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2-6 ヴェルモラの独白

 ……何なの、あれは。


 白い紙一枚。

 名前も、痕跡も、意味もない。


 事件ですらない。


 私はちゃんと置いた。

 好奇心も、推理欲も、未練も。

 「解きたい」という、人間の一番扱いやすい衝動を。


 なのに。


 あの子は、覗いた。

 あの少年は、立ち止まった。


 どちらも、間違っていない。

 それが、いちばん腹立たしい。


 解けばよかった。

 犯人を仮定して、動機を作って、物語にしてしまえばよかった。

 探偵なら、そうする。


 でもあの子は、最後に外さなかった。

 七村は、最初から持たなかった。


 ……違う。


 「外さなかった」「持たなかった」なんて、

 そんな言い方をしている時点で、

 もう私は負けている。


 あれは選択ですらない。

 拒否でも、抵抗でもない。


 ただ、成立しなかった。


 私は観測したかった。

 二人がどうなるのか。

 解けない謎の前で、どちらが折れるのか。


 説明を欲しがる人間か。

 説明を与えない人間か。


 どちらかが、必ず負けるはずだった。


 ……なのに。


 負けたのは、

 “観測そのもの”だった。


 私は見ていた。

 確かに見ていたはずなのに。


 記録に残せない。

 勝敗も、評価も、結論もない。


 ただ、白い紙が風で飛んでいっただけ。


 それだけ。


 ああ、腹が立つ。


 私は魔女よ。

 未練を愛で、結末を食べて、生きてきた。


 なのに。


 あの事件は、

 どこにも沈まない。


 海に落ちない。

 層にも残らない。


 ……解けない、じゃない。


 語れない。


 それが、いちばん許せない。


 だから嫌いなのよ、ああいう人間は。


 世界を壊しもしないくせに、

 世界のやり方を否定もせずに、

 ただ“使わない”。


 ねえ。


 次は、もう少し露骨に仕掛けたほうがいいかしら。


 それとも――

 あれが、答えだったって認める?


 ……冗談。


 そんなこと、

 認めるわけないでしょう。


 私はまだ、

 続きを見たいんだから。

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