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第7話 弟子と仲良し

……今、少女が大きな熊に追われている。


「全く、なんであんなのがいるのよ!」


依頼の通りだったら、普通の熊を倒して、毛皮を剥いで、はい終わり!だったのに、

弓は効かないわ、魔法も足止めくらいにしかならないわで、全く打つ手がなかった。


「おねぇちゃんなら、一瞬でやっつけるのに!!なんで私にはできないのよ!!」


昔から姉にはまったく勝てない、何をやっても一切勝てない。

それでも全く気にしていなかった、それでいいと思っていた。


気にせず家に引き籠っていたら、一週間前に姉にギルドに送り飛ばされた。


『引き籠ってばかりじゃなくて、たまには外を見てきなさい!!』


たかが3年引き籠ってたくらいで、ギルドに送り飛ばされるとは思わなかった。


魔力は思った以上にでないし、魔法も10分の1になるとか言われているが、

下手をすれば100分の1の威力も出ない。


「あー!もういや!!このポンコツ状態!!早く帰って引き籠りたい!!」


また追いつかれそうになったので、また顔をめがけて魔法矢を打つ、

今度はうまく額に当たったが、案の定、足止め程度にしかならない。


「あたしが弱いのか、こいつが強いのかわからないじゃない!!」


熊が威嚇の咆哮を放つ、


「あーもう、うるさいわね!!ん?」


かなり遠いところだが、人を発見した。2~3人はいるかしら?


「いいこと考えた!」


とりあえず向こうに飛ばして、どれぐらい強いか測ればいいんだ。


「倒せそうもなければ、逃げてくれるよね…多分。」


距離は十分ぎりぎり届くはず。


熊がこちらに向けて突進してきた時を見計らって、魔法を展開させた。

熊の目の前で小さな光が起り、目くらましをしている間に、人がいるところに飛ばした。


「…使ったはいいけど、魔力のほとんど持ってかれちゃったわね。」


体が全く動かない。

奥の手ではあったし、まぁいいかな、それよりも向こうが軽く混乱しているようだ。


一人が殴られた。


「…あれ失敗した?」


冷や汗がながれる。やばい、間違って目の前に飛ばしてしまったようだ。


とりあえず熊そいつから離れろ、死んだふりしてれば襲わないんでしょ?

気絶でも襲わないでよ!いいから離れなさいよ!


思いが通じたのか熊の視線が、別の人に向かう。


よし、体が動けるようになってきた。


後は、そいつが引きつけている間に助けだせばいい、

とりあえずやられた人が生きていれば問題ない。


ふらふらになりながら、助けに向かっている途中、ドスンという大きな音が聞こえた。


男の人だろうか?のしかかっている熊をどけると、倒れている人を抱きかかえて、

どこかへ行ってしまった。


「…何なの?あの熊を一瞬!?そうだ、あたしが弱いのか、あいつが強すぎるのかがわからないじゃない。」


間違って一人を殺しかけていたのを忘れて、倒れていた熊の方へ向かう。


「…気絶しているだけ?やっぱあの男が強すぎるのか…。」


…とりあえず獲物が目の前に倒れていたら、とどめをさすわよね。普通。


「今回の依頼は、熊の毛皮だったから、これ一匹で大丈夫よね。」



ギルドに持っていったら、一発でEランクにしてもらえた。


今日はついてるわ!


…さて宿で引き籠ろう。人界の本は魔界のより面白いのよね。



#######################################



ベットの中で優輝は変な違和感を覚えた。

自分以外の人がベットにいる。あれ?エレンは昨日、魔界に行ったはずだけどな…。


恐る恐る振り返ると、そこにはよだれを垂らしながら、ナシュが寝ていた。


…なんでいるんだ?昨日のことを思い出してみたが、ナシュがここにいる理由がわからない。


本人に聞いてみた方が早いか…。


「おーい!ナシュ起きろ!」


肩を揺さぶってみるが、まったく起きる気配がない。


「ダメだこりゃ、…仕方ないな。よいしょっと。」


掛け布団をとり、仰向けに寝ているナシュの腰に両腕を回し、上半身を起き上がらせる。

自分がリビングで寝ていたときに、母親にやられたことを思い出し、やってみたはいいが、

いざやったら、胸が当たるし、ナシュの顔が肩にあるし、いい匂いがするわで

軽いパニックになってしまった。


ほかの人が見たら、抱き合っているようにしか見えないのを優輝は気付く余裕すらなかった。


「ん~、…あっ、ししょー。」


ようやく起きてくれたようだ。寝ぼけているようで、まだボーとしている。


「とりあえず、離すからな、また寝るなよ。」


ナシュが頷く、頭がカクカク揺れているが多分大丈夫だろ。

腰にまわしていた手を離すと、支えを失ったナシュの体が崩れる。


あまり距離をとっていなかったため。優輝は、ナシュに押し倒されてしまった。


「…ししょー、んちゅ。」


優輝は、生まれて初めて、キスというものをされた。

頭の中が一瞬で真っ白になる。


しばらくして思考が回復し始めたので、ナシュの方を見る。


「zzz…。zzz…。」


キスをしたまま寝ていた。


ナシュを離して、ベット横で深呼吸する。


「落ちつけ落ち着け、これは事故だ、これは事故だ。」


自分の中でノーカウントにするまでに、1時間ほどかかった優輝であった。



「んで、なんでここにいるの。」


なんとかナシュを起こしたはいいが、もうすぐお昼になってしまう時間になっていた。


「いや、師匠を起こし来ようと思ったんですけど、師匠の寝顔を見てましたら。つい♪」


「「つい♪」じゃねー!ってか何で入れたんだよ!」


「「ユウキさんの彼女です」って言ったら鍵をくれました。」


誰が彼女だよ。セキュリティ甘すぎるだろ…。後で言っておかないと。

ちなみに優輝のファーストキスに関しては、寝ぼけていたためか、全く覚えていなかったので、

教えていない。…覚えられていても困るしな。


「んじゃ、話をまとめると、俺を起こしに部屋に入って、起こそうと思ったのはいいけど、

寝顔を見ていたら自分も眠くなって、ベットに入って寝てしまったと。」


「はい!今日は気合いを入れて、早く起きてきたので、眠くてうっかり。」


「…そうですか。」


もう、つっこむ気すら起きない。


「では頭も冴えましたし、ギルドへ行きましょう。」


「…わかったよ。ってか腕組むなって!」


変に意識するだろうが!なんて口に出せないシャイな男が、引きずられるように部屋を出た。



「かなり視線が痛いんだけど…。」


ギルドについても腕を離さなかったので、いろんな人がこちらを見ていた。


「気にしない気にしない。」


視線で殺されそうなんですけど、特に男たちからの視線で。


ナシュみたいな可愛い子と腕を組んでいたら、睨まれても仕方ないわけで、

男たちの中から「コロスコロス」などとも聞こえてくる。


夜道が歩けなくなりそうだよ。後ろからグサッ!と刺されそうだ。

なぜか刺してくるシーンで、エレンを思い浮かんだのは何故なんだろう?


「お待たせいたしました。ナシュさんとユウキさんですね。

本日の依頼はこちらになります。」


依頼は掲示板にも貼ってはあるが、良いものがなかったので、直接受付の人に聞いてみた。


「熊の討伐が多いな。ん!鉱石の回収?これってどんな感じなんですか?」


「これはですね。とある場所で、鉱石を運搬中に獣に襲われて、鉱石を置いたまま逃げてきたそうで、

その置いてきた鉱石を回収してほしいとのことです。」


「誰かに取られてたりしませんか?」


「おそらくそのままだと思われます。獣が多く危険地帯の場所なので、めったに人は通りません。

後、仮に探しても見つからなかった場合も報告してください。その時は失敗になります。」


無駄骨になる可能性もあるから残っていたのか。まぁ無駄骨でもいいか、しばらく血は見たくないし。


「んじゃこれで。」


依頼の手続きを終え、しばらく待っていると、依頼主がやってきた。


「あなた方が、依頼を引き受けてくれる方たちですか?」


見た目はそのままRPGで出てくるような商人だった。

依頼人の質問に頷く。


「依頼書にも書きましたが、家の者が、魔物に襲われまして、とある鉱石を置いてきたままにしてしまったのですよ。…それでその鉱石というのがですね。」


そういうと依頼主はこっそり小さな紙を渡してきた。


ナシュが、その紙をとり中身をみる。

俺もこっそり横からのぞき見る。


『ブラックハート』


ブラックハート?まったく聞いたことがない。

この世界にはわからないものが多いな…。


ナシュの顔を見てみると、驚愕を浮かべていた。


「……なんでこれがとれたんですか?」


小さな声で、依頼主に尋ねる。


「極秘なので、ご想像にお任せします。回収できましたら、ヒントだけ差し上げます。」


「…それを取りに戻ってくる可能性はありますか?」


「マジックボックスに入れて、運んできていますので、問題ありません。」


また俺を置いて会話が進んでいく。

大きな声で、できない話らしいのは、なんとなくわかるから、後でナシュに聞けばいいか。


「…わかりました。」


どうやら話は終わったらしい。


「そういえば、お二人はそのままの格好で行くつもりですか?」


依頼主が、少し不安な顔で見てくる。

そりゃそうだろうな。俺もナシュも一切、鎧などの防具をつけてきていない。普通に服のみだ。

ナシュなんて、なぜかファッション性をかなり重視しているし。

俺も空間の指輪を付けているくらいで、武器以外のものは基本的に持っていない。


「…そうですけど、これが俺の普通なんで。」


鎧を着てても変わらないし、重いし、なによりも金がかかる。


「そうですか、マジックボックスは壊さない限り、とられることはないので、壊れていた場合は、

マジックボックスの破片を持ってきてください。家紋があれば報酬をお支払いいたします。」


ほかの諸注意を受け、目的地に向かった。


今回の目的地はラース峡谷、イズムの森を南に抜けると有る、立ち入り禁止区域である。

ここには検問があり、許可を受けた者しか通れないようになっている。

裏道は存在しているらしいのだが、獣や魔物の巣になっているので、まず通れないそうだ。


検問所にギルドカードを見せて通る。

しばらく目的地へ歩き、気になっていたことをナシュに聞いた。


「そういえば、ブラックハートって何だ?」


「…師匠は無知ですねー。ほんとにこの世界に生まれてるんですか?」


たまに、鋭い所を突いてくるんだよな…。


「あんまり馬鹿にするんだったら、腕を離して、少し離れてくれ。」


「師匠は強いんで、知らなくても不思議じゃないです!」


手のひらをひっくり返すな、ってか強いのは関係あるのか?

ちなみにまだ俺は、ナシュに腕を組まれていた。

離そうとすると、涙目になるので、だいぶ前に諦めた。


「それで、ブラックハートっていうのはですね、この人界で一番強いといわれている。ドラゴン系の魔物の頂点にいるといわれている、ブラックドラゴンの体内で生成される、伝説級の鉱石なんですよ。」


「それがあるってことは、ブラックドラゴンってやつがやられたのか?」


「倒す以外でも、手に入れる方法はいくつかあるので何とも言えないです。ギルドの方にはそれを伝えていないので、Fランクの任務になっていますけど、本来そんな物の回収には、もっと強い人を呼ぶはずなんですけどね?」


「師匠は強いので受けました!」と大きな笑みを浮かべてこちらを見てくる。

そんな瞳で俺を見ないでくれ、反応に困る。


「向こうの思惑は、私たちに行かせて失敗させて、もっと上のランクの人を、事前情報なしで呼ぶことなんでしょうけど。」


「んじゃ何で、俺たちにブラックハートがあるって教えたんだ?」


「それが不思議なんですよね。教えて得することは何もないんですけど…。」


教えない方が盗まれなくて済む可能性が高いし、教える必要性がわからない。


「師匠!向こうに何かありますよ。」


ナシュの視線の先には、半壊している馬車と、狼の群れだった。

半壊している馬車の中には、箱らしきものが見える。


「こりゃ、取りに行けそうにもないな。」


「しかもあれは狼じゃないですよ。狼とリザードが混じっている合成獣キメラですね。

たしか、ブレスを吐きますよ。」


「魔物か?」


「はい。個体としては下の上くらいですかね?でもあれくらいの集団になると、

Cクラスの人が4~5人必要ですね。あくまで普通なら、ですけど。」


「数が多くて大変だな…。どうする?」


「私が後方で応援をしますので、師匠は特攻してください!」


「よしわかった!ってなるかい!」


ナシュの頭をペシと軽くたたく。


「冗談ですよー。でも今日は防具を持ってきてないんで、魔法で後方支援です。

師匠が囲まれないような程度には、がんばります。」


「できればそれで全部やっつけてくれると嬉しいんだけどな。」


「できないことはないですけど、昨日の熊たちよりひどいことになりますよ。」


「わかった行ってくる!」


「即答ですか。ではお願いします師匠。お手並み拝見させていただきます。」


骨砕きを抜き、キメラたちへ向かう。

骨砕きを出したあたりから、キメラたちの目線は全部、俺へと向けられる。


…20匹位か、多いな。


群れの中の何匹かがブレスを吐いてくる。しかし、それを平然と食らいながらも優輝は近づいていく。

攻撃が当たりそうな距離まで近づき、骨砕きをふるう。


キメラたちは避けようとするが、それよりも早く優輝が動く為、何もできずに吹き飛ばされる。

何匹かが噛みついて反撃をしようとするが、歯が刺さらない。


それを知ってもキメラたちは立ち向かって来る。


「あんま援護の意味ないかもしれないですけど、魔法行きますよ!」


優輝がいる半径10メートル範囲で雷が落ちる。


優輝を含め近くにいたキメラたちが雷の餌食になる。


「なに俺まで攻撃してんだよ!」


一度骨砕きを鞘に戻して、ナシュに怒る。


「すいません。どの程度効くか……加減がわからなかったんで。」


「それは俺に対してか!キメラに対してか!」


「ノーコメントで。でも今のでも全く食らってなかったところをみると、本気でも大丈夫ですね。」


「俺に対してだったー!!」


「小さいこと気にするのは良くないですよ師匠。それと周りを見てください。」


小さいことなのか?


「…ナシュの雷で倒れているキメラたちがいるだけだけど。」


「良く見てください。それ以外にもいたはずなのにみんな逃げちゃったんですよ。」


確かに、ナシュの雷の範囲はある程度あったが、それでもとらえきれていないものもあった。

生き残った者たちは、優輝が骨砕きを戻すと、すぐに尻尾を巻いて逃げて行った。


「…なるほど、骨砕きは魔物を強制的に戦わせるのか。」


魔物を集めるだけじゃなく、持っている者に対して、逃げずに戦わせる効果があるのか。

周りの人が危なくなったらこれを抜けばいい。


そうすれば魔物は皆、こちらに向かってくる。


「普通の人ならすぐ捨てるほどの呪いですね。でも師匠なら、使えこなせそうですね。」


「俺からしたら呪いじゃないからな。」


「そうですね。師匠は何にも効かないですからね。」


…確かに、ずっとノーダメージだった。こっちに来てから痛みを感じていないのかもしれない。


「っていうか先にマジックボックスだっけ?あれ回収しないと。」


半壊した馬車の中にあった箱を馬車の外に出す。


「たしか依頼通りの箱です。普通のマジックボックスより性能が高いようですね。」


「性能?」


「堅かったり、対魔法用加工をされていたりと、いろんな加工がされていますし、

ブラックハートが入っているというのも、本当かもしれないですね。」


「そうかもな、よくわからんが…。とりあえず持って運ぶの面倒だし、

空間に入れるな。」


「!!」


適当に空間を作り、その中にマジックボックスを入れて空間を閉じる。


「…なんで師匠は空間の指輪を持っているんですか?」


「なんでって貰ったから。」


「ええ!!」とおもいっきり驚いている。


「何驚いているんだよ。」


「だって空間の指輪ですよ!!あれってものすっごく高いんですよ!

それをもらったって、いったいどんなお金持ちからですか!!」


「知り合いからだけど、そんなに高いのかこれ?」


かなり便利だから、結構高いものだとは分かっていたが、ナシュの驚きからすると、

自分の思っていた以上に高いものなんだろう。


「………1個、白金貨プラチナ2枚ですよ…。庶民には、一生かかっても買えない代物ですよ。」


白金貨とは1枚で金貨100枚分になる。

財閥同士が、取引をする以外にほとんど使われない、幻の通貨でもある。


「……そんなにするとは知らなかった。」


…本当に何者だよ、エレンは。


「…もうこれからは何があっても、師匠には驚きませんからね。」


俺にじゃなくてエレンにだけどな。




「おぉ確かに、これで間違いありません。中身も無事のようですし良かった。」


マジックボックスを依頼主に届け中身の無事も確認してもらった。


「ではこれが、報酬です。後、私が口利きをしましたので、お二人ともEランクになりますよ。」


「ありがとうございます。それでそれを手に入れたヒントは?」


「そうでしたね。脱皮、というだけお教えします。」


「脱皮ですか!?……。」


ナシュが深く考え込んでしまった。


「そうだ、俺からも一つ聞いてもいいですか?」


「先ほどのこと以外なら、大丈夫ですよ。」


「なんで俺たちに中身を教えたんですか?中身をとられるかもしれないのに。」


「それなら簡単なことですよ。」


そういうと優輝の耳元に近づき、


「トラヴィスタ家の御当主様から、伝え聞いております。アイザワ・ユウキ様。」


「!御当主って言うと、エレンの父さんですか?」


依頼主は頷いた。


「御当主様から聞いておりまして、ユウキ様を信頼していたので中身をお教えさせていただきました。

さすがに、実際に会うまでは、あなたが私の依頼を受けるとは思いませんでしたが。」


そしてナシュの方をちらりと見て、


「彼女と一緒にいて、腕を組んでいたことは、報告しない方がよろしいですよね。」


「………はい。よろしくお願いします。」



受付での最終報告も済み、Eを書かれたカードを受け取り宿へと戻った。


「んで何でついてきているの。」


「色々な事情がございまして、師匠のところに泊めてい「いやだ。」まだ言いきってないですよ!」


「色々な事情って何だよ?」


「宿の修理をするらしくて、一週間程住むところがないんですよ!」


「ほかの宿を探せばいいじゃないか。」


「それがどこも満室で!」


彼女の目がうるんできた。…ダメだ。目を見ちゃダメだ。


「……ダメな物はダメだ。」


「ししょぉー!お願いします!」


目から涙を流し、声も少し擦れがかかったようになっている。


「住むにしても荷物はどうするんだよ。」


…しまった。

彼女はその言葉を聞くと、泣くのをやめ、目を拭きながら、

「荷物はギルドに預けてあるのでとってきます。」

といって、荷物を取りに行った。


…押しに弱いのかな俺。


エレンが帰ってくるのは、2週間後って言ってたし、それまでには帰ってもらえばいいか。


結局ナシュの荷物を持って、宿に帰った。



「やっぱり部屋大きいですよね。料理もおいしいし、」


「確かにな、それよりも食べ終わったら、お風呂先に入れよな。」


「師匠が先に入ってください、…もしかして師匠、変なことしようと思っています?」


「お前じゃないからしない!」


「ひどいです!!」


そんな冗談を飛ばしつつ、楽しい食事をとった。




そして今、ナシュが風呂に入っているので、自分の寝るソファーにシーツを用意している最中だ。


結局、話し合いの結果、俺が先に入ることになったので、俺は寝間着姿になっている。



「ふぅこんなもんか…。」


「師匠何しているんですか?」


目の前にはバスローブ姿のナシュがいた。


「お前もなんちゅう恰好しているんだよ!」


バスローブ姿で強調されている胸を見て、すぐに目をそらした。


「私は寝る前はいつもこうですよ?」


…いつも…だと!!


「というか師匠は何をしているんですか?」


「ナシュはベットで寝てもらうから、ソファーで寝るための準備してたんだ。」


「!ダメです!師匠がソファーで寝るなら、私もソファーで寝ます。」


何だろう。ちょっと違うけど、こんなの前にもあったような…。



結局、言いくるめられて二人でベットに入ることになった…。


ナシュより先にベットに入り、ナシュに背を向けて寝る。


そしてナシュがベットに入ってくる。


「師匠、おやすみなさい。」


俺は背を向けたまま、

「…うん、ナシュおやすみ。」


と言って、眠りについた。










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