まぁ、二人でのクリスマスってのも良かったけど、皆でワイワイ楽しむって言うのも悪くないよな」
ㅤまた宴会ないかなぁ~なんて言っている白夜さん。ついさっきやったばかりだと言うのに……。
「……もっと、こういう事沢山やりたいです」
ㅤ皆と過ごすと暖かくなる、心も、身体も。
ㅤとても寒い幻想郷の冬だけれど、なんだか暖かく感じられた。
ㅤ幻想の冬は、こうして過ぎてゆく。
短編ってまとめるのがやっぱし大変……(創。´・ω・)y─┛