連綿と続く系譜
結構前に職場であったことです。
なんとなくエッセイ(?)にしました。
職場の部下がNetflixでアニメをで見始めたそうです。
「何見ているんですか?」
そう聞くと彼女は答えました。
「〇〇って作品です!」
あー、あの作品ですか。
「小雨川さん、知っています?」
「あー、はい。一応知っていますね」
「面白いですよ! 私、今、五部を見終わって~」
「じゃあ。一部から四部は履修したんですか?」
「いえ。ネットの友達に勧められたんですけど、あんまりにも量が多いから興味あるところから見始めたんです」
そんな見方があるのか……。
まぁ、確かに物凄い長いからそういうのもありなのだろうか。
ここからしばらくこの作品を語ることに。
何分、長い作品な上に部下は元々アニメ好きなので止まらない。
楽しそうに語る部下と話すのは当然楽しいので私も心地よい休憩時間を過ごせる。
「――で、この作品。特徴的なポーズするじゃないですか」
「あー、ありますね」
「旦那なんかハマりすぎてお風呂上りに必ずそのポーズ決めながら出てくるんですよ」
「〇〇にハマった恋人や夫婦が必ずするアレですね」
さて。
部下について軽く述べる。
彼女は立場で言えば私の部下であるが年齢はそれなりに離れている。
姉妹というには一般的な感覚では離れすぎている。
だけど、母子というにはこれまた一般的な感覚では近すぎる。
そんな年齢差。
いずれにせよ、同世代ではない。
面倒見が良く、とても明るい方だ。
立場上は部下ということもあり、彼女はいつだって自らの立場を弁える。
情けない話だが私の方が年下ということもあり、どうしてもこちらが指示を出しづらいのを察して「こちらはやっておきます」と自ら申し出て仕事をする。
不甲斐ない上司と優秀な部下。
まさにそんな関係だろうか。
気づけばもう数年の付き合いだ。
仲も良いので深くならない程度にプライベートの話もする。
曰く、彼女は元々体育会系の人間だったそうだ。
交流がある人もそういった人が多い。
その一方で昔からアニメとか漫画も好きだったのだと。
「あー! それにしても! こんなに面白かったならもっと早く見ていれば良かった」
「まぁ、アニメになったのつい最近ですからね」
言うほど最近でもない。
調べなおしたら初アニメ化から十数年経っている。
だけど、社会人の最近はこういう範囲である。
「私が学生時代に三部をやっていたのかな?」
「三部の頃だと、私まだ生まれていないです」
「うっわ! マジか!」
「でも知っていたんですね」
「うん。クラスの大人しい男の子が読んでいたよ」
「へー」
「懐かしいなぁ。あの子、元気かなぁ」
別に気になったわけではない。
ただ、作品語りが一段落したから。
私は。
何気なく尋ねたのだ。
「仲良かったんですか?」
「そだね。仲良かった。だけどまぁ。少し変わっていた子でね」
「変わっていた子?」
「うん。まぁ、今で言うオタクって感じかなぁ」
「へー」
小さな予感。
けど、それが何であるか。
その時の私は気づけなかった。
「机に絵を描いていたの」
「あー、私の世代でもそういう人居ましたね」
「うん。すっごいのよ。普段は教科書で書かれているんだけど本当にびっしり描いていてね。女の子たちからはちょっと引かれちゃっていて」
「まぁ、そうなりますよね」
「で。その絵も結構特徴のある絵師さんの絵で。あまり知られていなかった人なのよ。当時は」
「へー」
「だけど、何か私それ知ってて。どうしても話したくなってね。それで声をかけてみたの」
「青春っすね」
「そうそうw で、声を掛けたらまぁ、露骨に『話しかけてくんなよオーラ』で迎え撃たれた挙句、絵の話をしたら『お前にはわかんねえだろ』的なこと言われてさー」
「うわぁ。想像できる」
「うん。だけどね。私が『それ、XXさんの絵だよね!』って言ったら、滅茶苦茶食いついて。で、私も語りたかったから語りまくってさ。結構仲良くなったんだよね」
私は先ほどの予感が何か気づいた。
そうか。
私はその光景を想起したのだ。
「えっ、それ。現代で言う『オタクに優しいギャル』じゃん(タメ口)」
「あっ、確かにそうかもw」
私は言葉を失った。
感涙していたのだ。
現代でさえその実存が疑われている『オタクに優しいギャル』は。
――存在していたのだ。
それも。
今よりも、ずっと前の時代から――。
雨は降る。
当然のように。
風も吹く。
当然のように。
命は生きる。
やはり、当然のように。
当然のように起きている出来事に。
私のようにただ何となしに生きている人間は意味を見出すことが難しい。
――いや。
意味を忘れてしまうのだ。
本来存在していた意味を忘れてしまうのだ。
意識をする余裕もないから。
それでいいのだと思えた。
私が意味を忘れようとも、当然のことは当然のように起こり続ける。
涼しい顔をして。
何事も起こらなかったように。
世界の一部としてそこに在るのだ。
何気ない日常として。
そんな中に。
オタクに優しいギャルもまた存在していたのだと思った。
そう確信した。
そう理解した。
そう、安堵したのだ。
「――で、その人とはどうなったんですか?」
「ん-。仲良くなって二人で遊んだりはしたし、映画にもいったりしたけど……それで終わっちゃったなぁ」
「青春すね」
「そうだねw今頃有名な絵師になってるかもしんないw」
会話が途切れた。
どちらが言うまでもなく、仕事に戻る。
これもまた何気ない日常なのだから。
これもまた、当然のように繰り返されている
馬鹿みたいな内容をお読みいただきありがとうございました。
すみません。
書いていた時は楽しかったですが、今はもう読みなおすのも怖いです。




