第42話 早く・速く
半日かかる道のりを、いくら急いでもそんなに変わらないと、分かっていても、居ても立っても居られないシュミだった。
流石に知った顔が犠牲になるのは、シュミも気持ち良いものではない。
「ちょっと、シュミ?いくら急いでも、荷馬車が壊れては意味が無いであろう?」
セルーヌが、シュミをなだめる様に、言う。
「そうですよ、少し速度を落としてくださいよ、馬が疲れてしまいます。」
ソーシャもセルーヌと同じように、なだめようとする。
「あぁ、分かったよ。ただあいつ等は、この前やっとブロンズになったばかりなんだ。経験もあまりないブロンズだから、逃げる途中に村や集落に、危険を知らせてないだろう?」
少し手綱を緩めて、速度を落とした。
「確かに…ブロンズに昇級してばかりのPTは、死亡率が多いです、自分達が逃げるので、周辺の気配り等無理でしょうね。」
元ギルド職員のソーシャは、悲しい顔をした。
「今こんな報告は、シュミを焦らせる事になりますが、先程リザードマンって、言ってましたが、恐らくリザードマンより、凶暴な何かだと思います。複数の切り傷が有ったので、複数体居るリザードマンも何かしら、進化している可能性が、ありますね。」
マリアは、少し戸惑いながら、皆に報告する。
「はぁ~。」
シュミは、ため息を吐く。
「やっぱ、急ごう!馬には回復アイテムを使う、マリア馬に身体強化魔術ってかけれるか?」
「えぇ、恐らく可能だけど、ただかなり馬に負担がくると思うわ」
シュミは、マリアに尋ねる。
『ブースト』をマリアが唱えた、馬は速度を上げるが、かなりキツイ感じに見える。
(すまない。早く行きたいんだ、許してくれ。)
シュミは、心の中で呟く。
ブーストが切れる度に、回復薬を使い、更にブーストかけて、馬を奮い立たせる。
マリアも涙目になりながら、ブーストを唱える。
結果3時間程で、滝の近くに着いたが馬は倒れこみ、この先は徒歩で行くしかない。
馬車から降り、周りに集落など無いか注意しながら歩く。
焦げた臭いがし、嫌な予感がする… シュミが皆に、態勢を低くするよう、手で合図する。
シュミは、その臭いがする方に近づき、確認すると5軒程の、家が見えたが、リザードマンの姿は見えなかったので、皆で集落へ入る。
猫人族の集落だったらしく、男性の死体が4人とリザードマンらしき死体が2匹あった。
セルーヌは、女性の姿が無い事に不安なり、辺りを懸命に探している。
「手分けして、生存者がいるか探そう!マリアとソーシャは、集落を!セルーヌは俺と周りの茂みを探そう。」
少し離れた茂みで、セルーヌの耳がピクピクと、何かの音を拾った。
急いでシュミとセルーヌが、音のする方へ行くと、猫人族のまだ若い男性が倒れていた。
「大丈夫か?何が有った?」
シュミは、男性を抱きかかえ、セルーヌが回復薬を飲ませる。
「うぅぅ、リザードマンが来た……が…なんとか追い払ったよ。」
かなり傷が深い為、マリアを呼んで治療する。
「女性の姿が見当たらないが……どうした?」
セルーヌは、男性の呼吸が整うのを待って聞く。
「あぁ、冒険者らしき人が、森の中で襲われてる声が聞こえたので、すぐに女・子供は、馬車で逃がしたよ。恐らく、エリエの町に向かってるはずだ。」
「そうか。リザードマンが逃げたのは、どっちの方角だ?」
セルーヌは、一安心したが、リザードマンの行方も気になっていた。
「森の奥に行った様に見えた。」
「わかった!ありがとう。」
セルーヌの優しく微笑み、次の瞬間・顔つきが変わり、森の奥を睨んでいる。
「行くか?」
「そうね。」
シュミとセルーヌは、短く言葉を交わした。
「マリアとソーシャは馬車に戻り、馬が回復後この人を乗せ、エルエに向かってくれ、後で追いつく。」
「分かったは、ただ無理をしないでね。スクロールと回復薬を分けるわね。」
マリアからスクロールと回復薬を受け取った。
「あぁ、無理はしないさ。今度は、セルーヌをちゃんと守れる程度の余裕がなければ、撤退するさ。」
マリアは微笑み、マリアとソーシャは、男性に肩を貸し馬車の方へ行った。
シュミは、セルーヌを抱え森の奥へと、猛スピードで消えていく。




