暗闇の館 ~ Save the mind
紅魔館に着いた。
とりあえず飛ぶのを止めて、誰か居ないか探す。
「……大丈夫みたいね」
少し安心した。
「さて。どっからはいるかだが……」
魔理沙が言う。
近くの窓を割って飛び入る……なんてどこかの文屋鴉天狗みたいなことはしないでしょうね?
「するわけないぜ」
魔理沙は玄関から入ろうとする。馬鹿正直に入るのもどうかと思うんだけど……。
ま、いっか。
私達は紅魔館に入った。
「……広いわね」
「だな」
とりあえず適当に進んでいるけど、あちこちに部屋があったり、道があったりして困るわ。
「なぁ、霊夢。二手に分かれないか?」 魔理沙がそう提案して来る。
……まぁ、こんなに広いしね。後で落ち合えば良いし。
「分かったわ。私右側行くから魔理沙左側行ってちょうだい」
「了解したぜ」
魔理沙は、箒に乗って飛んでいった。
「……さて」
私も行きますか。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
霊夢と別れ、数分後……。
「適当に飛んできたは良いが……」
よく分からない所来ちまったぜ。
……あ、言い忘れてた。私、魔理沙だ。うふふなんて言わないからな。
それにしても……。
「ふーむ……」
霊夢と別れた辺りから、ちょくちょく視線を感じるんだよなぁ。別に気にしてはいないんだが……。
「っと。ここまでか」
廊下を塞ぐ、巨大な扉の前で降りる。
にしても、デカいな。如何にも何かありそうなんだが……。
「よっ……」
とりあえず開けてみた。
「うわぁ……本がいっぱい」
と、図書館だぜ! しかもかなり広い!
「……よし。さっくり持っていこ」
そう言って、私が本に手を掛けようとした時だった。
「ちょっと。勝手に持って行かないでよ」
弾幕が飛んできた。
私は、箒に乗ってそれを回避する。
「いいや、持って行くぜ」
何冊かを手に持つ。
「えっと……目の前の白黒を消極的にやっつけるには……」
何やらブツブツ呟いている。
私は、初めて声の主を見た。
紫色の髪……紫色の帽子……紫色の寝間着みたいな服……そして、手に持った真っ黒で分厚い本。
うん。なんだか不健康そうだぜ。
すると、紫もやし(私命名)が目を細めた。
「うーん、目が悪くなったわね。鉄分が足りないのかしら」
血をとってどうするんだ?
「どっちかつーとビタミンAじゃないか?」
「それもそうね」
パタン、と本を閉じる。
「じゃあ……あなたは色足りているのかしら」
紫もやしの魔力が上がった。
「足りてるぜ、色々とな」
私はミニ八卦炉を構える。
「それじゃあ、頂こうかしら」
紫もやしの後ろに、大量の魔法陣が現れる。
「私は美味しいぜ」
ミニ八卦炉に魔力を溜める。
「いくぜッ!! マスタースパークッ!!」
先行マスタースパークだぜ。
ま、アレぐらいじゃ避けられると思うけどな。
「む、むきゅぅ~~」
しかし、紫もやしは下へとフラフラ落ちていった。
しかも、運良くよくマスタースパークを避けられる。
「……?」
地面にベッタリと寝ている紫もやしを見る。
「コホッコホッ……うぅ。こんな時に持病が……」
あぁ……あれはマジで苦しそうだぜ。
「大丈夫か?」
紫もやしに近寄る。
紫もやしは、フラフラしながら立ち上がる。
「ど、泥棒に心配される玉じゃ……ゴホッ」
「うぅ……」と、呻く紫もやし。
……しょうがないな。
「よっと」
私は紫もやしを持ち上げた。
「ッ!? な、何するのよッ!!」
所謂、「お姫様抱っこ」の状態が嫌なのか、ピシピシと叩いてくる。
「このっ、離しなさい! ……はっ! わかったわ。私に(自主規制)や(ピーッ)や(見せられないよ)をするつもりなんでしょ! いやぁー! ケダモノぉーッ!!」
「は、はぁ?」
嫌々と首を振る紫もやし。
なんなんだ、こいつ……。
「私はただ、運んでやろうとしただけだぜ」
「ホテルに?」
「休めるところに!」
「そこで押し倒すつもりなんでしょ!! いやーッ!!」
ギャーギャー騒ぐ紫もやし。
「~~もう!! お前が調子悪そうで、弾幕ごっこどころじゃ無かったから、休める所に運んでやるっってんだよ!」
「分かってるわ。早く運んで。私の部屋、そこの扉の奥だから」
「……」
な、何なんだこいつ!
めんどくさいったらありゃしないぜ。
「……はぁ」
とりあえず運ぶか。
こいつ、あんなにギャーギャー言ってても、まだ苦しそうだからな。
そう言って、扉に向かおうとしたときに。
「パチュリーさまーッ!!」
「うおっ!?」
私の所に、赤い何かが突っ込んできた。
「ていっ!」
ちょっとマヌケな声が聞こえた……と思ったら、大小まばらな弾幕が飛んできた。
「よっ」
パチュリー(?)を抱き抱えたまま避ける。
「なんだ、いきなり」
「なんだ、じゃないです! パチュリー様をはなしてください!」
目の前の、紅い髪の奴は、今にも噛みついてきそうだ。
「パチュリー様! 大丈夫ですか!? 今すぐ助け「アグニシャイン」ふにゃああ!?」
ピューン。
紅い髪はどっかに吹っ飛んで行った。
「……なぁ。あいつ、お前の部下かなんかじゃないのか?」
「大丈夫よ。悪魔だから」
……何が大丈夫なんだ?
「兎に角……ゴホッ。運んで…ゴホッゴホッ」
またせき込み出す。
私は扉に入った。
扉の中は、かなり簡易的なものだった。だって、ベッドと本棚と机椅子とスタンドライトしかないんだぜ?
「よっと」
私は、近くのベッドに紫もやしを寝かせた。
「とりあえず礼を言っておくわ」
そう言って、また咳き込む紫もやし。
本当に大丈夫なのか?
心配だが、あんまりここに居るわけには行かないし……あ。
「なぁ。ちょっと聞いて良いか?」
「良いわよ。運んで貰ったし」
「そうか。じゃあ……ここの館って、何だか広すぎないか?」
「時間を操るのが好きな人が居るのよ。かなりお強いメイドの長がね」
なる程……だから、外見より中がひろいのか。
「あら、納得できるの」
「どうせ、時間を操るのは空間をいじるのと一緒とか言い出すんだろ」
「そうよ」
「なかなか分かってるわね……」と、呟く紫もやし。
「さっきから黙ってたけど、私には『パチュリー・ノーレッジ』って名前があるのよ? なによ紫もやしって」
じゃあ、パチュリー。もう一個あるんだが、いいか?
「良いわよ」
……ここの主が操られているって本当か?
「ッ!?」
パチュリーは、顔を険しくして黙り込んだ。