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第4話 ハプニング


婚姻届にサインをしたことなど知らない優輝は村の市場に来ている。


イズム村は村の真ん中にギルドがあるおかげか、普通の町よりも活気がある

活気だけでいえば、城下町のそれとあまり変わらない。



賑やかな市場を優輝は観光気分で回っていた。



最初は村の服屋を探しに宿の周りをくるくる回っていたのだが、

見つからず、近くにいる人に聞いて市場の方にあると聞き、

市場まで来てみたが、


いざ来てみたら今まで見たことのない果物や装飾品に目を取られ、

すっかり最初の目標を忘れていた。



「おーい変な服着た黒髪のにーちゃん これ買ってかねーか!」


「いらっしゃーい おっ!変わった服着てるね。異国の人かい?」


明るい声に何とか相槌を打ちながら市場を歩いていく。


「最近、ひきこもってばっかだったから何か良いなー。」


ここ一年、優輝は母以外としゃべっていなかった。

そのせいかとても人の温かみに飢えていた。


「何かちょっと泣きそう…。」


市場を歩けばかけられる声に感動しながら歩き続けていたら、

市場の端に来てしまったようで歩くたび活気がなくなっている。


「まいったな…戻って服屋を探さないとな。」


とりあえず周りにいる人の中で話しかけやすそうな人を探していると、

両手に大きな荷物を抱えた女性が見えた。


紙袋のようなものにあふれるくらいに果物らしきものが入っている。

後ろ姿しか見えないが少し小柄で茶色い髪のショートヘアのかわいい子だった。


抱えた荷物で前が見えにくいのかとてもふらふらしている。


………あっ!転んだ。



彼女はすぐに起き上がると、転げ落ちた果物を拾い、袋に入れると、

またふらふらとした足取りでまた歩き出した…。


「なんかほっとけないな…。もう一度転んだら声をかけるか…。」


優輝は人見知りの節があり、自分から女性に話しかけるのは一切できない。

慣れていないというのもあるのだが、

彼女さえ作ったことのない彼に慣れろというのは些か厳しいものがある


エレンのように向こうから話かければ問題はないので、

彼自身、話しかける努力をしない。



だが、困っている人がいる場合は別、

昔から正義感が強く、困っている人を知らないふりをすることができない。


実際、先ほど立ち上がるのが遅ければすぐにでも話しかけたであろう。



「ほんとに危ないよなー。多分、前見えてないんだろな。」



はらはらしながら女性のことを見ている。



ちなみに優輝はかなりの心配性でもある、

ただし自分以外限定ではあるが。



自分が彼女のあとをつけているように見えるので、

周りに変な目でように見られないように、


声をかけようと決めた時、彼女は音を立てて倒れた。

どうやら人とぶつかったようだ。


「いてーな!ねーちゃん怪我しちまったじゃなねーか!!」


彼女がごめんなさいと謝っている。

だが男は許す気なんてさらさらないようで、


「どうしてくれんだ!!」だとか

「謝っても許される問題じゃねーぞ」などと

早口で捲し立てている。


その近くにいた男の仲間らしきものが「とりあえずこっちこいや」

などといい彼女の腕を引っ張り無理矢理建物の裏へと引っ張って行った。


連れて行かれた彼女の眼には薄っすらと涙を浮かべていた。



「こんなの見て、知らんぷりなんてできないよな…。」


落ちていた袋を拾いすばやく落ちているものを袋の中に詰めて、

すぐにそのあとを追った。


裏に入ると先ほどの女性と女性を連れ去って行った男たちがいる。

男は壁に手をつけながら女性を恐喝している。


女性の顔は影に隠れてよく見えないが、怯えているということだけはわかった。


OK 理由は十分だ。


袋を壁に立てかけると拳を握りしめながら、


「おにーさん達、何してるのかな?」


と男たちに話しかける。


「お前何もんだ!?」

壁に手をかけている男がこちらを睨みながら喋る。


ほかの男たちがガンを付けながら、「あーん!?」やら「ガキは帰りな!!」などと口々に言い放つ、


「ただのニートだよ。」


そう言うと男たちは、頭を傾げて「ニートってなんだ?」などとお互いに聞き合っている。


……この世界じゃ通用しないか。


「異国の称号だよ。」


一日中家にいることを、週7でやり続けたらもらえる称号だけどね…。



「そのニート様がなにかようか!?」


自分で言ったのが悪いが、人にニートと呼ばれるとつらい…。


「悪いおにーさん達をボコボコにしようかと思って。」


「なめんなよガキが!!」


逆上した近くにいた男が殴りかかってくる。


短気だなこの人だから下っ端なんだよ…。


女性は一番奥にいる、


奥にいるほど上の奴なんだろうなと勝手に予想してみた。


そんな呑気なことを考えていると男の拳が目の前まできていた。

殺意が籠っていて痛そうだが敢えて食らう。



俺は顔面を殴られたが1ミリも動いていない。


「いってぇー!!何だこいつ、むちゃくちゃ堅いぞ。」


痛みに涙を浮かべつつ、男は腕をかばう。


うん、確かに殴られた…。

これで正当防衛は成り立つかな…。


殴った男を睨みつけると、すぐに頭を掴み、後ろに行きよいよく投げる。


すると男は道を挟んで向かい側はの建物の壁にぶつかる。


ドン!!と大きな音が起き、男がぶつかった壁には大きな跡がついた。


…手加減はしたんだけどな。



まぁ女を泣かせた奴には同情しない方がいいよな…。


まだ生きてるみたいだし。



壁にぶつかった男はあまりの痛みに声をあげている。



足くらいは折れてしまったかもしれない。



そう思っていると残っている男たちは腰に刺していた剣を抜き出した。


…5…6人か、


「よくも仲間を傷つけてくれたな。」


「おそらく身体強化をつかっただろうが、これならどうだ!!」


そういい男はぶつぶつと何かを唱えている。


ほかの男たちは一斉に切りかかってくる。


よし、戦闘開始。


体に力を入れると、男たちの動きが遅く見えてきた。



そう思うと斬られないよう反射的に剣をかわしていた。


「なんだこいつ化け物か!!」


そういいながらも5人がかりで斬り続けてくる。


「くらえ!!」


呪文が唱え終わったのか、俺に手を向けて笑っている。



っ!! 足が動かない。


「あいつの拘束術は人間ごときにゃとけねぇーよ」



そう言うと男たちは一斉に俺に向かって剣を振りかざした。


バリーン!!


俺を切ったはずの剣がすべて折れている。

というか剣でさえ無傷なんだ俺…。



男たちは目を見開いて「…うそだろ。」と呟いている。


その間に足に力を込め、足の動きを止めていたものを無理矢理壊してみた。



パリーン!!と音と共に足の自由が戻った。


魔法を使った男が唖然として俺を見ている。



「とりあえずこれが俺を斬った分」



足に軽く力を込め近くにいた男たちを回し蹴りで吹き飛ばした。



「…そんでこれが」


魔法を使った男、彼女とぶつかり脅していた男にゆっくりと近づいていく。


ヒィ!!という悲鳴をあげながらも剣先を向けてくる。

しかしその剣先もふるふると震えて定まっていない。

拳にガッ!と、力を込めて


「彼女を泣かせた分だ!!」



行きよいよくアッパー。



男は空に弧を描いて飛んで行った。



そして彼女の方を振り向き「大丈夫かい?」と尋ねると、

彼女は大きく頷いた。



「お前達何している!!」


建物の前には知らない間に大勢の騎士が集まっていた。



…どうする。捕まったら牢屋だろうしな。



よし、逃げるか。




壁に立てかけていた袋を取り彼女に渡すと、

彼女を抱き抱えお姫様抱っこのような体型をとる。



そして足に力を入れて建物の屋根にジャンプ。


屋根の上に着くとさらに別の建物の屋根にジャンプ。


騎士は誰も上を見ていなかったのか追う気配もない。


しばらく繰り返して、誰も追ってこないのを確認すると、

屋根から下りて抱きかかえた女性も、降ろす。



急いでいたせいか全く顔を見ていなかったが、彼女の顔はとても可愛い。


そして抱きかかえた時に、何故わからなかったのかと不思議なほどに胸が大きい…。


そんな不純な目で彼女を見ていると、

彼女が顔を赤らめる。


気まずくなり目をそらし、


「家どこ?送って行くよ。」


とナンパみたいなことを言ってしまった。

言い方間違えたなと思っていると、


「…家じゃなくて宿に泊まっているんですが、送っていただいてもよろしいのですか?」



俺は「喜んで」と答え彼女の荷物を持ち、彼女を宿まで送り届けた。


宿に着いたら彼女は、「今日は助けていただきありがとうございます」といい、

何度も何度も頭を下げていた、


俺はそれに「当たり前のことをしたまでですよ」と答え足早に

逃げだしたのであった。



そしてまた市場にたどりつく

時間は夕方になり、人はさきほどよりも多くなってきた。


近くの人に服屋の場所を聞き、すばやく服を買い自分の宿へと戻った。


服を買う時にエレンから渡されている袋から金貨を取り出し、

これでお釣りをくださいと言うと、

90枚ほどの銀貨を渡された。


どうやら金貨1枚で銀貨100枚分くらいになっているようだ。


ちなみに銀貨1枚で銅貨が100枚の価値がありそれ以下はない、

その金貨がいっぱい入った袋を渡したってことは

エレンは一体どれくらいのセレブなのだろう…。



そう思いながら部屋の扉をあけると


バスタオル一枚のエレンがいた。



自分の服を探しているのかこちらに全く気付いていない。


バックの中から探しているようでこちらに背を向けている。



タオルの隙間から見えてしまいそうなくらい

ぎりぎりな角度であり、とても刺激が強い



優輝はこの絶対領域をみると、



音をたてずドアを閉め、一人悶々とするのであった。



それから優輝がノックをして部屋に入るまで30分もの時間が経っていた。



エレンがドアを開けるとエレンはバスタオル一枚…ではなく、

市場などで見たこの世界の服を着ていた。



ドレスの時のエレンも綺麗だったがこの衣装のエレンもとても綺麗で、

見とれてしまうほどなのだが、先ほどのこともあったのか、

優輝は直視できないでいた。



そして余りエレンを直視せずに一緒に夕食を食べ、

優輝は今、風呂から出てきたところである。


優輝が着ている寝間着は市場の服屋で買ったもので柄がよく、

肌触りもいいため、かなり気に入っている。



実際に着てみてさらに良さを感じていた優輝は、またものすごいものを見た…。






目の前には、もじもじとしながら顔を真っ赤に染めているエレンの姿であった。


しかし、すごいのはその着ている寝間着。



世間一般で言う、



『ネグリジェ』


であった。



しかもかなり薄く、さらにブラを付けていないようで、

腕で胸を隠している。



着やせするタイプなのか。ドレスの時ではわからなかった胸の大きさがあらわになる。



…かなり大きい。

目測だがEは間違いなくあるであろう。

なぜなら、腕で胸が隠し切れていないのである。



それに透け透けのネグリジェ・もじもじとした姿・真っ赤になった表情・俯きながらもちらっとこちらの様子をうかがってくる上目づかい…。



このコンボを食らいながらも優輝は野獣にはならなかった。

顔を真っ赤にしながらも


「なんでそんな恰好をしているの…。」


と言うが視線はもうエレンの方には、向けていない。

刺激が強すぎてもう直視できない…。


「えーと、えと、こっこれはですね。アリス様がこれを着ればユウキ様が喜ぶと…。」



……母の差し金か。

なんてことさせたんだよ母さんは…。



いろんな意味で期待を裏切らない母・アリスであった。




「っと、とりあえずこれ着て!」



といい、優輝は自分の着ていた上半身の寝間着を脱ぎ渡した。


エレンは、恥ずかしさがピークになったのか、優輝の寝間着をすぐに着た。



「と、とりあえずもう夜遅いし、もう寝ようか。」


そう言うと優輝はソファーの方に向かう。

すかさずエレンが止めに入る。


「ユウキ様。ベットはこちらですが…。」


「いや二人で一つのベットで寝るのもあれだから」


というか色々とまずい。



「いいえ!ユウキ様にはベットで寝ていただきます。ソファーなんかで寝ていただいては、

トラヴィスタ家の恥です。」


その後、話し合いの結果。

お互いにソファーで寝てもらっては困るということで、

しかたなくベットで二人一緒に寝ることになった。



緊張で眠れないかと思ったがベットに入るや否や強烈な眠気に襲われ、

すんなりと寝てしまった…。





もちろん、その夜に何か起こった!


ということはなかった。






朝起きると、エレンの寝顔がすぐ近くにあり、

かなりドキドキしたというのは、内緒の話である。






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