第1話 ある誕生日
この物語は作者の見切り発車で進行しております。
途中、脱線事故(設定ミス)を起こす可能性があるため。
お気をつけてお読みください。
「ママね…。ゆうちゃんに魔王になってもらいたいの…。」
ごく普通のリビングにあるテーブルの上にあるケーキ。
そのケーキには『お誕生日おめでとう ゆうきちゃん』と書かれている。
自分のことをママと言っている人はどう見ても20代にしか見えないくらい綺麗な人である。
そして、その母親にゆうちゃんと呼ばれているのは、実の息子である俺こと、逢沢 優輝である。
二十歳の誕生日に母こと逢沢 アリスは、とんでもないことを言い放った。
「なんだよ魔王って!!」
当たり前だがここは地球であり平和な国、日本である。
ここで「魔王になる!!」といってもただの痛い人である。
しかし、母さんは茶色い瞳を俯きながら淡々と答える。
「……だってゆうちゃん、高校卒業して一年以上たつのにちゃんとした職に就くどころか、アルバイトすらしていないし…。」
そう、俺は今世間一般で言うニートである…。
しかし高校時代にアルバイトをしてためた金を使い、株などで自分の小遣い程度は稼いでいる。
アルバイトは高校卒業と同時に止め今はひきこもりながら、
趣味のゲームや漫画を買いつつオタクライフを満喫しているのである。
「…たしかに今は働いてないけど、資格試験とかの勉強をしているだろう? 資格さえ取れれば若いし、職は何とかするっていったはずだけど?」
これは嘘じゃない。確かに遊んでいて世間的にはニートに見えるかも知れないけど、俺はひきこもりの就職浪人だと思っている。
「…うぅ、そうなんだけど…。」
俺がなんとか反論すると母さんが俯く…。
これはなにか裏がある…。
母さんが俯いてもじもじし始め、金髪のショートヘアがゆらゆらと揺れ始めた。
これは何か言いにくいことがあるときの母さんの癖だ。
もしかしてまたあれか…。あれなのか…。だとしたらまずい。かなりまずい…。
けっしてそうでないことを祈りつつ母さんに聞いてみた。
「まさか母さん、…またギャンブル?」
かあさんの顔が真っ青になっていく…。
そしてゆっくり頷く。
…おい。マジですか…。
「いくら使った!?」
この前は、2年前に500万を使った人だ。おかげで俺は進学を諦めざる負えなかった。
さすがに、もう500万みたいな大金じゃないだろうが…。
「……3000万。」
……ははは、冗談だよな。さすがに、それは限度を超えている。
聞き間違えであると信じもう一度たずねた…。
「…だから3000万円です。 本当にごめんなさい…。」
母親は土下座をして謝る。
「ちょっとまってよ。この前はあんなに反省してたのにまた懲りずにやったのかよ!!っていうか3000万なんて貯金は家にはなかったはずだぞ!!」
そうこの前もこのような感じで誤ってきた。
この前と違う点は涙流しながらの鼻水たらしながらではなく。
真剣な顔つきで誤ってきたことである。
「借金しました…。 ……闇金から。」
最悪だよマジで!!なんていう誕生日プレゼントだよ!!
そう絶望しているとき不意にチャイムが鳴った。
「…まさか。金融機関の人…?」
ドンドンと扉をたたいている。
「逢沢さーん。いますかー■ ■金融のものですが…。」
とても低い声の人が呼んでいる
母さんがぶつぶつと何かを唱えると俺の周りにいくつもの魔法陣があらわれた。
「ごめんね、ゆうちゃん。 ママ一人ならいくらでも逃げられるんだけど、ゆうちゃんまではかばいきれないから。」
そう言うと俺の体が突然光り始めた。
「…これなんだよ。」
俺がそう言うと母さんが淡々と述べる。
「転移魔法。 今からゆうちゃんを別の世界に送るから。」
「別の世界ってなんだよ!!」
「慌てないで、お母さんが生まれ育った世界だから。」
「生まれ育った?」
俺がそう答えると母さんがにっこり笑ってやさしく答える。
「そう。 …あと、安心してね。誕生日プレゼントはそっちの世界に用意しているから。
最悪の誕生日にしちゃったお詫びも込めてね。」
そして言い終えると、俺の体が徐々に光の粒子になって消えていく。
俺がこの世界で最後に見た景色はドアが蹴破れられていく様子だった。
「じゃあね、ゆうちゃん。いってらっしゃい。」