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第15話 赤い翼竜<鬼神

アラマ村からアラマの養殖場までの道は途中で違う村や町につながっており、田舎にしては比較的馬車が通る道になっていて通称アラマ通りとも呼ばれている。


その平和な道にものすごい速度で動くものがあった。


「ユウキ!もっと速く!」


「おう、ピリオドの向こう側まで行くぜ!!」


「よくわかんないけど行っちゃえー!!」


優輝が馬車に追いつこうとスピードを出し始めた頃からサファイアの具合がどんどんと良くなり、今では優輝の出す猛スピードにすっかりテンションがハイになっていた。


サファイアのテンションが上がるにつれて優輝のテンションも上がって行き、お互い先ほどまでの嘔吐感がすっかり消えていた。


だが、そのハイテンションのせいでアーサーとナシュが乗っている馬車より遥か先に行っていた。


「そういえば、馬車を抜いたときにアーサーの顔を見たけど、見事にポカーンだったな。」


「というか抜かれた人みんな、ポカーンってしてたわよ!」


馬車の二倍の速度で走る人間がいれば、驚くのが普通なわけでアーサーたちを抜いてからも、構わず他の馬車を追い越し他の通行人を驚かせていた。


「ユウキ!このまま空とべないの!?」


「無理言うな!…ジャンプなら出来るけど。」


「それでいいわ!鳥になりなさい!!」


サファイアをしっかりと背負って思いっきり踏ん張ってジャンプをした。


ナシュを抱えたときよりも遥か高く跳びあがった。


下を見てみるとおそらく10mは跳んでいた。


「……すごい。鳥になってる。」


「感動しているところ悪いが、しっかりと掴んでろよ。……落ちるから。」


近くに馬車があったので、落ちるときにぶつからないように考慮して跳んだが、ちょうど馬の目の前で着地をして馬を驚かせてしまった。


悪い気がしたが構わず先に進む。


「なにかが上から!!ってか速い!!」


馬をひいているおっさんがかなり取り乱しているのを後目にどんどん先に進んでいった。


その後、アラマ通りにはものすごいスピードで走る化け物が現れるという噂が出来たというのはまた別のお話。



「…ユウキって超人か何かか?」


少なくとも馬車より速く走る人を見たことなんてない。

しかも人をおぶったままで…。


「……私の師匠ですから。」


俺の言葉にナシュリが言葉を返した。

ちなみにさっきから話しかけてもずっとこの感じで馬車の中は非常に暗い雰囲気になっている。


「そういえばなんで弟子になったんだ?」


ちょっと気になったことを聞いてみた。あんな非常識な性能を持っているやつに俺は弟子入りする気は一切起こらない。


「…師匠に弟子入りすれば強くなれると思って。」


「そうなのか…。てっきり惚れたからまず弟子入りしてユウキに近づいたんだと思ったよ。」


「………。」

冗談のつもりで言ったがナシュリが顔を背けてしまった。

…半分図星ってところか。


「ところでナシュリは、アステラ出身か?」


「…そうですけど、なんで知っているんですか?」


「いや、昔アステラ出身のやつと仕事したことがあってな。そいつが髪が茶色い奴は基本的にアステラ出身かその血を引き継いでるって言ってたからな。」


「…そういえばそうですね。」


「でも大分遠くから来たな…大陸が違うからすごく時間がかかったんじゃないか?」


「……ええ、まぁ。」


ナシュリがなんだかあいまいな言い方してる。

まぁ人にはいろいろ事情があるからな。あんまり探るのは良くない。


「それにしてもユウキは不思議だよな。俺、黒髪なんて初めて見たよ。」


「…私も師匠で初めて見ました。」


「だよな…。ここらへんじゃ絶対見ないし……どこの出身か知ってるか?」


「…異国って言ってました。」


「異国って言われてもな…。色々あるしな。」


そういうとナシュリは不思議そうに俺に訪ねてきた。


「…人界って5つしか国が無いんじゃなかったですか?」


「…………何年前の情報だそれ?」


えっ!って顔されても困るんだが…。むしろ俺が、えっ!っていう状況だし。


「10年以上前からいろんな地方で国が出来ているんだ。今じゃ2~30はあるって話だぞ?」


「…知らなかったです。最近まで村から出たことがなかったので……。」


ものすごく落ち込んでいるがなんて声を掛けていいかわからなかった。

ちなみにナシュリが知っていたのは10年以上前、大国が5つあった時の話で、今ではその時の国は一つを除いて今でもあるってことを教えたが果たして聞いているかどうか怪しい。


「…まぁアステラの方は新しい国が出来てないって話だし、知らなかったとしても、問題無いって。」


「……勇者のことや魔王のことばっかり気にしてたせいなのかな。まさか周りの大陸でこんな大きな変化が起きているなんて…。これだからうちの一族は絶滅寸前なんだよ…。」


なんだかナシュリがぶつぶつ呟いている。

はぁ…また馬車の空気が悪くなった。


それから目的地に着くまで、ずっと重い空気のままだった。



「あー楽しかった!」


「俺も楽しかったけど、少し疲れた…。」


目的地にさっさとついてしまった俺たちはナシュ達を待っていた。


「ちょうどいいところに切り株があったから座りましょ。」


「結構大きな切り株だな…。」


二人くらいなら余裕で座れるほどの大きな切り株にサファイアと一緒に腰掛ける。


「…ねぇあんた、本当にどこの貴族?」


「……タブーだろ、それを聞くの。」


サファイアはいつになく真剣な眼差しで俺を見てくる。


「あんたみたいな超人、人界にはいないし、魔界にもなかなかいないわよ。」


「ってか、いるにはいるのかよ。」


「まぁ竜族とか、魔人とか…そうね後は魔王しか知らないわね。」


魔王という言葉には一瞬反応しそうになったが、なんとか堪えて話を続ける。


「ってか竜族ってなんだ?魔人とかもしらないし。」


「魔族にもいろんな種類がいるのよ。ってかそんなのも知らないの?」


「いやまったく。」


まったく、初耳なこと多いよな…。

もう少し説明してくれてもよかったよな…。おかげさまで馬鹿を見る目で見られてますし。


「…どうやら嘘を言っているみたいじゃないわね。」


「嘘言っても意味無いだろ?」


魔王のことを聞かれたら全力で嘘はつくけどさ。


「……ユウキ、ちょっといい?」


「別にいいけど、なんだ?」


サファイアがまた俺の顔をじっと見ている。


「…………。」


30秒ほど沈黙が続いたが途中でサファイアがため息をついて


「…やっぱなんでもない。忘れて。」


「そう言われたら気になるだろう。」


「じゃあ一つだけ言っておくわ。」


「おっおう。」


あまりに真剣な態度に少し尻込みしてしまった。


「その力を知っている人以外には決して力を見せないほうがいい、というより認識阻害魔法を掛けているとき以外は力を出さないようにしなさい。」


「…気をつけたいのは山々だけど、認識阻害魔法なんつうものは使えないって。」


「私と一緒に依頼を受けているときは掛けてあげるわ。それ以外は……人里離れている所以外では使わないようにしなさい。」


「ありがたいけど…というかこれって人に知られるとまずいのか?」


地球でこの力だったら不味いのは分かるけど、こっちの世界だと物差しが違うし魔法なんちゃらで誤魔化せるような気がしないでもないけどな…。


「魔界でそれならあんまり問題ないわ。ただ人界でそれだけの力があるってのが問題なの。」


「つまり、人界では敵がいないってことになるのか?」


「そういうことでもあるわね。おそらくユウキは異世界魔力増減不干渉症ってやつなの。そういうやつらは魔界に帰ったりするとすぐに狙われるのよ。」


「また知らない言葉が…。」


「異世界魔力不干渉症ってのは病って言葉が入ってるけど病気じゃなくて体質みたいなもので魔界から人界に来ても力や魔力が一切落ちないのよ。まぁその代わり魔界ではあんまり強くないんだけどね。」


でも俺って地球から来て、力が上がってたから違うんだけど…。

勘違いしているみたいだしとりあえず話を合わせよう。


「…てことはこれがばれると魔界に行けなくなるってことか?」


「おそらく魔界に入った瞬間に襲われるわね。実際にそういう人たちが魔界に帰れなくなって人界に永住したりしているから気をつけなさいよ。」


色々な事情があって襲われるんだろうけど自分の身で起こったら嫌だな…。


「……肝に銘じておくよ。」


とりあえずこれからは手加減をしていかないとだめって言うことか…。

ここにきてからまだ本気を出してないのに手加減を覚えるのか…頑張ろう。

手加減を覚えるのを頑張るって不思議な感じがするな。


「って言うか、サファイアはこのことを言わないでくれるのか?」


「言ってほしくないわよね。」


めっちゃあくどい顔してんなこいつ…。


「そりゃそんなめんどくさいこと起したくないしな。」


一体どんな要求をされるのか…明らかに無理ならサファイアを××して○○して……。

はっ!一瞬、俺が俺じゃなかった。一体なんてこと考えているんだ…。


「それなら、私のランク上げを手伝いなさい。それだけでいいわよ。」


サファイアから出された要求は思ったよりも簡単そうなものだった。


「…え?それだけでいいのか?」


正直それぐらいの要求なら全然問題ないし、パーティーが組める都合上一緒に依頼を受けて達成すればみんなランクは上がるので俺自身にあんまりデメリットが無い。


「正直それ以上の要求も考えたけど、ほらユウキってエッチな本を読むくらいな獣だし、最悪、襲われて無理やり○されて○○○にされて逆にこっちが言うことを聞く側にされかねないし…。」


犯罪者を見るような目で俺を見ないでください。

というかあなたは人の心が読めるんですか!


「俺はロリコンじゃないから襲わないって、っていうか女の子がなんていうこと喋ってんだよ!」


「はっ!どうだか!?途中で優輝の目が危なくなったのに気が付いていないとでも?」


「いつ俺の目が危なくになったよ!?」


「……少なくとも私をおんぶしている時、鼻の下伸ばしてたわよね?」


……いや、あれは男なら絶対鼻の下伸ばすって。だって柔らかいものが二つ常にあたっているんだぜ?紳士なら鼻の下くらい伸ばすって。


「ロリコン。」


グサッ!!


「おっ俺は年上の方が好きなんだよ!!」


「ってことは、ユウキは私じゃなく私の胸に反応したってわけね?」


…やばい、年下にどんどん言いくるめられてる。


「…ユウキは胸が大好きなんだ?ねぇ知ってる?胸が好きな人はマザコンなのよ?」


一瞬頭の中で、母さんが親指を立てていたが違うって、第一、母さんはCカップだから俺の理想よりも1、2カップ小さい。そりゃ確かに綺麗だけどさ…。


「胸は大好きだけど俺はマザコンじゃない!!」


「…胸好きは認めるんだ。」


しまった!ものすごい失言をしてしまった!!


「もしかして…ナシュにいつもエッチなことしてたりとか!?」


「してないわ!!」


「あの子、とっても大きいし師弟関係だから修行って言う名の…。」


なんであんたはそこで唾をのむ!?


「してないって言っているよね!?」


「でも、一緒に寝ているんでしょう?」


「うぐ!」


痛いところを突かれた。

昨日の夜中の出来事


「なぁナシュ?」


「なんですか師匠?」


ナシュはいつものようにバスローブ姿でベットに入ろうとしている。

そのため直接ナシュを見ないで会話をしている。


「さすがに一緒のベットで寝るのは不味いと思うんだ。家族とかならベットが一つだし仕方ないとは思うけど、ほらサファイアにも言われたしさ?」


そういうとナシュは急に俺の肩を掴んで俺の目を見て


「師匠?師弟関係というのは家族も同然なんですよ?師匠は家族なら仕方ないって言いましたよね?だったら弟子である私と一緒に寝るのは何にもおかしいことはないじゃないですか?」


「あれ?そういえばそうか?」


でもなんか違う気がして……


「ほら師匠、明日は朝早いんですよね?早く一緒に寝ましょう?」


「あぁうん。そうだな早く寝よう。」


あれ?何かが間違っているような?



何と言うことがあったりしたわけで。


「そんなわけで、やましいと思うけどなにもおかしくないって。」


サファイアが呆れた目で見てくる。


「いや、あんた騙されてるって。」


「え!?マジで?」


「むしろ家族だからって同じベットでは寝ないでしょう?」


「そんなことは無いって。母さんだって家族のスキンシップとして最低でも週に1回は一緒に寝るのが普通って……もしかしてあれも嘘なのか!!」


「どんな変態家族よ?」


サファイアが軽く引いている。


あんにゃろう騙してたのか!なんかおかしいとは思ってたんだよな。

高校生の時も親と一緒に風呂に入るのが普通だよなっていう話をして友人にドン引きされたこともあるし、もしかしたら他にも騙されていることがあるんじゃないか!?


「…じゃ、じゃあ食事であーんするのもおかしいことなのか!?」


「…私には分からないわよ。引きこもってからはずっと一人で食事してたし…。

でもそうね…引きこもる前はしてもらってたわね。」」


良かった。これは間違ってなかった。


「それじゃ最後に一つ、家族同士でいってきますとただいまのキスをするか?」


優輝はナシュにされるまで”家族以外”の人にキスされたこともしたこともないが、

家族である母、アリスとは普通のカップル並みにキスをしていた。

もちろん優輝の考えるファーストキスでは家族はノーカウントである。


「……ユウキ、あんたは紛れもないマザコンよ。これから胸を張ってマザコンを名乗っていいわ。」


サファイアは俺の方に手を置き、諦めろと目で語っていた。


「いやだー!!俺はマザコンじゃないーー!!」


青年の悲痛な叫びは山へと鳴り響いていた。



ネットのコミュニティー

”息子を愛でる会”の”ゆうちゃんLOVE”さんは、

高校生までは一日二回は普通だったけど、卒業してからは一週間に四回くらいになって、もの凄くさみしぃ(T T)


と語っていた。



「ふぅ、やっと着いた。おーいユウキ!またせたなって…どうしたんだそんなに暗い顔して。」


「……しばらく一人にさせてください。」


やっとユウキ達に合流したと思ったら、ユウキがぐったりとした表情をして倒れこんでいた。

そりゃ人をおぶって走れば疲れるか…。


「とりあえず、これ以上馬車で進める道は無いから歩いて行くことになるが、歩けそうか?」


「…先に行っててくれ、何かあったら大声出してくれれば助けに行くから…。」


…こりゃ今回の依頼は無理かな?


「師匠!師匠がいないと倒せないんですから行きましょう。」


「…誰のせいでこうなっていると思っているんですか?」


「…マザコンのお母さんのせいでしょ?」


サファイアの突っ込みにユウキが「うわぁあ!」と喚いている。

本当にこのメンバーで大丈夫なんだろうか…。



とりあえず、まだ復活していないユウキがふらふら後をついてくるが、正直怖い。

こんな状況でレッドワイバーンに襲われたら壊滅するって。


「いったい何があったんだ?疲れているだけじゃなさそうだが?」


ユウキの連れであるサファイアって言う女の子と聞いてみたが、


「…自業自得だからあんまり気にすることはないわよ。」


と少し距離のある感じで答えられてしまった。


なんだろういつもなら簡単にメンバーに馴染めるはずが今回ばかりはなかなか馴染めない…。

ユウキ以外とまともに話ができないと連携が取れなくなるから色々と不味いんだけどな…。


この中ではユウキが一番強いだろうけど、こんな調子だと最悪ユウキが殺されかねないし、もっとシャキッとしないと危ないのは分かっているはずだろうに…。


とりあえずもしもの時用に煙幕の準備はしておくか…。


ユウキ達は今、空間から武器をだして全員装備している状態だが、ユウキの強さを知らない人が見ると、無防備極まりなかった。言うなれば初心者丸出しの遠足的な感じで移動をしているのだ。


今まで依頼を数多く受けてきたアーサーは、このような初心者の中に入って失敗した経験もある。

それ故に彼の中でこのままだと失敗するかもしれないという、長年の勘が働いているのであった。


「ユウキ、落ち込むのは後にして今は気持ちを切り替えていこう。さっさと終わりにして帰って一晩寝れば何とかなるって。」


「……そうだよな。とりあえず今はさっさと倒して帰ろう。」


よし、とりあえずこれで最悪な結果だけは免れそうだ。


それにしても、ギルド長は「たぶんすぐに終わりますよ。」とか言ってたけど、

もしかしてこっちの負けですぐ終わるって意味で言ってたんじゃないのか?


いやさすがにそれは…


「…マザコン。」


「ぐはぁ!!」


…無いと信じたいな……ははは。



「…ここら辺で目撃情報があるそうです。」


養殖場から少し離れた山と山の真ん中あたりに着いたが周りには多く洞窟があり、洞窟からレッドワイバーンが出てこない限りとてもじゃないが見つけられそうにもなかった。


「…こんなに洞窟があるとなると道具が足りないな。」


アーサーは音でおびき出す道具などを持参してきていたが、洞窟の数があまりに多くてすべてに使える程は無かった。


「…どうしたもんかね。」


少し困り果てていると、サファイアがすべての洞窟を一通りみて一つの洞窟を指さした。


「たぶんあそこに居るわよ。」


「本当か?」


アーサーが少し驚きながらサファイアに聞き返す。


サファイアが頷くと、アーサーはその洞窟に向かって道具を投げた。


「あっちょっと待って!」


サファイアがそれを止めようとしたがすでにアーサーが投げ終えていた。


「…もしかして間違ったとか?」


アーサーが聞くとサファイアが首を横に振り。


「ユウキに行かせれば、すぐに終わったのに。」


と、答えた。


…いや確かにそうなんでしょうけどね。


洞窟の中から大きな音が聞こえて、中からこの間見たワイバーンより赤い、レッドワイバーンが現れた。


すぐに空を飛んで俺たちの周りをぐるぐると回っている。


「これどうすればいいんだ?」


「ユウキは私たちから離れて!」


サファイアの言われた通りに離れてしばらくワイバーンの動きを見ていると、途中で止まりこちらに向かって火の玉を吐いてきた。


「え!おわっと!!」


火の玉を何とかかわしてレッドワイバーンの見るとまた俺たちの周りをぐるぐると回っている。


「火の玉がユウキに行ったってことはやっぱりユウキが一番強いのか。」


「これで私たちは安全ね。」


「それじゃ私は止まった時に雷撃を撃ちますね。」


…何だろうなこの感じ。もの凄い疎外感が…。


しばらくレッドワイバーンの玉よけをしていたが、サファイアの弓矢は当たらない、ナシュの魔法も当たらない、アーサーの用意していた罠もアーサーの方に行かないから意味が無いと、完全に打つ手がなくなっているようだった。


孤立無援と変わらないですよ。


「どうする逃げるか?」


「…魔法を撃ってもよけられるとなるとどうしようもありませんね。」


「いや、まだ手はあるわよ。」


「いいから早く何とかしてくれ!普通に疲れるわ!!」


「ユウキ!ジャンプしてそいつを捕まえなさい!」


この人、元も無いこと言った!!


結局完全に俺頼みですかそうですか…。


「まぁ早く帰りたいし、まぁいっか。」


レッドワイバーンは大体10m位の高さで飛行を続けているから届かない高さじゃないし、

飛球を撃ったと同じタイミングで跳べば何とか掴めるか?


一度つかめれば木にでも投げ飛ばして終了だし、試してみるか…。


二回くらいタイミングを見計らって、…よし今だ。


タイミングがちょうど良過ぎたせいか正面から火球に突っ込みながらも何とか、レッドワイバーンを捕まえる。


「なぁ、今火球に当たったよな?」


「…そうですね。」


「普通なら大火傷なんだけどね。」


「師匠ですから。」


「いや、でも最悪死んでもおかしくない…。」


「師匠ですから。」


うわ、あの人たち完全に外野に居ますよ。


あいつらに当たらないようにワイバーンを投げてみたが、見当外れにアーサーたちの近くにある木に当たった。


サファイアが涼しい顔でぴくぴくしているレッドワイバーンに止めを刺して、今回の依頼が終わった。


「お疲れ様ー。」


「お疲れ様ー、じゃねーよ!最初の作戦内容覚えていますか!?」


「えーと、ユウキが頑張っているところを私たちが眺めるってやつだったっけ?」


「んなこと誰も言ってないからね!」


「師匠、ごめんなさい力及ばず…。」


ナシュの目には少し涙が浮かんでいた。


「いっいや、謝んなくていいよ。俺が何とかするしかなかったんだし。」


「そうですよね!」


この娘いつの間に嘘泣きなんてものを!?


「ごめんなさいユウキ、私の力が及ばなかったせいで…。」


「アーサー、これは村まで運ぶのか?」


「首だけ切って持ってくればいいって言ってたから全部は持ってこなくていいぞ。」


「私、無視なの!?」


「それじゃ馬車で届けてくれないか?俺は先にギルドで待っているよ。」


「おう、分かった。」


「そうよね、マザコンには私の色気なんてわからないわよね。」


「んじゃ”一人”で先に行っているよ。」


サファイアが”一人”という言葉にピクッっと反応した。


「あっ師匠、それじゃおんぶしてください。」


「仕方ないなー。それじゃ先に行ってるよ。馬車でゆっくりゆられてくれサファイア。」


急にサファイアの顔が真っ青になっていった。


「ってちょっと待ってよ!謝るから!!私はとても悪いことをしましたごめんなさい、だから馬車だけは勘弁してください。」


「…気持ちが伝わってこないなー。」


散々マザコンマザコン言われたし、これくらいの仕返しはいいよね。


「おぶられている時、胸をもっと押しつけますので許してください。」


ちょっと!そんなこと言うと…。


「し、しょ、う!?」


ほら鬼神が誕生しちゃうって!!


「ちょっと話を聞かせてもらえますか?師匠?」


おかしいなナシュの顔は笑っているはずなのにものすごく怖いぞ?

きっとオーラのせいだ…。……よし逃げるぞ。


「よし、サファイアおんぶしてやるからさっさと乗れ!」


ナシュがゆっくり近づいてきたがそれよりも早くサファイアが乗っかってきたので、

ナシュから逃げるようにサファイアをおんぶしたまま走り去った。


「修羅場だな。」


アーサーは能天気に笑っていましたとさ。



「アーサーさん、ちょっといいですか?」


帰り道、不意にナシュリから話しかけられた。


「あぁ別にいいよ。」


馬を引きながらもナシュリの話を聞く。


「師匠の力のこと他の人には黙っていてもらえますか?」


「別にいいけど、なんでだ?」


たしかに常識離れした力を持っているやつがいれば、その力にあやかろうとする人達からやたらと話しかけられたりして、色々めんどくさいのは知っているが、そういう雰囲気でナシュリは話していなかった。むしろ、その力が他の人にばれると色々厄介なことになるといったニュアンスも入っていた。


「明らかに常識から離れ過ぎているので…。」


「…戦争の火種にもなりかねないって言う意味か?」


ナシュリが静かに頷いた。


あれだけの力を持ったやつがいれば、いろんな国が戦力としてスカウトするだろう。

そして雇った国は一気に脅威と化す。


正直、戦場で敵としてユウキにあったならばすぐにでも逃げ出す自信がある。


勝てるわけがない、少なくても魔法を使わずレッドワイバーンの火球をものともせず、素手で倒すような奴なんて、百人がかりでも倒せるかわからない。

もしユウキが魔法を使えたなら国すら落とすレベルにもなりかねない。


ユウキがそういうものに参加するやつじゃないのはなんとなくわかるが、もしもってことがある。


…力を持ち過ぎているが故にか…。


俺とは逆だな。




死刑宣告された奴の気持ちってこんな感じなんかな…。


ナシュから逃げてきたけど、逃げたところで帰るところは同じだしな…。


…どうしよう。また行き地獄が……人によっては天国なんだろうけどさ…。


「まぁまぁおとなしく怒られようって。」


「誰のせいだと!!」


「ここはギルドの中なんだから静かにしないとだめよ。それにいいじゃない、ちゃんとおぶってくれた間は胸を押しつけてあげたんだから。」


「いや、あれは良かったけどさ、って何を言わすの!?」


「むしろなんでいうの?変態なの?」


「感想を言わないとまたマザコン言うだろうが!」


「ばれたか!」


てへぇ、と舌を出して茶目っ気たっぷりにしても、今の俺からはいらつく以外の感情は起きませんけどね。


「それよりも私の胸どうだった?小さいながらも柔らかかったでしょ?」


「自分で小さいって言うんかい!」


「いや、まぁこんな姿だしね…。」


「まるで、まだ変身を残しているみたいな喋り方だな。」


「実は、私の本当の姿は超巨乳なのよ!」


「はいはい、口では何とも言えるよね。」


「認識阻害魔法を使えばそれくらい…。」


「結局ごまかしじゃんか。」


「それでも、触った感じは本物と変わらないわよ?」


「…まっまじですか。」


巨乳のサファイア、すなわちロリ巨乳…。ゴクリ。


イヤオレロリコンジャナイヨホントダヨ。


「触ってみる?」


サファイアが魔法を使って巨乳の姿になる。

服の上からだがぱっと見、本物のような質感がある。


それを食い入るように見てみると不意に後ろから殺気を感じた。


振り返るとそこには、鬼神(ナシュ)がいた。


サファイアがけらけらと笑っている。

こいつ!来たのを知っていてやりやがったな!?





そしてその日この世界で初めて体の痛みというのを経験した。



大変お待たせいたしました。


2週間があいたと思ったら変態度が上がっていた作者です。


おかしい、最初はこんなはずじゃなかったのに…。


↓言い訳time


えーとですね、色々言いたいことはあるのですが、

まず最初に、今回2週も空いたわけはただ単に、書く気が起きなかったんです!!…ウワゴミナゲナイデ


小説を書くのが好きな人ならそんなことは無いのでしょうが、自分は×妄想○想像する方が好きなわけで…。

この2週は書くというよりもこれからの話のネタを考えていたという感じです。詳しくはネタばれになるのでいいませんが…。


後、12月はあまり更新を期待しないでほしいです。

ゲームがいっぱい出るからじゃないんだからね勘違いしないでよね!


……ごめんなさい。クリスマス、大晦日と夜勤のバイトが確定なため、ストレス発散がしたいんです。あぁ今から憂鬱だ…。

クリスマスに嫁の前でケーキを食べることを恒例にしてたのに…。


てなわけで!


累計pv3万累計ユニーク5千人いってましたありがとうございます!


誤字脱字報告その他感想などお待ちしております。


……自分、お気に入りが100件超えたらラブコメ乗せるんだ…。

昔、友人だけに見せてた電波っ娘とストーカーがでてくる奴。


途中でスクイズに、はまってヤンデレになってしまいそうになって投げだしたけど今なら書けると思うんだ…。


ちなみに越えるわけ無いですが1000件超えたら母親二人×息子のラブコメ書きます。…R18では無いですよ?ちなみに薄っぺらい本でも無いです。


11月26日

どうやら先週書いたと思っていた延期のお知らせが上書きミスしていたようです。

申し訳ありませんm(_ _)m


今週もちょっと間に合いそうもありませんので野球バラエティを少し我慢して来週の水曜までには次話を投稿しようと思います。


…ただし、若干毒電波を受信したせいで、見る人を選ぶ内容となってしまいますのでそこの所はご了承ください。

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