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魔女フィリマ、新天地でスローライフを目指す(※相棒はとりとねこのぬいぐるみ)。  作者: やまだのぼる


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58 持ち主発見!

 

 小指の痛みをこらえながら、廊下をぐるりと見まわしてみる。

 何の変哲もない廊下。

 ほかの場所と違うところは何もない。

 こんこん。

 壁を叩いてみる。

 この辺に隠し扉とか。

 ……あるわけないか。

 床の絨毯の感触を確かめてみる。

 地下に隠し通路とか。

 ……ないか。

「フィリマ、何してるんだー」

「るんだー」

 とりとねこは不思議そう。

「いや、この辺に何かがあると思うのよ」

 こんこん、と壁を叩きながら私は答える。

「指輪が反応してるんだもの」

「それならあれじゃない?」

 ねこがぴこりと窓の外を指さした。

「へっ」

 外を見る。真っ暗で何も見えない。

「何? とりさん分かる?」

「ぼくは鳥目だ」

 とりは偉そうに胸を張る。

「夜間の視力をぼくに期待するでない」

「あ、そう……」

 ランプを向けてみるけれど、ガラス窓に光が反射してよく見えない。

「ねこくん、何があるの?」

「えーとねー、人?」

「え、人? 誰かいるってこと?」

「よくわかんなーい」

 ねこの言うことはふわふわしてて、はっきりしない。

 こういうのは、直接確かめた方が早い。

「どこか、庭に出られるところは……」

 窓ガラスは嵌め殺しで開かない。仕方なく廊下をちょっと歩くと小さな扉を見つけた。

「ここから出られそう……」

 そっと扉を押し開けて外に出る。

 夜の爽やかな冷気が私を包んだ。

「さわやかー」

「涼しいねー」

 私の両肩でとりとねこもふっこりとしている。思わず私も深呼吸。

 ずっと慣れないお屋敷の中にいたから、疲れちゃったな。

 とりたちの言う通り、狭くてぼろいけど我が家が一番だな。

「ねこくん、どこ?」

「あっちー」

 ねこの指さす方に歩いているうちに、私の小指がまた締め付けられ始めた。

「いたた」

 痛いけど、これでいい。

 目的地は近い。

「あれー」

 ねこがふこりと前方を指さす。私はそっちにランプを向けた。

「あっ」

 そこに、人影がいた。

 思わず身構えたけど、向こうはぴくりとも動かない。

 動かないはずだ。

 だって、それは。

「……銅像、みたいだね」

「なーんだ、銅像かー」

 ねこが私の肩からぴょこりと飛び降りて、銅像にふここここと駆け寄る。

「この人、誰ー? おじいちゃんだよ」

「そうだね」

 銅像は、立派な服を着たいかめしいご老人。きっとこのマートン家のご先祖様的な人なんじゃないかと思う。

 長い顎ひげを蓄えていて、それを撫でるみたいに右手を上げている。

 私は銅像の前に立った。昔の人だからか、結構小柄。おじいちゃんとはいえ、女の私よりも背が低い。

「……あ」

 急に小指から痛みが消えた。指輪の感触がない。

 いつの間にかするりと抜けた指輪は、地面に転がっていた。

 私はそれを摘まみ上げる。

「抜けちゃった……ということは、もしかして」

 さっきの反応といい、この場所に意味があるということだろう。

 私は銅像を見る。お腹のあたりに添えられた左手は五本の指が分かれてはいないけれど、顎髭を撫でている右手は五本の指が一本ずつ精緻に作られている。

 私はランプでじっくりと調べた。

 庭に長いこと置かれている銅像なので、日光に晒されてすっかり色が褪せてしまっている。

 けれど、右手の人差し指に明らかに色が違う部分があった。そこだけが、元の銅像の色を保っているかのようだった。

 そう。そこに、もともとは指輪が嵌っていたかのような色。

 私は、指輪を銅像の右手にそっと近づける。

「指輪、このおじいちゃんのだったの?」

 ねこが言う。

「なるほど。銅像なら、ばちばち電気が通っても痛くないからな」

 とりが納得したように言う。

 いや、電気は流れないと思うけど……。

 指輪をそっと嵌めてみる。

 ぴったりだった。

 指輪は人差し指の根元まできれいにきゅっと嵌った。

 何かが起きるんじゃないかと思ったけれど、何も起きなかった。

 静かな夜の庭。

「えーと……」

 とりあえず私は銅像に頭を下げた。

「指輪、お返しいたしました」

「いたしましたー」

「ましたー」

 とりとねこもふこりと頭を下げる。

 それから、とりが「ぷふふ」と笑った。

「なによ」

「いや。フィリマは小指だったのに」

「人差し指だったね!」

 とねこ。

「小柄なおじいちゃん」

「昔の人だから、栄養状態が良くなかったのよ、きっと」

 私は言った。

「何か文句ある?」

「いや、べつにー」

「ランプ消して、真っ暗な庭を帰ってもらうよ」

「そ、それは困る。ごめんなさい」

 鳥目のとりは慌てて謝罪する。

 私たちは、もと来たように廊下へと戻った。

 今夜はもう何も起きない気がする。なんとなく。

「もう帰って寝ようじゃないか、フィリマ」

 とりが私の肩の上でふにょりと伸びをする。

「さんせーい」

 ねこもぺちゃりと潰れている。

「そうしようか」

 一つ、解決した(のかな?)気がするしなあ。





ねこ「とりさんとりさん!!」

とり「どうしたんだ、ねこくん。一級化繊たるもの、そんなに慌てるものじゃない」

ねこ「でも、見てよ! ポイントが!」

とり「んー? もしかしてまた1000ポイントを割っちゃったのかな? まあ、長い化繊生活を続けていればそういうことの一度や二度はあるものさ」

ねこ「違うってば! 見てよ!」

とり「んー? 20ポイントくらい増えたのかな。なにせこのぼくがクレクレをしてるからねんがっく」

ねこ「ほら、びっくりした」

とり(おろおろおろおろ)

ねこ「とりさん、一級化繊があんまりおろおろしないほうがいいよ」

とり「やばい。これはやりすぎた」(そうだね。たかがこの程度のポイント増加でおどろくようなぼくではないよ)

ねこ「とりさん、心の中と外の声が逆」


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― 新着の感想 ―
猫の日だから更新くると思ってた!!!
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