本当の目覚め
目を覚ますとそこは見たことのある天井だった。
ふかふかの布団が気持ちよくて、アイシャはそのままもう一度眠りにつきたい気分になる。だが、そういうわけにもいかないことを知っていたのでゆっくりと起き上がった。
大きく伸びをして、なんとなく体が硬いような気がした。原因を突き止めるため昨日何をしただろうと思い返そうとして、アイシャは昨日のことが何も思い出せないことに気付いた。
「あれ?」
自分が何をしたのか、昨日のことくらいはすぐに思い出せそうなのに、きれいさっぱり何も思い出せない。起きたばかりで寝ぼけて何も思い出せないのかと思ったのだが、昨日よりももっと前の記憶も曖昧でぼんやりしていた。
「とりあえず起きようかしら」
考えることをやめてアイシャはベッドから出ようとした。すると部屋の扉が静かに開いた。
そのことにドキリとして動きを止める。
ここはアイシャが使っている部屋だった。そして、誰かが部屋に入ってくるときは必ずノックをするはずなのに、そのノックが聞こえることなく扉が動いた。
いったい誰がマナーを忘れているのだろうと思いつつじっと扉を見つめていると、青いドレスをまとった女性が顔を覗かせた。とてもシンプルで落ち着いたドレスに茶色の髪に青い瞳。誰なのかすぐにわかった。それと同時にノックをしないでいきなり部屋に顔を覗かせるような人ではないこともわかったので、アイシャは驚きで声を出すことも忘れてしまった。
そして、相手の女性もアイシャと目が合うと息をすることも忘れたように固まってしまった。
「あの・・・エレナ様?」
しばらく見つめあうことになったが、先に声を出したのはアイシャだった。
首を傾げて固まっている女性エレナの名を呼ぶと、呼吸を取り戻したエレナが両手で口元を押さえた。
「ア・・・アイシャ・・・・・目を覚まして・・・」
目に涙が溜まっていくのがわかった。どうして自分を見て泣いているのかアイシャにはさっぱりわからない。何か感動するようなことがあっただろうかと首を逆に傾けたアイシャだったが、ふとエレナと最近会話をしたことを思い出そうとして何も思い浮かばないことに気が付いた。
それと同時に何かがおかしいような気がする。だが、何がおかしいのかその時のアイシャには何もわからなかった。
「いけない。急いでみんなに知らせないと」
何かを思い出したようにエレナが足早に部屋を出て行ってしまった。呼び止める暇もない。
「知らせるって何のこと?」
よくわからないまま一人部屋に残されたアイシャは、この後バタバタとかけてくる大勢の人間に圧倒させられて何がどうなっているのか余計わからない状況に陥ることとなった。




