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呼びかけ

『・・・・・シャ。・・めさない』

誰かの声がする。とてもきれいで落ち着いた声。

『アイシャ、もう十分でしょう』

今度ははっきり聞こえた声にアイシャは意識を浮上させた。目を開けるとはっきりとした視界にきらきらと輝くピンク色の長い髪をなびかせた女性がアイシャを見下ろしていた。

黄金の瞳に優しく捉えられて、アイシャは思考がはっきりとした。

体を起こすとあたりは真っ白な空間になっていて、どこまでも続く白なのだが、とても狭い空間のように思えた。ただ、圧迫感がないため狭いのではなく広い空間なのではないかと考えを改めることになる。

「ここは?」

どうしてこんなところに寝ているのだろう。思い出そうとして記憶を思い起こそうとすると目の前の女性がゆっくりとした動きでアイシャ横に片膝をついた。

『随分と眠っていたわね。でも、もうそろそろ起きてもらわないといけないわ』

女性の言っている意味がわからなくて、アイシャは首を傾げた。目の前にいる女性はアイシャが知る限り見たことのない髪と瞳の色をしていた。それだけで相手が特別な存在なのだろうと思えたが、それ以上のことが考えられない。

「あなたは?」

優しいまなざしと声で、敵意がないことははっきりしている。むしろ穏やかな表情からアイシャに愛情を向けているのだろうと思えた。

その優しさにアイシャは誰なのかわからなくても自然と心を許していた。

質問したことに女性は答えなかった。その代わり小さく微笑むとそっとアイシャの頬に手を伸ばした。触れた指先が温かい。拒否するということは考えられず触れた指先にほっとするようにアイシャは身を委ねていた。

『もう目覚めなさい。あなたには待っている人たちがいるわ』

「え?」

目ならもう覚めている。言っている意味がわからずぽかんとすると、女性はどこか遠くを見つめた。

白い世界のどこを見ているのかわからない。だが、女性にはその先が見えているようだった。

『一度は拒絶を示したけれど、もう一度チャンスを与えてもいい時期だと思うの。そのためにはあなたが目を覚まさないといけないわ』

「・・・はぁ」

理解できないと言いたげに気の抜けた返事をするが、女性はお構いなしだ。

『ただ、そのまま目覚めてもあなたを苦しめることになるでしょう。だから、少しばかりいじっておきましょう』

何をと聞く前に、女性の指がアイシャの頬から額に滑るように移った。そして、軽く額を押す。

『さぁ、行きなさい。あなたがいるべき場所に』

それが女性との最後の会話になった。

アイシャの意識がぷつりと切れることになり、それと同時に白の世界からアイシャの姿も消えてしまった。

残されたのはピンクの髪の女性が一人だけだった。


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