50 お部屋で振り返り。
「帰ってきたぞ! 狭いながらも、楽しい我が家!」
とりがベッドにダイブする。
「やっぱり自分の家が一番!」
ねこもベッドに飛び込んでいく。
「あはははは」
「うふふふふ」
ころころころ。
「やめなさい、ふたりとも。お行儀悪いよ」
我が家のベッド比300パーセントのふかふか度のベッドの上ではしゃいでるふたりをたしなめる。
とりが「楽しい我が家」とか言ってるけど、もちろんここは私たちの家じゃない。
マートン家の、あてがわれた客室だ。
私たちをここまで案内してくれた、暗い顔をした男の人は角を曲がったところでなぜか急に消えてしまった。だけど、そこがちょうど私たちの部屋だった。
まあ、やっと帰ってこられたという意味で、自分の家が一番と言えなくもないけど……いや、やっぱり言えないか。
テーブルには、食べなかった私たちの昼食。
ちゃんと布がかけられている。ごめんなさい。夜食にいただこう。
……さて。
私は椅子に腰かける。
さっそくいろいろあったなあ。
とりあえず、これまでに起きた不思議なことを整理してみよう。
「はい、ちょっとちゅうもーく」
ぱんぱんと手を叩くと、ベッドでころんころんしていたとりとねこが、めんどくさそうにこっちを見る。
「なにー?」
「いま、生きてる喜びを感じてるところなんだけどー」
「お仕事です、お仕事」
私はふたりを手招きする。
「ほら、こっち来て。この屋敷で起きてることを分析するよ」
だけど、ふたりの反応は鈍い。
「お仕事なら、さっきやったばっかりだよ」
「ねー。野菜切るの楽しかったなー」
「また行きたいなー、ゴファンさんの厨房」
そんなことを言いながら、ころころしている。
「あれはお仕事ではありません、お手伝いです。私たちの本業は冒険者でしょ」
「そうだっけな、ねこくん」
「思い出せないよ、とりさん」
ころんころん。
えーい。仕方ない。
「冒険者パーティ“とり帝国”のお二方!」
「はっ!」
「にゃっ!」
ふたりがぴこりと飛び起きる。
「“とり帝国”は、受けた依頼は必ず解決する凄腕冒険者パーティなんでしょ!?」
「もちろん!」
「ぼくらはすごうで!」
「ならばこの依頼を解決すべし!」
「望むところ!」
「ところ!」
とりとねこはベッドから飛び降りると、ふここここんと駆け寄ってきた。
「さあ解決するぞ、ねこくん!」
「あいあいさー!」
やれやれ。やっとやる気になってくれた。
「それじゃあ、このお屋敷に来てから周りで起きた不思議なことを整理してみようよ」
私の提案に、ふたりはぴこりと手を挙げる。
「はーい」
「あーい」
「それじゃ、私から挙げるね」
まず、最初の不思議なことは……
「このお屋敷がなかなか見つからなかった」
「それはフィリマの方向音痴のせい」
「ひとりダンジョン女」
「そ、そうかなあ」
おかしいと思うけどなあ。
「じゃあ、次は?」
「はーい! はーい!」
とりが元気に手を挙げる。
「はい、とりさん」
「門番さんが暗かった」
「そうだね。元気なかった」
ねこも頷く。
「暗いのは性格でしょ。おかしなことが起きてる屋敷で暮らしているんだもの。暗くもなるでしょ」
「そうかなあ」
とりが首をひねる。
「あ、はーい!」
ねこが手を挙げた。
「はい、ねこくん」
「最初の門番さん、帰ってこなかったね」
「あ、そういえば……」
確かに、門でずいぶん待たされた。
「こんなかわいいぬいぐるみを待たせっぱなしにするなんて、おかしいよね」
「確かに」
とりが重々しく頷く。
「いい着眼点だな、ねこくん」
「えへへ」
「……まあ、かわいいぬいぐるみのくだりはともかく」
確かに、あれはちょっとおかしかった。
「あとは?」
「急にフィリマが部屋からいなくなった!」
「それそれ!」
「いや、あれは奥様に挨拶に行ったんでしょ。帰ってきたらいなかったのはふたりの方でしょ」
「ぼくらはちゃんと書置きを残していったじゃないか」
「そうだー」
「勝手に動き回ると、奥様に処されちゃうんだってば」
「かわいいぬいぐるみは処されませーん」
「せーん」
「奥様を実際に見たら、そんなこと言ってられなくなるわよ。奥様、ほんとに容赦なく処すわよ」
ちょっと脅したら、ふたりはしゅしゅしゅっと体を縮めた。便利な体。
「えーと、それから……」




