9話
「よくねたぁー!!」
今日も睡眠バッチリ10時間、寝すぎである。
でも、ごろごろっていいよねー、めちゃくちゃ幸せ。
無限にお布団と仲良しこよししていたーい。
「ーーヘックシュン!!」
誰かが私の噂話でもしているのかな。
まあ、どうせ神官長あたりだろう……。
むかつく銀の髪をさらさらとさせながら、繰り上げ聖女……もとい元聖女の悪口を言っているに違いない。
悪かったなどと、多少は改心したようだけど、油断できない。
ーーということは、おいておくとしても。
「はてさて……」
金ピカの髪に碧眼のまるで王子様みたいに整った顔立ち。
でも、どこか憂い顔でこちらを見つめている青年……の霊とぱっちりと目が合ってしまった。
危ういことには近寄らない。
全力で見ないふり! という手もあるけど……。
まあ、伸ばせる範囲の、手は伸ばそう。
それが、私の信条だから。
私は、アリア様にもユリア様にもなれないけれど。
中継ぎの繰上げ聖女としての矜持はあった。
ここはとにかく元聖女らしく、淑やかに穏やかに、粛々と……。
「イケメンな生き霊ですね!」
わぁお。
私ってば素直すぎる。
思わず口からでた言葉に自分でも、軽薄だなーと口を押さえた。
「私が……見えるのですか?」
でも、イケメンと言われたことよりも、見えることに驚くということは、言われ慣れていますね。
まあ、そんな感じの顔ですが。
「まあ、はい。これでも一応……ゴホン、聖女に就いていたこともあったので」
今やこのクッキー伯爵領の女伯爵ですことよ。
おほほほ。
「……聖女?」
ぴくりと、イケメン金髪お兄さんは、青ざめた顔で肩を揺らした。
そういえば、服もなんか色々じゃらじゃらして豪華だ。
「私は、わたしは……」
まるで狼に睨まれた子鹿のように怯えた顔でぷるぷると震えているお兄さん。
「どうしました? 私は今のところ、あなたに危害を加える気はないですが」
危害は加えないって断定しちゃうと、面倒なことになったりする……ので、まだこの人がどんなひとかわからないし、言葉は選んで話しかけた。
「殺されるのでしょうか?」
「え?」
……お兄さん、話聞いてた?
「まだ何も成せてないのに。私のすべきこと何一つ終わっていないのに。それでは、私はいったい何のために、ここまでーー」
お兄さんから負の感情が溢れ出し、カタカタと窓が揺れる。
……まずいな。
「ちょーっと、失礼しますね。痴漢、ではなく、不可抗力です」
私はお兄さんの方に近寄り手を包んだ。
「!?」
「落ち着いて」
振り払われそうになった手を、再度包む。
「私の目を見て」
お兄さんの青の瞳がはっきりしていく。
「そう。そのまま深呼吸」
……すぅー、はぁぁ。
私もその言葉に合わせて、呼吸をする。
何度も何度も繰り返して、そしてーー。
「……落ち着きましたか?」
お兄さんはゆっくりと首を縦に振った。
「私は……、その取り乱してしまい……」
「死の恐怖を感じたのですよね。それなら、取り乱すことも普通ですよ」
安心させるように、にっこりと微笑む。
「ところで。あなたはなぜ霊体となって、私の目の前に現れたのか。あなたは何に怯えているのか。お話ししていただいてもよろしいですか?」
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