幻想入り
気づいたら、知らない天井だった。
いきなりテンプレをかましたが、本当に知らない天井だったので仕方がない。俺は、ベットに寝かされていたのだ。
とりあえず起き上がる。辺りを見渡すと、基本洋風チックだが、所々和が取り入れられた家具や小物の数々が見えた。ベットの横には小さいテーブルが置かれており、ガラス製の水差しが置いてある。一軒家で仕切りがなかったため、ベットから部屋がすべて見えた。
「……家主に合わないと」
状況としては、あれだろう。あの力の持ち主によって気絶させられたが、誰かに拾われたってところか。あんな裏山の、しかも人がいないところでよく拾ってくれたな。
考えていると、ドアが開かれた。
ドアから現れたのは、外見は普通の緑髪の女性。白のブラウス、襟元には黄色いリボン、赤いチェックの上着とスカートを着ており手には花をモチーフにしたような傘を持っていた。
その莫大な妖力に目をつむれば。
「あら、起きたのね」
にこりと微笑む。なんてことない笑みな筈だが、背筋がゾクリとしてしまう。
「あ、ああ。おかげさまで」
そう言って顔を背けてしまう。一瞬だけ、沈黙が訪れ、緊張が走る。
「……助けた恩人と目も合わせてくれないの?」
笑みを崩さずいう。俺は、慌てて視線を女性に向けた。
「……その、助けてくれて、ありがとうございます」
「構わないわ」
女性は傘を壁に立てかけ、台所らしき所へ向かう。
数分後、コーヒーカップを両手に持ち、こちらへ来た。
「飲むといいわ。回復に良い花が入ってるの」
1口。口に入れると、ふわっと花の香りが鼻に広がる。暖かいものを飲んだおかげか、花の効果か。先程の緊張も解れてきた。