力を追いかけ
あまりにも大きな力を、バイト中に感じた俺。なんでこんな町中に、大きな力を持った奴が彷徨いているのか。ちょっと気になったので、勤務が終わったあとに辺りを調べてみることにした。
「……お」
俺の第六感が感じ取った。どうやら、店の裏路地の方に移動している。……なんでまた裏路地?
しばらく感じる方向に歩いていると、今度はもっと人通りの少ない、裏山の方に方向が変わる。
「どんどん人のいない所に向かってる……」
歩きつづけて数十分。一年程、このバイト先のある街で暮らしていた俺だが、いよいよ見覚えのない場所にたどり着いてしまった。
「どこだここ……」
辺りをキョロキョロと見渡す。……視界の端に何かが写った。
次の瞬間。
「ぬわっ!?」
右足の感覚がなくなった!?……いや、右足の地面だけ抜けた?
「クソッ」
咄嗟に「妖力」で左足を強化。1歩の踏み込みで、体が吹き飛ぶ程の力をかけた。
吹き飛ぶ俺。不可思議の力で危害を加えられた為、あたりを警戒する。
すると吹き飛んだ先。端と端がリボンで結ばれた、気味の悪い口がする空いていた。
「ッ!!?」
「魔力」を吹き飛ぶ方向と逆に噴出。勢いを殺し、地面につくように調整。
着くと同時に「圧」を感じた。右に飛び込む。
元いた場所には、大きな墓石が落下した。妖怪の俺でも、あれに潰されたらひとたまりもないだろう……束の間の安堵をしていると、墓石が爆発した。大小の破片がこちらに飛来してくる。
「神力」で練り上げた防壁を現出した。急造であるため、頑丈ではないが、この程度を防ぐには問題ない……と思ったが、後方から電車が突っ込んできた。
「なんでもありかよ!?」
左手で防壁を支えつつ、右手を電車に向けら「霊力」を練り上げる。濃く、大きく、破壊力のあるよう……。
「いけぇ!」
放出。青白いビームのようなものが、電車に向かってゆき、電車を弾き飛ばした。
もうなんでもありだった。上から道路標識の雨、電車の追突、墓石。それらの猛攻の他に、「口」が俺を飲み込もうと随所に開かれる。
それでもなんとか避け続けていると。
「うっ!?」
咄嗟に首を逸らす。青白い何かが掠り、頬から血が垂れた。
打たれた方向を向く。すると。
「……ははっ」
俺を中心に、紫色の光弾が現れていた。
10や100じゃない。空一面を覆い尽くすほどの、光。
当然、よけられるはずもなく。
俺は気を失った。